観光大国化する日本の「美容ビジネス」の未来

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美容のビジネスは、日本では5兆円規模といわれている。2兆円が化粧品販売、サロンエステなどの美容技術産業まわりで2兆円、その他関連ビジネスで1兆円。国家予算が70兆円と考えると、5兆円はかなり大きな数字と言える。微増だが、国内の美容市場も毎年拡大している。

私のビジネスはそんなにうまく行っていないと、多数ご意見ありそうだが、「うまく行っている」「美容は楽しい仕事」というイメージがあるからこそ参入人口も多く、業界が拡大している。

美容関連の仕事は「仕事が辛くやりたくないが、生活費を稼ぐために働く」という類の仕事ではない。本当にお金を稼ぎたいなら美容業より稼ぎの良い仕事は多いし、美容師やヘアメイク、ネイリストにおいては、研修を終えたらすぐ第一線で稼げる、なんて話はない。2〜3年の修行があり、そんなに給料は高くないところも多い。また成功者や稼ぎ頭は、腕や才能も必要だが、容姿やファッションセンスがものをいったりもする。

日本全国に寿司屋と蕎麦屋が合計でおよそ10万件である一方、美容室は24万軒あり、50万人が働く。これに理容室、エステ、脱毛サロン、ネイル、マツエク、痩身、ヘアメイク、(百貨店などの)美容部員などを入れると技術者ばかりで、100万人産業といわれてくる。資生堂は日本だけで美容部員が1万人いるそうだ。

そんな巨大産業は、最近では外国人にも人気がある。リクルート美容総研のインバウンドのデータによると、歴史や食事以外に、日本での美容が人気であると統計結果が出ている。わずか5年前に年間1000万人を目標にしていた観光客数は、今年上半期だけで1400万人を突破、年内に3000万人という記録を樹立するとされている。

京都では、外国人観光客が増えすぎて地元の人が路線バスに乗れないという。また、箱根の温泉は水着着用の外国人でごった返していると聞いたこともある。ホテルは数が足りず、とうとうラブホテル業界が政府から呼び出され、観光ホテルに内装を替えているらしい。それでも人がやってくる。嬉しい悲鳴である。

こんな観光バブルは日本の歴史始まって以来で、迎え入れる側がどう対応すればいいかをよく理解していないまま、日々が過ぎている。江戸時代から観光客が多かった京都だけは多少は覚悟できていたそうだが、まさか窓からは空いてそうに見えるバスが、スーツケースを持った外国人で埋まっているとは想像できなかったらしい。

他方、パリやローマ、ロンドンは、観光が一大産業という意識もあり、住民は外国人に慣れている。外国人に物を売るのも慣れているので、「そら!観光客がきた!!日本人大歓迎!」と積極的だ。

いま外国人には、京都、奈良、東京以外では、伊勢、秋田、神奈川が大人気だそうだ。伊勢は2016年の伊勢志摩サミット効果もあるが、世界に名だたる真珠、伊勢神宮があり、1000万人の観光客のうち約10万人の外国人だそうだ。

秋田は、リチャード・ギア主演の映画「HACHI 約束の犬」のおかげで急浮上。秋田犬見たさに、ペット好きが世界中から集まっている。渋谷の忠犬ハチ公より、秋田小町のお嬢さん方よりも、Webもポスターもわんちゃんが登場するのがいまの時流だ。

神奈川は、葛飾北斎の名画が発端。有名な波向こうに富士山が見えるあの浮世絵の英語タイトルが「Kanagawa-oki」であるため、外国人はの浮世絵世界を見たくて神奈川県へ向かう。実際はデフォルメなので恐縮なのだが……。

こうした観光業と美容を結びつけているのが、新しいホテルに併設されるスパやアメニティ、ネイルサービスだったりする。外国人のヘアカラー需要も増えている。それに伴い美容関連ではクレーム対応もビジネスとして必要とされており、美容に特化した弁護士事務所やコンサル、クレーム対応保険もどんどん増えている。

日本の技術者は、自前の経営に加えて外国人対策や法律対策など、やりきれないくらいの仕事が待っている。それでも観光特需が上回ると予測されている。

外国でメイクも学んだ若手は、いま言語以上に外国人の肌に慣れているということで、ニーズが高まっていたりもする。また前述のリクルート美容総研によると、ネイルは「痛ネイル」と呼ばれる、アニメキャラやお寿司を描くネイルの需要が高い。もちろん和柄は必須である。

しかし、ネイルはAIが台頭するとなくなるビジネスの一つとも言われている。3Dプリンターのような機械が、簡単に手足のネイルを印刷さながら作ってくれるのだ。エステもすでに、痩身、脱毛、いろんなジャンルで機械が登場している。AIまでいかなくても、エステ関連に機械の導入はまだまだ増えそうだ。

美容の未来で考えると、伸びるのは外国人対応と機械対応ではないだろうか。一般的に機械や数字に弱いと言われる女性が多い業界なので、機械が使える女性スタッフの育成か、もしくは誰でも使える機械の需要が高くなるのではないかと思う。