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もくじ

ーフィアット500の誕生を祝って
ー力は5倍 車重は2倍 全長は30%増
ー激しいアップダウン 体感する500
ーいいところ 気になるところ
ーアップルクロス峠 心打たれる

フィアット500の誕生を祝って

トリノではコルクが飛び、フィアット500の誕生を祝ってDOCワインが喉を潤しているだろう。

1957年7月4日にミラフィオリ工場から出荷されたフィアット・ヌォーヴァ500から数えて述べ400万台を、10年前に現行型となってからは200万台が出荷されたのだ。

今回のわれわれのテスト車両は、ポーランドのティヒ工場で生産されたガソリンのスポーツ仕様、1.2S。スコットランドのハイランド地方に連れだした。

スコットランドは、トリノからは2300km弱も離れた、全く異なる環境だ。小さなフィアットには長旅。イタリアの評論家でもここまではしないだろう。

旅は早朝に始まった。わたしはエディンバラから陸路で、フォトグラファーのルークはロンドンから空路で向かい、スコットランドのインヴァネス空港で落ち合う。

フィアット500は荒れた路面の国道A9号線でも、驚くほどの乗り心地の良さを披露する。

街中では、他のクルマなら躊躇する狭いスペースでも駐車できるほどコンパクトで、キビキビとしていて運転もしやすい。

だとしたら険しいカーブが続く「ノース・コースト500」でも、その性格は保たれるだろうか?

力は5倍 車重は2倍 全長は30%増

今回のクルマは、最高出力69ps、最大トルク10.4kg-mの、非力なモデルだ。わずか865kgの車重にも関わらず、0-100km/h加速に12.9秒もかかる。このコースを3日間で走破することは、今回のフィアット500にとって大きな挑戦に思える。

カメラマンの撮影機材を積載するために、リアシートを畳んだ。1957年当時の、2シーターレイアウトに敬意を表して。

フロントエンジンのFF、前側ヒンジのドアは、すべて当時のクルマとは逆だが、一方で最高出力は5倍に増え、車重は2倍となり、30%も全長は伸びている。

しばらく走らせると、1838年以来、大麦、酵母、水からウイスキーを生み出してきた、グレンオールド蒸留所から西に伸びる地点にたどり着いた。

6台の巨大な銅製のスチール窯が、ビールのような原液を醸造させてシングルモルトへと生まれ変わらせる。テイスティングのサンプルが準備され、ポルシェのオーナーズクラブ御一行などが来訪するような場所だ。

その後、グレン・キャロンに入ると、並木道は1車線に狭くなり、アップダウンも激しくなる。

激しいアップダウン 体感する500

荒れた路面の多くは、フロントがストラット式、リアがトーションビーム式のサスペンションによっていなされるが、オプションの16インチホイールからのノイズはかなり目立つようになる。

カメラマンはインフォテイメント・システムのオプションとなる、印象的なほど艶やかなビーツ・サウンド・システムのボリュームを上げた。

エンジンは低回転では十分に静かで、回転を上げるとノイズが大きくなるものの、スムーズさは変わらない。

最大トルクは3200rpmから5800rpmの間で発生し、合計200kgもの2人の大人と荷物を積んでいるのにも関わらず、69psでも不足ない走りをする。

先の見えないコーナーが続くようになると、ギアチェンジの頻度は増えてくる。

いいところ 気になるところ

ギアチェンジの頻度が増すような場所でも、穏やかにしつけられた挙動は安心感が伴うし、シフトタッチの良さのおかげで苦痛には感じない。左膝に位置するシフトノブも、コンパクトな運転席には理想的な位置だ。

ロキャロンの閑静なウオーターフロントの住宅街を進み、一部がEUの資金提供により2車線となっている、まるで螺旋を描いているかのような道路で岬を超えて、アーダロックへと向かう。

ここでフィアットに少しムチを入れてみるが、レスポンスはかなりよい。ボディロールも程よくチェックされ、フロントの挙動はソフトで粘り強く、突如出現する飛び跳ねるようなうねりにも十分対応できる。

一方でハンドリングは少しダルな印象で、リアルなフィードバックにも乏しい。£11,615(165万円)のクルマとしては十分なものだが、フォードKa+の方が、より良い感覚があった。

いよいよアップルクロス峠だ。

アップルクロス峠 心打たれる

大きなモーターホームにレンタカー、古いバイクたち、苦渋の表情のサイクリストなどをすり抜けながら、アップルクロス峠を攻める。

さすがにエンジンも辛そうだ。

頂上に着くと、海を見下ろす壮大な景色が待っていた。まるで自分が小人にでもなったかのような、息を呑むランドスケイプ。静かな入り江に面したアップルクロス峠の宿で、シーフードを味わった。

そしてマジックアワー。日没前の、道路から観光客がいなくなる素晴らしい時間だ。

アップルクロス峠はわれわれだけのものになった。フィアット500の限界を探るのに絶好の場所となる。ただし、道路の側にいる雄鹿やハイランド牛の群によって、テストは時々中断されるのだけど。

ガラスのような小さな湖の間や険しい山々の間を進んでいく。

実は、より力強いだけでなく、そのエンジン音も合わせて105psのツインエアの方が好みだ。しかし、日没までグレントリドンの道を思う存分楽しんだ。

(後編へつづく)