叶姉妹(左が恭子さん・右が美香さん)

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8月12日(土)、とらのあなCMの発表会見に登壇した叶姉妹は、コミケについて改めて「感動した」と振り返る。

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前日の興奮冷めやらぬ様子の叶姉妹のお二人。

筆者も列に3時間並んだのでわかるが(関連記事)、並んでいる人たちからは(普段のコミケにおける)殺伐とした空気は感じられず、終始、ポジティブな雰囲気にあふれたお祭りだった。

それは、サークル参加にあたっての、叶姉妹の事前準備、そして当日対応によるところが大きい。

コミックマーケット


初出展にも関わらず徹底された叶姉妹ブースの対応には、コミケ参加者から絶賛の声が寄せられている。Twitter上でも批判はほとんど見かけないという、あまり例のない出来事だ。

この日、トークショー後には複数メディアによる囲み取材が行われた。テレビ局も複数きている様子で、報道陣の数からも注目度の高さがうかがえる。

改めて、その裏側のエピソードが語られることとなったわけだが、KAI-YOUでは、個別で話をうかがう時間ももらうことができた。

昨日のコミケに引き続き今年通算4回目となる叶姉妹の取材を行った筆者だが、お会いするのは初めて。そして、取材冒頭で筆者が名乗ったところ、なんと認知されていたことが判明。「昨日は並んでくださったそうで」と言われさらにビックリ。叶姉妹についてはネットだけでも大量の記事が配信されているにも関わらず、大勢いるライターの名前を覚えているということが意外に思えたのだ。

しかし、その気配りこそ、このお二人が、一見破天荒に見えながらも多くの人に支持されている理由のような気がした。

すでに取材の速報は上がっているので、ここではコミケにまつわる質疑応答の全文を掲載する。

3000部は、初回で捌けるギリギリだった


叶姉妹


とらのあな新CMに起用された叶姉妹。トークショー後の囲み取材でも、話題の中心は、前日8月11日にサークル参加した「コミックマーケットC92」(C92)。叶姉妹は、初日で最も話題をさらったサークルとして記憶に刻まれていることだろう。

半分ほどは叶姉妹の公式ブログでも言及されていたことだが、改めてコミケ参加の経緯から語られた。

──初のコミケでのサークル参加とのことですが、そもそもどういった経緯で?

恭子さん 美香さんはもともと漫画やアニメが好きで、いつも私に勧めるけれど、全く興味がなかったものでスルーしていたんです。でもある日、Twitterでとあるアニメのキャラが叶姉妹そっくりだと話題になったものですから、チェックしてみたところ、美香さんがいつも好きで見ている作品だったんですね。

それで私も見てみたら、アニメや漫画という観点ではなく、私たちが今まで訪れた世界の国々のものなどが散りばめられていて、興味のあるポイントがとても沢山あって(ハマっていった)。大好きな『ゴッドファーザー』とも似た雰囲気で、それで大好きだなと思うようになりました。

美香さん 海外でもアニメや漫画は興味関心が高く、私も(アメリカの)ボルチモアでオタコンには参加させてもらったこともあります。けれど日本では行ったことがなくて、去年のコミケ(C91)に参加させてもらったんです(関連記事)。

それで興味にあふれて、ぜひ(サークルで)出展してみたいという次のプロセスに至って、抽選の上で出展できることになって、(昨日終了して)今すごく感激しております。

恭子さん こういった場合、私たちはとても深いリサーチをするのですが、コミケの、日本でありながら異国のようであるという点に惹かれました

なおかつ、去年の暮れに行った時に、みなさんの一体感やマナーがとても素晴らしく整っていた。一つ筋の通ったものがあって、それで今に至ります。

──構想から完成まで、どれくらいの制作期間だったのですか?

恭子さん 私たちは20年近くビューティーブックなどを制作してきましたが、そのようなものとは一線を画す、(コミケで頒布した同人誌は)あくまで自分たちの趣味のものなので。私は、あまりまとまりのあるものが好きじゃないのです。質問の答えになっているかわかりませんが、それで、構想と完成までにはかなりいろんな変遷があったというのが現実です。

「神秘のアメージングブック」

「神秘のアメージングブック」


──グッドルッキングガイの参加は見送ったとのですが、彼らに行った耐久テストって具体的にどんなことを?

恭子さん コミケは「地獄だ」「戦争だ」とみなさん仰っていて。特に夏コミは危険だと。

かなり蒸し暑い、息もできない状況だろうということで、彼らは私の好みに合わせてスーツでおりますので、それでその状況に耐え切れるかどうか、スチームサウナでテストいたしました。

──サークルの列が2千人という報道もありましたが?

恭子さん 会場についたのは08:40。そこからブースの準備をしたんですが、すでに会場の中で並んでいる方がいらっしゃって、いまいちシステムがわかっていないのですが、その時点で1000人ほどいて(※筆者註:サークルチケットで入場して並んだ人と思われる)。それで10時近くなってその列が外に移動したのですが、最終的に2000人ほどになったそうです。

サイン本は3000冊。(列の人数を考えれば)おおよそ自分たちの想定と一致しています。みなさんをお待たせしないことと身の安全、そして自分たちの体力も考えた上で、3000冊が精一杯の上限だったのではないかと思っています。

コミックマーケット



叶姉妹が心を打たれたコミケ秘話


恭子さん 今回、学ぶことがたくさんありました。例えば、名刺は配りすぎると、指の先の皮がめくれるということ。

その時は夢中で気づかなかったけど、ヒリヒリして痛いと思っていました。そうしたら皮がむけていて、1万枚も配るとこうなっちゃうんだと、ヤワなんだなあとお勉強になりました。

──コミケで他の人と交流していかがでした?

恭子さん とても感動いたしました。印象に残っているのが、「長い間いてくださってありがとうございます」と言ってくださった人がいたんですね。

それで、「いいえ、それは私たちがいうべき言葉です」と申し上げて、むしろ「どれぐらいお待ちになったんですか?」と聞いたところ、6時間ほどだとサラッと。でも、「自分たちにとってそんなことはなんでもないことなんだ」と仰って、それを聞いて涙が出ましたね

外で何時間待っても何の苦にもされず、笑顔で感謝される。そういう心のやりとり、エネルギーに感動しました。しかも、その方だけではないのです。すべての方がそういう態度でいてくださったので。

叶姉妹


私たちも、リップグロスを塗り直す、キャンディをなめる時に一瞬座ったくらい。あとはほとんど立っておりましたが、その時は夢中で、楽しくてハッピーな時間。ピースフルなエネルギーに満ちていました。帰ってから、疲労困憊だということに気づきました(笑)。

──次のコミケではどんなものを制作する予定ですか?

美香さん 次出すものは姉の頭の中にあります(笑)。ですので私は把握してませんけれども、もし当選してまた参加させてもらえるなら、いろんなことをやってみたいです。今回参加していろんなお勉強をさせてもらいましたし、姉も楽しんで参加してくれたので、おそらくすごい構想があるんじゃないかと思います。

恭子さん 自分たちが夢中になって楽しむ、そしてみなさんにシェアできて楽しんでもらえるもの。それが私たちのポリシーです。これに限らず、みなさんの期待を裏切らないことも私たちの喜びの一つです。

話はコミケからエジプト、スピルバーグへ


ここまでが、囲み取材の様子だ。

実はこの日、個別取材が可能かどうかは当日までわからず、会場に入ってから個別取材の時間をいただけることが判明した。

とは言え、当然沢山の質問を用意していった筆者だったが、恭子さんの口からとうとうと語られる、コミケからエジプト、スピルバーグへつながる壮大なお話を前に、すべての質問が吹っ飛び、かろうじて相槌を打つのみ。

普段、メディアやイベントでは恭子さんのお話を補足されることも多い美香さんは、終始頷きながら恭子さんのお話に耳を傾けていた。

囲み取材前のトークイベント中、恭子さんが「オタク」の定義について、そもそもなぜカテゴリ分けしなければいけないのか疑問を呈するくだりがあった。「もし『オタクですか?』と私たちが聞かれてもどう答えていいかわからない」と(実際に「オタクですか?」という質問があったわけではない)。それも踏まえて読んでみてほしい。

叶姉妹


──昨日は本当にお疲れ様でした。僕も名刺をいただきました、ありがとうございました。

恭子さん&美香さん こちらこそありがとうございました。

──昨日は帰ってすぐお休みになられたんですか?

恭子さん いえ、しなければいけないことがたくさんありましたので。

美香さん そうですね、ブログも更新しましたし。

恭子さん チェックしなきゃいけない宿題とかが沢山。

──そうですよね、昨日まではコミケ準備にかかりきりとうかがいました。しかもその翌日に発表会で本当にお疲れ様です。

改めてコミケ参加についてお話をうかがいたいのですが、サークルとして参加して初めて気付かれたこと、想定と異なるギャップはありましたか? 先ほど、指の皮がはがれたといったお話もありましたが。

恭子さん 指の皮なんて、別にどうでもいいことなんですよ。たまたま、そんな(名刺を1万枚配る)ことは自分の人生の中でやったことがなかったので、単にお勉強になったというだけです。

ギャップといっても、私たちは、普段から、何かを始めるにあたってはかなりリサーチをするので、普通は大体わかっているんです。

例えば、エジプトにいくとかインドに行くとか、危険がないわけではありませんが、私も美香さんもどうしてもピラミッドに登ってみたかった。でもそこは40度以上の灼熱で、治安もよくない。そういうネガティブな要素もあって、行く前に相当な下調べをしました。

でも、エジプトというところでは、いろんな方のいろんな評価が聞ける。しかも、誰もがエジプトに行こうと思えば行ける。それは、コミケにも通じるところで。コミケも、私たちにとっては、日本にある特別な場所、というイメージなんです。

──さきほどコミケを異国とも表現されていましたよね。

恭子さん はい。コミケは言葉も通じるので、例えばインドやエジプトと日本のカルチャーとの違いと、全く同じではありません。けれど、私たちにとっては異国と同じだったのです。

オタクの方々は、皆さんあまりに礼儀正しくマナーがよい。さっきも申したように、オタクという分け方を世間がしている意義が私たちにはわからない。

よく言われるのです。「世の中の人は大半がオタクという事実を隠したがるところを、叶姉妹は全然それを隠そうとしないどころか、テレビで言っている」と。でも、私たちテレビで「オタクです」なんて言ったことないのですよ。じゃあ、そもそも「オタクというものって一体何?」「世間がいうオタクというイメージって何?」私たちはそれを知らないのかもしれない。

もしくは、勝手な感想ですが「なぜ(オタクとそうじゃない人を)分けるの?」とも思っていて。そういった意味では、世の中の方の勝手につくっているイメージ、偏見があるのではないかと。

私たちは、自分のしたいと思うことを素直にしている。今に限らず、それはずっとです。そして、したいと思った時には、何が何でもベストな形・状況でいく。それが自分たちにとって楽しいことなんです。

とらのあなCM発表会_叶姉妹


だから、エジプトにしても、ピラミッドとスフィンクスを必ず見たい。それで一番いい場所を調べた結果、あるホテルのバルコニーから見るのが一番綺麗だと思ったので、そこに泊まりました。それは、現地の方に写真を送っていただいたりしたことも含めて、自分たちのリサーチでわかったのです。

ホテルのバスタブに入れるお水も、エビアンやコントレックスを何ダースも持ち込む。コミケについても、同じ感覚です。何かしたい時は、必ず自分たちのベストな状態でいく。それに対して、皆さんが不思議がっていることの方が不思議なのです。

──お二人にとっては自然な状態だと。

恭子さん 「叶姉妹はお金を持っているくせに、なんでオタクのところでビジネスをしているのか」ともよく言われます。

私たち、お金のことなんて全く考えたこともないです。正直、たった一日のイベントでのお金なんて、普段の一時間や二時間で済ませられる話なんですよ。

じゃあ、(事前準備や制作も含めて)これほど時間を費やして、むしろお金的にはマイナスかもしれないことをなぜ私たちがするのか。世の中の人はわからないと思います。

なぜなら、自分の価値観、知識の中で当てはめてしか考えていないからです。そうじゃなかったのは、スピルバーグでしょう(※筆者註:『E.T.』や『ジュラシック・パーク』の監督)。あの時代に、誰も考えていなかった想像のものを映像に落とし込んだから絶賛されたのであって。

もちろん、私たちの頭の中はスピルバーグと言わずとしても、今は誰にもわからないことがいっぱい入っていると思います。

日本の方は、日本のカルチャーでしか物事を考えていないから。世界から見たことがないから、(私たちのことを)違った形の生物として見る。

例えば私たちがシースルーのドレスを着ていても、少なくともアメリカのアカデミー賞のレッドカーペットで通用する、フォーマル度の高いものだということもご存知なく、「露出狂より露出している」とか書く方はいっぱいいらっしゃいます。

例えば私たちのインスタグラムも、とても過激だと書かれている。でも、海外のセレブが出しているものは、それはそれはもっとすごいものが沢山。それも名前の通った方々です。私たちは可愛いもので、日本向きに地味目にしているにも関わらずそんな反応の方もいらっしゃる。

でも、私たちはなんとも思ってないんです。視野が狭く生きてらっしゃるだけなんだとお勉強になるだけ。

──うらやましいと思っている部分もあるんじゃないでしょうか?

恭子さん ないと思います。うらやましいというのは、自分に少しは近い存在でないと。遠いと、羨ましくもなんともないでしょう。

──ただ、先ほどのオタクの話も踏まえて言えば、叶姉妹のお二人は、ご自分の生活自体をオープンにされていますよね。セクシュアルな部分さえオープンにされている。それぞれ違うものですが、日本において、性のことだったり、あとはアニメや漫画といったオタク趣味は、基本的には秘匿すべきものだという感覚があるので、お二人の言動に驚くのじゃないかと。

恭子さん 日本はそもそも隠蔽主義なのですよね。それが本当に不思議。私たちのメンタリティーが日本のカルチャーとは違うのだと思いますね。

あとは、私たちは、他の誰とも比べられない。同じようなことをしてらっしゃる方がいても、どなたとも違うオリジナリティーがあります。

例えば、海外のことが知りたい。それで世界を旅して回る方は大勢いらっしゃいますが、私たちは、もし何かを知るためには、すべてを知らなければいけない。上から下まですべて。だから当然中間もです。そういう生き方をしてきましたし、それは今回(のコミケ)も同じです。

どんなにお金を費やしても、それで得た経験には勝てないのです。(コミケ参加も)自分たちのちょっとした気持ちでやったことではなく、すべてを知るというつもりでやっています。

──なるほど。だから、もっと次はこういうものをつくりたい、と思うということですね。それでは、コミケを知るという意味で、一般参加もされて、サークル参加もされて、コスプレ参加という可能性もあるのでしょうか?

恭子さん コスプレ参加はありません。私たちは、コスプレイヤーにはならないです。なぜなら、自分たちがやりたいことはコスプレではないから。

コスプレには、既存のキャラクターのイメージがある。つまり、限界があることなので、あまり熱中はできないのです。美香さんは、さらっと(コスプレを)やっても、幸いにも完成度が高い。かといって、私たちはコスプレイヤーというものになるつもりは微塵もないし目指してもいない。今後先もない。ただ、皆さんが勝手に呼ぶのは、ポジティブな意味ではウェルカムです。ネガティブなものはスルー、あまりにひどいものはなんとかしないと、と思います。

コミケについては、最近のすごく夢中になれることです。人によっては、それがディズニーランドかもしれない。けれど、世界中でやりたいことをやり尽くした私たちにとっては、そこ(コミケ)にたどり着いた時、こんな身近にこんな知らないことがあったなんてと感動したんです

そしてそこにいた方々の、なんと礼儀がいいことか。触れ合ったことで、それがわかりました。

それはさきほど、皆さんの前でもお話した通りです。「お待たせしてごめんなさい」と私たちが口にするべきなのに、「長い間いてくださってありがとうございます」と。

叶姉妹


私が、グッドルッキングガイの親友とそういう関係になってしまった時、グッドルッキングガイから「僕が至らなかったからこんなことになってごめんなさい。何を直せば僕はそうじゃなくなりますか?」と言われたことがあって。それも二十歳過ぎの子に言われた時に、「こんなことを言わせてしまっている私は本当にダメだ」と思っている気持ちと似た感情を、なぜか思い出してしまいました。

私は、もしかしたら感動のポイントが人と違うのかもしれませんが、自分が言うべきにも関わらず、相手の人から先回りで言われると、心が動いてしまうのです。しかも、コミケではそういう方が、一人や二人じゃない。

──コミケは、並んでいる人も「お客さん」ではなく「一般参加者」だからでしょうね。みんなで参加してつくりあげるというのがコミケのコンセプトです。

美香さん そうですね。それは私たちも最も気をつけたポイントです。

恭子さん だから、私たちが特別扱いされるのも嫌なんです。ただ、私たちは、自分の影響力も考えなければいけない大事なポイントだと思うんです。運営の方にもご迷惑をかけてはいけない。自分たちが人に知られているということを加味した上で、誰も不快に思わないようにすること、それも努力したポイントでした。

──それは会場で伝わってきました。だからこれほど絶賛されたんだと思います。

スタッフから事前に指定されていた取材時間をすでに大幅に超過してしまっていたため、取材時間はここで終了。

これが、コミケ参加の翌日、叶姉妹のお二人がコミケについて語ったすべてだ。

叶姉妹のコスプレレポート