7月末、民間単独によるロケットの打ち上げが北海道で行われた。
北海道のベンチャー企業「インターステラテクノロジズ」が開発したもので、NASAやJAXA(宇宙航空研究開発機構)が打ち上げる大型のロケットとは異なり、秋葉原など電子パーツショップで誰でも入手可能な汎用部品からなる、全長10メートルの小型ロケットだ。

今回は宇宙空間まで到達する前にロケットとの通信が途絶えたことから緊急停止し、残念ながら宇宙に飛び立つことはなかった。しかし、それでも高度30kmから40kmに達しており、今後に繋がる大きな成果を出した。

一点ものの大型ロケットに対し、こうした汎用部品で安く組み立てる小型ロケットは、将来、小型化する人工衛星の打ち上げ需要を狙う存在として、注目と期待を集めている。

この話を聞いて、
「あれ、人工衛星やロケットって勝手に打ち上げられるの?」
と、ふと考えた人も多いのではないだろうか?

宇宙ビジネスが取り上げられること多くなると、法整備などはどうなっているのか? ということが疑問になってくる。

「宇宙」というと、地球上の"国"の支配権が及ばない領域であろう。
であれば、誰かが、行動を許可したり、制限したりするものだろうか?

◎人工衛星の小型化が宇宙法を必要とさせた
アメリカではSpaceX社など民間事業者によるビジネス展開がすでに始まっている。GoogleはGoogle Lunar XPRIZEの実施、Amazonの創業者も宇宙開発関連の起業を立ち上げるなど、実は、我々が思っている以上のスピードで、「宇宙ビジネス」は立ち上がりつつあるのだ。

日本はどうかというと、グローバルな部分では「宇宙条約」や「宇宙損害責任条約」などの取り決めに国レベルで締結している。
では、民間の事業者が単独で宇宙ビジネスに参入したい場合どうすればいいか?
これについては、これまで議論されてこなかった。

というのは、宇宙事業というと大型ロケットの打ち上げが中心で、それは国レベルのプロジェクトだったから。ロケットの開発〜製造〜打ち上げまでの巨額なコストをどこで回収できるのか、さっぱりわからない分野だったからだ。

今のように、民間企業が行うことなど想定されていなかったのだ。
つまり、「そもそもできないでしょ」的なイメージと認識だったので、規制が必要という発想すらなかったといえる。

そうした宇宙ビジネスの大きな転換点となったのは、人工衛星を小型化できる技術の登場だ。

この技術革新により、民間あるいは大学など、研究開発の目的でも小型人工衛星を運用する動きが広がった。
とはいっても、ロケット開発・打ち上げの技術とコストでのハードルは高く、JAXAの副人工衛星にロケットの余剰スペースに乗せてもらう、国が打ち上げるロケットに相乗りさせてもらうという形だった。

こうした動きが起き始めたのが2013〜2014年頃から。
そして日本で宇宙に関連する法律が制定されたのは、さらに2年後の2016年11月のことだ。

◎宇宙活動法とリモセン法
2016年11月に成立したのが、「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」(宇宙活動法)および「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律」(リモセン法)だ。

ざっくりいうと、
宇宙活動法は、ロケット打ち上げに際し、その安全基準やロケットの落下などによる損害賠償などの責任、人工衛星の管理に係る許可制度などについて定める、というもの。
一方、リモセン法は、人工衛星から取得するデータの運用について定めるものだ。

これらにより、民間企業が小型ロケットを開発し、さまざまなセンサーを搭載した人工衛星の運用を行う場合の申請手続き、許可基準が定められるということになる。

この2つの法律は2016年11月16日に公布され、
・宇宙活動法は、公布の日から1年以内に一部施行、2年以内に全部施行
・リモセン法は、公布の日から9ヶ月以内に一部施行、1年以内に全部施行

のスケジュールで、順次、施行準備が進められている。

リモセン法は2017年7月30日にパブリックコメント(意見公募)を終え、8月9日の結果が公示されている。8件の意見提案があったがそれに対する修正はなく、一部施行に向け、進められることになる。

一方、宇宙活動法は2017年8月8日にパブリックコメントが開始されたところ。1ヶ月の期間を経て意見を取りまとめ、11月に一部施行という形になる。施行が実施されれば、2018年11月以降のロケット打ち上げ計画に対し、2017年11月から申請を受け付ける形となる。

冒頭で紹介したインターステラテクノロジズ社によるロケット打ち上げ時は、まだ法律が施行されていなかったが、今後は申請が必要になる。
こうして法律の整備により、いよいよ宇宙ビジネスが本格化していくわけだ。

一人のユーザーとしても、新しい体験ができるようになることを期待したい。

せっかくなので、この機会に宇宙活動法に目を通し、何か意見があればパブリックコメントを投稿してはどうか?


大内孝子