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もくじ

ー意匠と技術 ★★★★★★★★★★
ーインテリア ★★★★★★★★★★
ー動力性能  ★★★★★★★★★★
ー乗り心地と操縦安定性 ★★★★★★★★★☆
ー詳細スペックで学ぶ 918スパイダー
ーAUTOCARの結論 ★★★★★★★★★★

意匠と技術 ★★★★★★★★★★

918のスタイリングを目の前にすれば、議論するまでもなくそのデザインの意図は明確にわかる。

カーボンファイバー製FRPボディは独創性を欠いた機能性の追求ではなく、過去半世紀にわたるすべての重要なポルシェ製レーシングカーへのオマージュに満ちている。

917、935、906、そしてRSスパイダーを思い起こさせるモチーフがあちこちに認められるのだ。

このようなクルマを性能的な要件だけで評価するのは、適切ではないだろう。だからといって野心に欠ける製品というわけでもない。

実測1740kgの車重はマクラーレンP1よりも200kg近く重いかもしれないが、リチウムイオンバッテリーのサイズは同じ6.8kWhながら2倍だ。さらに電気モーターはより大きな推進力でエンジンを補助し、総トルクは50%も大きい。

918のアンダーボディは応力担体のモノコックタブと、そこに取り付けてエンジンを載せるサブフレームで構成されている。いずれもカーボンFRP製だ。

ボディパネルとドアも素材は同じくCFRPで、バンパーはフレキシブルなポリウレタン製である。必要な箇所は重量がかさむ分、ほかはできるだけ軽量に造られているというわけだ。

サスペンションとエンジンは2005年に製作されたレースカーのRSスパイダーから受け継いだ。

リアミドに搭載されるのは、鋳鉄/アルミ/チタン混成の4.6lV8である9000rpm以上も回り、608psを発揮するが、重量はわずか135kgに収まっている。

前後サスペンションはアルミ鍛造のウィッシュボーンとリンクからなり、PASMアダプティブダンパーを標準装備する。タイプ997の911GT3に採用した電子制御の機械式リアステアシステムも備えている。

一方、駆動システムの電動部分については、前後のアクスルが各1基の永久励磁電気モーターを備えており、合計で最大282ps/59.6kg-mである。

リアのモーター兼ジェネレーターは、内燃エンジンとともにPDKトランスミッションを介して後輪を駆動する。

それに対してフロントのモーターは単段で、許容回転を使い果たすよう意図的にローギアードに設定され、265km/hに到達したところで切り離される仕組みである。

パワートレイン全体では、クランクシャフトレベルでのピークトルクは130.5kg-mに達し、8500rpmで最高出力886psを発生する。最高速度は345km/hだ。それでいて、CO2排出量は70g/kmにすぎない。

要するに2015年型のホンダF1エンジンよりもパワーが大きく、なおかつホンダ・インサイトよりCO2排出量が少ない。それが918というクルマだ。

インテリア ★★★★★★★★★★

最高水準のパフォーマンスを持つライバルたちと比べたとき、918のもっともシンプルかつ特徴的なセールスアドバンテージは、その名前に表されている。すなわち、スパイダーであることだ。

2枚のCFRP製ルーフパネルは簡単に脱着でき、ボンネット下の荷室に設けられた専用のスロットに収納できる。オープンエアドライビングの爽快さを手軽に享受できるのだ。

低いシートへのエントリーは、予想どおりに若干ながら厄介だ。これはドア開口部の短さに起因する。身体をかがめて膝を曲げてから足を入れるような乗り込み方が求められる。

ドアは一般的な前ヒンジ式で、歩道側への劇的アピールという点ではシザーズやガルウィングに遠くおよばないが、日常的な使い勝手を考えるなら、はるかに分別ある選択といえる。

コクピットにはカーボンが多用されており、ふたつのゾーンに整然と区分けされている。

メインゾーンがステアリングホイールの周囲にまとめられたドライバーの操作装置で、サブゾーンはカレラGTを想起させる、黒いパネルがせり上がったセンターコンソール部分だ。

操作系はエルゴノミクスに則って明瞭にレイアウトされているが、慣れは必要である。

ギアセレクターは右側シフトパドルのすぐ前方に配置されており、ポルシェが通常はセンタートンネル上に置くドライブモードセレクターは、ステアリングホイールの右下部分に収められている。

リッチで目を引くマテリアルの質感は、素晴らしい技術的洗練度と合わせてP1やラ フェラーリよりも刺激的な効果をもたらす。

918のキャビンはそれ以外の部分と同様、これがどんなクルマであるかを、どんな走りをするかのアピールと同じくらい強く訴えかけてくる。走りのレベルを考えれば、これは十分なほめ言葉となるだろう。

動力性能 ★★★★★★★★★★

ドライサーキット

ポルシェ918スパイダー
ラップタイム:1分5秒7

マクラーレンP1
参考タイム:1分6秒8

驚愕の事実は2点ある。ひとつは918がP1よりもかなり速いことだ。そしてもうひとつは、918がすべてのテストを1セットのタイヤだけで完遂してしまったことである。

918は高速域で向きを変えるとき、とても生き生きとしている。

ESPシステムはよく躾けられている。完全な解除も可能だ。

ウエットサーキット

ポルシェ918スパイダー
ラップタイム:1分21秒2

マクラーレンP1
参考タイム:1分20秒5

重量の大きさと、リアに装着したミシュラン・パイロットスポーツカップ2の325mm幅のため、918はウェット路面で少し苦しんだ。トラクションと横方向のグリップの両方が弱い。

T8の脱出ではスロットルを慎重に絞った。さもないと、あっという間にリアが流れる。

T5を回るときにリアホイールの荷重を抜くと、素早いカウンターステア操作が求められる。

発進加速

テストトラック条件:乾燥路面/気温16℃
0-402m発進加速:10.2秒(到達速度:233.2km/h)
0-1000m発進加速:18.2秒(到達速度:290.3km/h)

制動距離

97-0km/h制動時間:2.30秒

パフォーマンスこそ918最大の存在理由だ。そしてそれは、どの領域においても期待を裏切らない。

ギアを固定したままでの加速性能は比類ない。驚くべきはその速さだけでなく、獰猛なまでに瞬間的な電動モーターのトルクが生むフレキシビリティだ。

32-64km/hと48-80km/hの中間加速は、いずれもわずか1.0秒にすぎない。P1ならばそれぞれ1.3秒と1.1秒を必要とする場面である。

32km/h刻みの加速タイムを見比べると、P1のほうが0.2秒ほど速い速度帯がいくつかある。これはP1のほうがローギアードであることと、918のほうが重いことによるものだ。

たとえば4速での177-209km/h加速は、P1は1.9秒だが918は2.2秒である。ただしP1は222km/hでレブリミッターが作動してしまうが、918はそのまま300km/hをはるかに超えていく。

シフトアップを伴っての加速では、2台はさらに僅差となる。0-402m加速が10.2秒、0-1000mが10.8秒で同タイムなのだ。ちなみにブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツはそれぞれ0.1/0.2秒しのぐ。

0-97km/h加速では2.6秒で918がヴェイロンに並ぶが、これはP1にはない4WDによるトラクションの恩恵だ。

馬力荷重比では918は543ps/トンとなり、P1の615ps/トンやヴェイロンの653ps/トンに比べると見劣りする。だが、それは相手が悪いだけの話であって、絶対的にはハイエンドパフォーマンスカー集団に混じっても堂々としていい数字だ。

出力特性も素晴らしい。RSスパイダーのエンジンを多少手直ししたそれはレスポンスに優れ、サウンドも申し分ない。ターボ過給エンジンを積むライバルはうらやむところだろう。電動モーターは好ましい旋律を奏でるとともに、単体でも6.6秒の0-97km/h加速を可能にする。

乗り心地と操縦安定性 ★★★★★★★★★☆

メカニズムはポルシェの他車種と大きく異なるが、走り出せばまさしくポルシェのフィールだ。乗り心地もステアリングも、そして大半の状況ではハンドリングも、間違いなくヴァイザッハ産とわかる類いのものである。

乗り心地は、サイドウォールの高いタイヤを履くケイマンよりもスパルタンな911 GT3に近いが、それにより、重量がかさんで確実な踏ん張りを必要とする918のボディコントロールが引き締められていることを考慮すれば、価格に見合ったものといえる。アダプティブダンパーは、ひどく荒れた路面からの衝撃にも音を上げない。

ステアリングは手応えが比較的重めなポルシェに共通する特性で、直進位の置付近ではドイツ車的なスタビリティとソリッドさを保つ。そこからステアリングを切っていけば、自然に重みが増していく。

P1のデリケートなステアリングに比べるとオイリーな感触は少なく、リミットに近い舵角まで手応えはリアルで、全速度域においてロードフィールにあふれる。

ただし、P1のほうが機敏でナチュラルだ。それを基準にすると、やや不満が残る。

だが、タイトなボディコントロールと反応に優れたステアリングのおかげで、918は分別ある速度の範疇でも楽しめるロードカーに仕上がっている。エンジンは常に魅力的だし、変速は素早い。

また、フェラーリでいうところのマネッティーノのような電子デバイスを備えており、エンジンとギアボックスのセッティングを目的に合わせて変更できる。

しかし、常にマニュアルモードに軍配が上がるのはどういうわけだろうか。疑問を禁じ得ない。

一方、サーキットでは、918は驚異的なマシンとなる。一日中走らせても疲れを知らない911 GT3と同じタフさを発揮し、しかも多くのレーシングカーを超えるペースで走るのだ。驚異的なトラクションとグリップ、そしてスロットル操作による方向転換の容易さを備える。

ブレーキもセンセーショナルだ。ドライでは、113km/hからわずか37.8mで停止する。これはP1の制動距離よりも3.1m短い。

スペックで学ぶ 918スパイダー

メカニカルレイアウト

918はカーボンファイバー製のバスタブとカーボンファイバーで補強された樹脂製サブフレームを組み合わせたプラットフォームにV8をミドマウントし、前後車軸のそれぞれに電気モーターを備えている。

リヤのモーターはガソリンエンジンと7段PDKを共用し、フロントのモーターは電磁式クラッチを介して前車軸と接続される。リチウムイオンバッテリーの搭載位置はキャビンの後方だ。

エンジン

駆動方式:ミド縦置き4輪駆動
形式:V型8気筒4593cc
ブロック/ヘッド:アルミ軽合金
ボア×ストローク:φ95.0×81.0mm
圧縮比:8.1:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:608ps/8700rpm
最大トルク:55.1kg-m/6700rpm
許容回転数:9150rpm
電気モーター:286ps/59.6kg-m
総合出力/トルク:887ps/130.5kg-m
馬力荷重比:543ps/トン
トルク荷重比:79.9kg-m/トン
エンジン比出力:132ps/ℓ

エンジン性能曲線

シャシー/ボディ

構造:カーボンファイバーモノコック
車両重量:1634/1740kg(実測)
抗力係数:0.35
ホイール:(F)9.5J×20,(R)12.5J×21
タイヤ:(F)265/35R20,(R)325/30R21
ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2
スペアタイヤ:補修キット

変速機

形式:7段DCT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
3.91/11.42.29/19.51.58/28.2
1.19/37.30.97/45.90.83/53.6
0.67/66.3
最終減速比:3.09

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:10.2km/ℓ
ツーリング:15.6km/ℓ
動力性能計測時:3.2km/ℓ
メーカー公表値:消費率
市街地:-
郊外:-
混合:33.3km/ℓ
燃料タンク容量:70ℓ
現実的な航続距離:714km
CO₂排出量:70g/km

サスペンション

前:ダブルウィッシュボーン/コイル+スタビライザー
後:マルチリンク/コイル+スタビライザー

ステアリング

形式:ラック&ピニオン(電動アシスト)
ロック・トゥ・ロック:2.30回転
最小回転半径:6.35m

ブレーキ

前:φ410mm通気冷却式セラミックディスク
後:φ390mm通気冷却式セラミックディスク

静粛性

アイドリング:60dB
3速最高回転時:92dB
3速48km/h走行時:73dB
3速80km/h走行時:76dB
3速113km/h走行時:78dB

安全装備

ABS, EBD, PSM, PTV
Euro N CAP/-
乗員保護性能:成人-, 子供-
歩行者保護性能:-
安全補助装置性能:-

発進加速

実測車速mph(km/h)秒EVモード
30(48) 1.4 2.4 

40(64) 1.7 3.6 

50(80) 2.2 5.0 

60(97) 2.6 6.6 

70(113) 3.2 8.6 

80(129) 3.8 10.9 

90(145) 4.5 13.9 

100(161) 5.3 17.9 

110(177) 6.2 - 

120(193) 7.1  

130(209) 8.3  

140(225) 9.5  

150(241) 10.9  

160(257) 12.7  

170(274) 15.0  

180(290) 18.2  

中間加速〈秒〉

中間加速mph(km/h)2nd3rd4th5th6th7th
30-50(48-80) 1.0 1.2 1.4 1.7 - - 
40-60(64-97) 1.0 1.3 1.4 1.6 1.8 - 50-70(80-113) 1.1 1.3 1.6 1.7 1.9 2.2 
60-80(97-129) - 1.4 1.7 1.9 2.1 2.3 
70-90(113-145) - 1.4 1.8 2.1 2.3 2.5 
80-100(129-161) - 1.5 1.8 2.3 2.6 2.8 
90-110(145-177) - 1.6 2.0 2.4 2.8 3.2 
100-120(161-193) - - 2.1 2.5 2.9 3.5 
110-130(177-209) - - 2.2 2.7 3.1 3.9 
120-140(193-225) - - 2.4 2.8 3.4 4.4 
130-150(209-241) - - 2.8 3.0 3.8 4.8 
140-160(193-257) - - - 3.4 4.1 5.5 
150-170(241-274) - - - 4.0 5.0 - 

最高速

AUTOCARの結論 ★★★★★★★★★★

「技術的には目を見張る存在である。
 だが感情的な魅力ではP1に僅差で届かない」

われわれロードテストのスタッフには、918スパイダーはマクラーレンP1やラ フェラーリの比較対象にふさわしくないかもしれないという懸念があった。

パワーは900ps台に届かず、公称重量はP1より200kgほど重いため、パワー勝負では置き去りにされる可能性があったからだ。

しかし、これが杞憂にすぎないのは、少し考えればすぐにわかったことだ。918スパイダーはポルシェであり、ヴァイザッハがスポーツカー造りでしくじることは滅多にない。

そしてそのとおりに、ギアを固定したままでの加速でも、シフトアップを伴う加速でも、公道でもサーキットでも、918スパイダーはほかのハイエンドスーパーカーに脅かされはしない。

難癖を付けるとしたら、ハードに走らせるならマクラーレンP1のほうが好ましいと本誌テスターのほとんどが同意するハンドリングや、室内のスポーツドライビング志向もP1のほうが強い点が指摘できる。

だが、それが918の技術的な素晴らしさを認め、満点を付けることを妨げる要素にはならない。