未知の生物による襲撃かと思いきや(画像はABCの当該記事ページより)

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豪メルボルンで2017年8月5日、海に足をつけていた10代の少年が家に帰ると足に無数のピンホールのような穴が開いており、出血が止まらず病院に搬送されるという事件が起きた。

まるでホラーや未知の生物が侵略してくるSFのような話だ。診察した医師らは原因不明としているが、複数の海外メディアが「海中に住む微小な甲殻類が原因ではないか」とする海洋学者の声を伝えている。

血だまりができるほどの出血

豪州の公共放送「Australian Broadcasting Corporation(ABC)」の8月7日付の記事のよると、被害にあったのはメルボルン在住のサム・カニザイさん(16)。

8月5日にサッカーの試合に出た後、足を冷やそうと地元のビーチに行き30分ほど海に足をつけていた。豪州は現在冬にあたるため、海水も夜になると比較的冷たいためだ。

ABCの取材に対しカニザイさんは、

「足にかすかに針で刺したような痛みはあったのですが、水も冷たかったし感覚が麻痺してよくわかりませんでした。砂かなにかがついているのだと考え払い落として、そのまま靴を履いて家に帰りました」

しかし、家に戻ったところ、カニザイさんの父親が異変に気がついた。足に無数のピンホールのような小さな穴が開いており、大量に出血していたのだ。床に血だまりができるほどの出血で、父親は「まるで戦場で吹き飛ばされた怪我のように感じた」と語っている。

家族が血を洗い流し止血しようとしたが、どうやっても血は止まらず病院に連れて行くことにした。その後出血は止まったものの、病院の医師らも足に空いた穴の原因がわからず困惑していたという。

カニザイさんの父親は息子の足を「食べた」生物の正体を探るべく、ビーチに向かい生肉を海に浸して、集まっていた生物を採集。すると小さなダニのような生物が大量に肉に集まっていることがわかった。

動画投稿サイト「ユーチューブ」にカニザイさんの父親がアップロードした動画を見ると、確かに細かな肉片の周りに小さな生物が群がっており、肉を食べているようだ。

さらにこの生物を豪ヴィクトリア州で博物館を運営する団体ミュージアム・ヴィクトリアの海洋部門に送ったところ、その正体が明らかになった。「端脚類」という甲殻類の一種だったのだ。

同団体のフェイスブックページで、調査にあたったジェネフォー・ウォーカースミス博士は「少年の足を食べたのは端脚類の一種である『Lysianassid(フトヒゲソコエビ)』だろう」とコメント。

本来は腐肉食の生物で、海中で魚の死がいなどを食べて生活している。血液凝固防止作用のある成分を放出することが知られており、カニザイさんの出血がなかなか止まらなかったのも、この成分によるものだろうと推測している。

足が食べられるのはまれ

ミュージアム・ヴィクトリアのフェイスブックページによると、端脚類は1万種以上が存在する生物で、世界中の海で確認できるという。

ということは、日本を含め世界中の海でカニザイさんのように食べられる可能性があるのか気になるが、ウォーカースミス博士は「極めてまれなケース」としている。

端脚類は前述のように腐肉食で水中を泳いでいる生物を襲うことはない。まして、人間のように泳ぐために激しく動く生物には近づこうともしないため、食べられるといったことはまず起きないようだ。

ではカニザイさんが食べられたのはなぜか。ウォーカースミス博士は海水の温度と「足を浸していた」という行為が問題だったのではないかと推測している。

「冷たい海水で冷やされて、しかも動くことのない足は端脚類からすると肉の塊だったでしょう。普通は咬まれれば気がついて足を動かし、端脚類も離れていくはずですが、カニザイさんは冷えて感覚が麻痺しており、30分も浸したままだったことで、これほどの事態になったのでしょう」

端脚類に足を食べられるかもしれないと考え、海水浴を避ける必要はなさそうだ。