馴れないハードトレーニングを急に始めない

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健康のためだけでなく、立派な筋肉のためにジムでハードなトレーニングを行う――。筋トレが趣味という人には当たり前の生活かもしれないが、そのハードトレーニングが筋肉を増やすどころか、溶かしてしまい命のかかわる病気になる可能性もある。

2017年7月26日付のCNNがそんな記事を報じている。今年4月には米国医師会誌でも症例が報告されたというその病気は「横紋筋融解症」だ。

溶けた筋肉が血液に流れ込む

「横紋筋融解症」とは骨格筋の細胞が融解、壊死することで筋肉の痛みや脱力などが生じる病気だ。厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」によると、ただ痛むだけでなく融解した筋肉の成分「ミオグロビン」が血液中に流れ込み、急性腎不全や呼吸困難を引き起こし、多臓器不全によって深刻な障害が残ることもある重い病気とされている。

特定の抗生物質を服用している場合や事故による外傷、重度の熱中症、病気の影響などが主な原因とされるが、ハードなトレーニング程度で筋肉が溶けてしまうなどということがありえるのだろうか。

CNNは具体的な発症例として米テレビ俳優のクリストファー・マイケル・エヴェレットさんのケースを紹介している。

これによると、エヴェレットさんは今年6月に米国で流行しているサイクルマシンを使った「SoulCycle(ソウルサイクル)」というワークアウトに初めて参加した。マシンを漕ぎながら上半身も動かすというかなりハードな内容で、開始から5〜10分ほどで太ももに痛みを感じたものの、あまり気にせず45分間のワークアウトをやりきった。

しかし、翌日の夜には眠れないほどの激痛を太ももに感じ、足を確認すると2倍近くに腫れ上がっていたのだ。ひざも曲げることができず気分の悪さも感じたため、慌てて救急病院に行ったところ横紋筋融解症と診断。幸い早くに治療を受けたため、1週間の入院で済んだという。しかし1か月以上経過した現在でも足が痛むようだ。

ジョンズ・ホプキンズ病院の腎臓疾患専門医であるデレク・ファイン医師はCNNの取材に対し、横紋筋融解症は特異な病気ではなく、筋肉に損傷を与えるようなあらゆる種類の行為で発症する可能性があると答えている。

「これまでは兵士やアスリートに多く見られた病気でしたが、最近は非常にハードなトレーニングを受けることが流行しているため、一般の人にも多く見られるようになりました」

今年4月に米国医師会誌で、やはりサイクルマシンのトレーニングによって横紋筋融解症を発症した患者が3例報告されたという。

症状が軽度の場合、水分を与えながら容体を安定させるだけでもいいが、中・重度の場合は全身の血液に流れ込んだミオグロビンを除去するため人工透析が必要となる。前述のエヴェレットさんも入院中の1週間、ひたすら血液の濾過を続けていたようだ。

また筋肉の損傷がひどく、血管を圧迫している場合は切開手術を行う場合もあるという。

体が慣れている運動かどうかが重要

横紋筋融解症を予防する方法はないのだろうか。米国医師会誌に症例報告を行ったニューヨークの北ウエストチェスター病院のアラン・コフィーノ医師は報告の中でハードなだけでなく、体が慣れている運動かどうかが重要だと指摘。次のようにコメントしている。

「定期的に運動をしている人でも、それまで使っていなかった筋肉を酷使するトレーニングを始めると横紋筋融解症を発症するリスクが高い。初めてのトレーニングを15分行っただけで発症した患者もいる」

前述のエヴェレットさんも週に2〜3回ランニングやウェイトトレーニングをしていたが、ソウルサイクルは初めてだったという。

こうしたことからコフィーノ医師は、新しいトレーニングを始める場合はゆっくりと徐々に負荷を上げるようアドバイスしている。

「ジムなどでワークアウトクラスに参加する場合、自分が初心者であると伝え、運動前・中・後に必ず水分を摂取してください」