【アウディ A5試乗】峠から都会まで余裕の走り。成熟した大人のためのクーペ

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いきなり昔話で恐縮ですが、今振り返ってみると、いわゆる“バブル”の時代ーー1980年代後半から株高の余韻が続いた'90年代にかけてーーは、クルマ好きにとって酒池肉林(!?)の時期でしたね。

オヤジ向けの高級セダンはもとより、一方で“若者に人気!”の称号を得るべく、本格スポーツカーやラリー向けのベースカー、2ドアクーペにハッチバック、はたまた軽自動車に至るまで、ありとあらゆるバリエーションが試され、商品化された時代でした。

ヨーロッパ車好きのクルマ通は「クーペは成熟した大人のモノ」と苦言を呈したりもしていましたが、「スポーティなクーペは若者のもの」と思っていた人も多かったのではないでしょうか? 実際、スタイリッシュな2ドアモデルは“デートカー”としてよく売れていましたし…。

そんなバブル期に“ブイブイいわせていた”(!?)若者たちも、今ではすっかり“ちょいワルオヤジ”(死語)。百花繚乱のSUVもいいけれど、少しばかり食傷気味。ここは大人のテイストで…と考えた時に、昔取ったなんとやらでスタイリッシュなクーペに目が向こうというもの。スバリ、アウディの「A5」シリーズはいかがでしょう?

アウディのA5は“フォーリングズ”の基幹モデルである「A4」のコンポーネンツを活用したスペシャルシリーズ。現行モデルは、2017年にフルモデルチェンジを受けた2世代目となります。

2枚ドアの「A5 クーペ」、“4ドアクーペ”こと5ドアハッチの「A5 スポーツバック」、そして、クーペの屋根を切った「A5 カブリオレ」でファミリーを形成。いずれのモデルも“単なるバリエーション違い”といえない、高い完成度が光ります。

2リッターの直4ターボ(252馬力/37.8kg-m)と4輪駆動システムを組み合わせた“クワトロ”が全モデルに。同じく、2リッターターボながら、出力をやや落としたエンジン(190馬力/32.8kg-m)を積むFF(前輪駆動)バージョンが、A5 スポーツバックに用意されます。

今回は、A5 クーペ 2.0 TFSIクワトロ スポーツ(686万円)と、A5 スポーツバック 2.0 TFSIクワトロ スポーツ(686万円)に乗ることができたので、紹介しましょう。

2ドアクーペは、オプションの“グレイシ アホワイト メタリック”(8万5000円)にペイントされ“Sラインパッケージ”(44万円)でスポーティに装った仕様。ボディサイドにうねる、鋭く隆起したキャラクターラインが、高級車であることを主張します。予想されるオーナーの趣向に合わせ、トランク部のノッチを残した保守的なスタイルを採ります。

一見、大柄に見えますが、実はベースとなったA4のセダンからホイールベースを60mm短縮し、40mm短い全長4700mmのボディを載せるという、伝統的なクーペの成り立ちを守っているのです。

ドアを開けて運転席に座ると、目の前にはスポーティな3本スポーツのステアリングホイール。実はコレ、マグネシウム製(!)なんです。表面に巻かれた革の一部をカットし、金属の地を見せたりすれば「同乗者に自慢しやすいのに…」などと考えるワタシは貧乏性。

メーターナセル内には、オプションの“アウディ バーチャルコクピット”(7万円)が装着され、メーターやナビ情報が、液晶画面に表示されます。

室内は、初代モデルよりも拡大され、特にリアシートの居住性がアップ。試しに座ってみると、座面が低めで、お尻が多少落とし込まれる感はありますが、頭上、足もとともに、必要十分なスペースが確保されています。確かに“プラス2”(緊急用)のレベルを超えて実用的。A5をアシとする日常では、あまり出番のない改良かもしれませんが、A5購入時には有効かも。「いざとなれば4人乗せられるのだから」と、渋る相方を説得することができます。

加えて、ラゲッジスペースの広さも、455リッターから465リッターへと拡大しています。

いざステアリングホイールを握って走り始めれば、セダンより90kg軽いボディに、1600回転から3.5リッター級の太いトルクを生み出すエンジンですから、なんら不足はありません。7速のデュアルクラッチ式トランスミッション“Sトロニック”が、余裕を持ってドイツ・インゴルシュタットの白馬を駆け抜けさせます。

試乗車には、走行モードを切り替える“アウディ ドライブ セレクト”にプラスして、アディショナル装備の“ダンピングコントロール付きスポーツサスペンション”(14万円)が備えられていましたから、“曲がり”が楽しい峠から、アンニュイな夜の都会まで、これまた余裕を持ってカバーしてくれるはず。さらに、バング&オルフセンの“3Dアドバンスサラウンドシステム”(17万円)が、いずれのシチュエーションでも雰囲気を盛り上げてくれるに違いありません。

さて、もう1台は、A5 スポーツバック 2.0 TFSIクワトロ スポーツ。

4ドアクーペを謳うだけあって、なだらかに後方に下降していくルーフラインが美しい。ダックテール状に小さく跳ね上がるエンド処理も洒落ていて、総じて2ドアクーペより若々しい印象。

4ドアクーペといいつつ、実はガバッと開けられるリアハッチを持つ5ドアハッチで、その高い実用性から、販売台数はA5シリーズの8割を占める人気モデルです。ボディサイズも、A4セダンと同寸の2825mmのホイールベースに、10mm長い全長4750mmのボディを載せるなど、2ドアクーペとは成り立ちからして異なるんですね。

荷室容量は456リッター。リアシートの背もたれは4:2:4の分割可倒式で、スキー板などの長尺物を無理なく搭載できるほか、細かく容量を調整できます。

しかも! リアシートは3人掛け。つまり、A5スポーツバックの乗車定員は5名。流麗なボディスタイルに高い実用性。これは人気が出るはずです。

日本市場でも2ドアクーペ以上に力が入れられていて、546万円の2.0TFSI(FF)、603万円の同スポーツ(FF)、そして試乗車の2.0 TFSIクワトロ スポーツ(686万円)がラインナップします。

走行性能、装備レベルでは、試乗車の2.0 TFSIクワトロ スポーツが文句なしですが、雪道やラフロードを行く予定がない人の場合、FFモデルを選んでスタイリッシュに使い倒す、という手もあります。

週末ごとにお出掛けするようなカップルの場合、アバント(ワゴン)ではなく、あえてA5 スポーツバックを選択する、というのもアリでしょう。荷物の出し入れも楽ですし、リアシートを活用することで、いわば“ふたり乗りのアバント”として使えます。邪魔者はなし。これぞ“成熟した大人のクルマの使い方”かもしれませんね。

<SPECIFICATIONS>
☆クーペ 2.0 TFSIクワトロ スポーツ
ボディサイズ:L4700×W1845×H1365mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:1984cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7AT(Sトロニック)
最高出力:252馬力/5000〜6000回転
最大トルク:37.7kg-m/1600〜4500回転
価格:686万円

<SPECIFICATIONS>
☆スポーツバック 2.0 TFSIクワトロ スポーツ
ボディサイズ:L4750×W1845×H1390mm
車重:1610kg
駆動方式:4WD
エンジン:1984cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7AT(Sトロニック)
最高出力:252馬力/5000〜6000回転
最大トルク:37.7kg-m/1600〜4500回転
価格:686万円

(文&写真/ダン・アオキ)