【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩政権が国民や軍人を動員し、国連制裁決議を非難した政府声明に対する支持集会を相次ぎ開かせている。

 制裁が実行されれば、経済への打撃は避けられない。米領グアム沖に弾道ミサイルを撃ち込む計画を公表するなど、過度にトランプ米政権との対決姿勢をあおる裏にも、制裁が権力基盤を直撃することへの焦りが透けてみえる。

 「国連制裁決議は米国の極悪非道な策動の産物で、わが国への挑戦だ」。朝鮮中央テレビは10日深夜、軍人らが政府声明への支持を表明する集会で、李明秀朝鮮人民軍総参謀長がこう演説するもようを伝えた。

 9日にも平壌市民10万人余りが参加したとする支持集会が開かれ、10日には警察に当たる人民保安省幹部による集会が開催された。

 北朝鮮は、制裁決議に反発し「正義の行動に移る」と表明した政府声明を7日に発表したのを皮切りに対外機関や軍による対米非難声明を乱発。韓国大統領府高官は「北が制裁決議に過敏に反応している」とし、グアム沖へのミサイル発射計画も「内部結束を図るため」だとの見方を示した。

 昨年3・9%の経済成長を記録するなど、近年、経済は比較的堅調に推移してきた。だが、今回の国連制裁は、北朝鮮の主力輸出品である石炭などの全面禁輸を定めており、実行されれば、輸出総額の3分の1が削られると予想される。

 経済への打撃が顕在化すれば、金委員長の権力基盤が揺るぎかねない。国民に支持集会を強いる背景には「あくまでトランプ政権の圧迫政策のせいだ」と前もってすり込む意図がうかがえる。同時に、制裁で財政が窮迫する前に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させ、トランプ政権に譲歩を迫る“時間との闘い”にもせき立てられている。