孫正義社長は相変わらずの強気だけれど… ソフトバンク(9984)は大丈夫なのか!?

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刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」ではタイムリーな企業ネタばかりでなく、読者の関心の高い人気企業については定期的に事業・決算をチェックし分析記事をお届けしています。そうした追跡記事の中に、その後の大きな動きの予兆が含まれていることがあり読者は目が離せません。今回は8月7日に2017年4〜6月期連結決算を発表したソフトバンク(9984)を取り上げていますが、日本のマスコミが報じない部分にもしっかりとスポットを当てています。

米国の通信・放送・メディア大再編に
ソフトバンクが噛める線は消滅した

 日本の報道機関は孫社長の決算発表の席での「スプリントを軸に米携帯再編は合意が近い」との発言をそのまま伝えていますが、いくつか気になるポイントがあります。

 本紙はかねてより、米国の通信・放送・メディアのダイナミックな再編の動きを追っています。最近では「闇株新聞」7月4日号で、ソフトバンク傘下の米携帯会社スプリントが、その通信設備を米ケーブルテレビ大手コムキャストとチャーター・コミュニケーションズに提供し、同社が米国の大規模な通信・メディア再編の流れに加わる可能性があるという、大変に夢のある話題も取り上げていました。

 実はその独占交渉期間が7月末までだったはずなのです。実際、孫社長がチャーター・コミュニケーションズに買収交渉を持ちかけた形跡もあるのですが、結局のところ白紙に戻ったようです。ソフトバンクが傘下のスプリントを高値で売却する、あるいは米通信・放送・メディアの大再編に首を突っ込める可能性は、ここで消えてしまったことになります。

 決算発表後の記者会見で孫社長はスプリントと米携帯電話大手Tモバイルとの携帯電話会社同士の経営統合の可能性について言及していますが、これは3年前に独占禁止法の絡みでいったん立ち消えになった話です。トランプ政権での規制緩和の動きで可能性が復活していますが、そもそもスプリントは時価総額でも契約者数でもTモバイルを大きく下回り、仮に経営統合交渉になったとしてもイニシアティブは取れません。

 また日本では、今ごろになってスプリント(あるいはソフトバンク)がチャーター・コミュニケーションズを買収する可能性について言及している報道もありますが、最初からそんな話ではありません。日本メディアはソフトバンクに常に好意的な報道をしますが、さすがにこれは的外れでしょう。

アリババ関連のデリバティブ損失
2571億円の説明はどこへ行った!?

 さて、順序が逆になりましたが、2017年4〜6月期の「ソフトバンク」の連結決算を掘り下げていきましょう。売上高2兆1860億円(前年同期比2.8%増)、営業利益4792億円(同50%増)となっていますが、最終純利益が55億円(同98%減)しかありません。

 これについては「前年同期に中国IT大手アリババ株の売却益を2042億円計上しており、今期は逆に2571億円のアリババ関連のデリバティブ損失を計上したから」としか説明されていません。

 ソフトバンクは2016年6月にアームの買収資金をねん出するため保有するアリババ株式を79億ドル(8600億円、アリババ全体の4%に相当)売却しています。このうち29億ドルは単純売却で、前年同期に計上した2042憶円の売却益となっています。

 問題は残る50億ドルで、当時のソフトバンクの説明ではこの50億ドルのアリババ株式を担保に資金を調達し、返済は現金かアリババ株式かのどちらかをソフトバンクが選ぶことになっていました。

 アリババ株はそこから上昇していますが、ならばソフトバンクは資金を現金で返済して値上がりしたアリババ株をそのまま保有するはずで、契約途中の今期に損失計上となるはずがありません。

 またソフトバンクはこの関連において「最終損益は9億ドルの損失となる」(だから今期の損失の大半は戻ってくる)と説明しているようですが、この9億ドルは調達した50億ドルの支払金利と見られます。償還の際に投資家側が現金かアリババ株かを選べない仕組債なので、それくらいの金利が必要と考えられるからです。調達資金50億ドル×年6%×期間3年とすると、9億ドルと符号します。

 要するに今期発生した2571億円の特別損失の説明になっていないのですが、そこを指摘する日本の報道はありません。

積極的な海外投資資金を稼ぎ出していた
国内携帯電話事業の頭打ちが顕著に

 さらに国内通信事業のセグメント利益が2184億円と、前年同期比8.6%減となっています。これは規制に守られ儲け放題だった国内携帯電話事業が格安SIMに侵食されはじめたからですが、同社の積極的な海外投資を支えてきた「ドル箱」のキャッシュフローが減少に転じていることは、気に留めておく必要があります。

 さらにサウジアラビアなどと共同でIT関連ベンチャーに投資する「10兆円ファンド」が5月20日にスタートし、さっそく今期から連結対象に組み入れて1068億円の評価益(エヌビディアのようです)を計上しています。これはファンド出資者との典型的な利益相反となるはずですが、全く気にせず堂々とソフトバンク本体の連結収益に含めています。

 また3兆3000憶円で買収したアーム事業も、今期の売り上げが470億円で69億円のセグメント損失となっています。これから大きくなる事業だそうなので、ここはあまり気にしないことにしますが、それでもいろいろな「気になるポイント」が山盛りとなっている決算発表でした。本紙としては、ソフトバンクからますます目が離せなくなりました。

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