浜辺美波と北村匠海の見事な掛け合い――『君の膵臓を食べたい』で見せた瑞々しさとひたむきさ

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 『君の膵臓を食べたい』は、よく揶揄されてしまいがちな“難病もの映画”ではない。ヒロインである山内桜良(浜辺美波)は、主人公の僕(北村匠海)の前でも、観客である私たちに対しても、冒頭から難病である告白をしておきながら、その素振りはなかなか見せてはくれない。現在の僕(小栗旬)が、図書室でかつての桜良の幻を見る。いきなり「クイズ!」と言い放ち、はしゃいで駆ける彼女を追いかけようとも、その笑顔はすり抜けていく。彼女の絶え間ない笑顔は、“難病を抱えたヒロイン”ということがあくまで設定でしかないことを物語っていた。

(参考:映画初主演の北村匠海、『キミスイ』で見せた“生きた感情”を観客に届ける演技

 桜良を演じる浜辺は、2011年の第7回「東宝シンデレラオーディション」にてニュージェネレーション賞を受賞し、同年公開の映画『アリと恋文』で主演女優デビュー。役者として6年もキャリアを積み上げている、今年17歳、注目の若手女優だ。対する僕を演じる北村は、約10年のキャリアを持ち、2009年に公開の『TAJOMARU』では、本作同様に小栗旬演じる畠山直光の幼少期を演じた。キャリアを重ねていくことや、似た系統の作品に連投することは“慣れ”を生みやすいのだが、浜辺と北村は、いまだに“慣れ”を感じさせないような初々しい演技を本作で見せている。

 少々オーバーな仕草と物言いで常に場をリードする浜辺と、北村の呟くように受け答えをするリアクション。2人の掛け合いは、まるでデビューしたての新人俳優のような瑞々しさを湛えていた。“クラスいち地味”な僕にとって“クラスで3番目に可愛い”桜良。2人の距離がグッと近くなったケーキバイキングでの楽しいひと時の後、翌日学校へ行くと、羨むクラスメイト達から屋上へ追い立てられる僕。とばっちりを食った僕に対し桜良は悪びれる様子もなく、笑顔を輝かせる。僕は思わず、再確認するように「君は本当に死ぬの?」と問うが、桜良はあっさりと「死ぬよ」と笑みを絶やさずに答えるのだ。並べられたいくつかの椅子の上を軽いステップを踏むように渡った桜良は、さらに高い所へと階段を上がり、手の届きそうな空をバックに「天国で会おうよ」などと言ってのける。 青空の眩さのためか、あっけらかんと笑顔を見せる浜辺に対してか、北村は目を細めて息を呑むのだ。この現場を偶然見かけた者があるとするならば、交わされる言葉に、なんとも風変わりなやりとりだと思うに違いない。高校生としての佇まい、裏打ちされたキャリア、そして2人を包むようなどこまでも広がる青空が、純愛の予感みなぎるシーンを作り上げていた。

 本作に見られるような純愛の瑞々しさの獲得のためには、デビューしたての新人俳優を起用すれば良い、というような単純な話ではもちろんない。映画の終わり近く、浜辺の母を前にして溢れ出す北村の感情や、共病文庫に目を通すことで見えてくるそれまで北村も観客も知り得なかった浜辺の表情など、瑞々しさだけで表現できるものではなく、そこにはたしかに、彼らの演じることへのひたむきな姿が感じられていた。

(折田侑駿)