Image: Vox/YouTube


映画を作るのもサイエンスを利用します。

映画『ダークナイト』シリーズや『インセプション』、『ダンケルク』など大人が楽しめる極上のSFエンターテイメントを撮り続けるクリストファー・ノーラン監督。彼の作品にはさまざまなテクニックが使われているかと思いますが、映像に限らず音にも秘密が隠されています。

それは心理学者ロジャー・シェパードに由来する、「無限音階(シェパードトーン)」という音のマジック。「音階が高くなっていっているように聞こえるのに、実際は高くなっているわけではない」不思議な音のループなのです。

たとえばエッシャーの『階段の家』や、床屋の赤青白がグルグル回る看板のように、頂上に辿り着いたと思ったら、いつの間にか出発地点に戻っていたかのようなイメージです。

大雑把ですが、まずはSPLOIDよりClorox Regularの動画で雰囲気を掴んでみてください。


Video: Clorox Regular/YouTube


これをノーラン作品にどう活かしているのか? Voxの動画をチェックしてみてください。上の動画よりずっとナチュラルに映像とマッチしており、劇中は集中しないと気付かないかもしれません。


Video: Vox/YouTube


ちなみに『ダンケルク』のチクタク音は監督の腕時計とのこと。

さて無限音階の仕組みは、基音となるドレミファソラシは一定のボリュームで流しつつ、1オクターブ上のド〜シはボリューム大から小へ、反対に1オクターブ下のド〜シはボリューム小から大へと重ねて演奏することで、耳が勝手に1オクターブがループしているように錯覚してしまうのです。このテクニックはド〜シまで昇った後、今度は1オクターブ上のド〜シへ続いていくと脳が勘違いしていることも手伝っているそうな。

またハフポストによりますと、人の耳は基音と倍音(基音より倍の周波数を持つ音=高音)が同時に聞こえてもいずれか片方しか認識できず、最後に耳にした高音に近い音階しか聞こえない性質をもっているのも、この錯覚を生み出す一因とのことです。

難しいことはさて置き、監督はこのテクニックが大のお気に入りで、彼の作品ほぼすべてに無限音階が採用されているのだそうです。映画『プレステージ』では、作曲家のデヴィッド・ジュリアンとこのテクニックについていろいろ研究を重ね、感情の高まりなどを数学的アプローチで音楽に落とし込むことに成功。これにより見る人に持続的緊張感を与え、不安を煽る効果が生まれるのです。

映画音楽はただ美しいとか映像にマッチしているとかだけではなく、こういった科学的な根拠に基づいて視聴者を引き込むのですね。

・映画『ダンケルク』クリストファー・ノーラン監督にインタビュー:「飛行機はすべて実写で、CGで作られた飛行機は出てこない」

Image: YouTube
Source: YouTube(1, 2) via Digg, Business Insider
Reference: sign, ハフポスト

Adam Clark Estes - Gizmodo SPLOID[原文]
(岡本玄介)