Photo: ギズモード・ジャパン


設定を一新し、「アイアンマン」のいるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)へと合流した若き等身大のマーベル・ヒーローの活躍を描く映画『スパイダーマン:ホームカミング』。今回はその期待の新作でメガホンを取ったジョン・ワッツ監督にインタビュー!

自身の3作目の長編映画にして超大作の監督に抜擢された経緯や、「スパイダーマン」や「バルチャー」の撮影の秘密、参考にしたコミックのエピソードなどなどたくさん語っていただきました!


170808_spiderman_homecoming4.jpg
Image: ©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.


--今回、『スパイダーマン』という超大作の仕事のオファーはどうやってきたんですか?

ジョン・ワッツ(以下、ワッツ):まず最初に映画『コップ・カー』を気に入ってくれたマーベルのプロデューサーから電話があったんです。それは映画のオファーとかではなく、ただ会って話そうというものでした。

筆者注:『コップ・カー』はジョン・ワッツ監督による2015年の長編映画。家出中の10歳の2人のやんちゃ坊主が荒野でパトカーを発見し、道路を爆走して遊び始めてしまったことをきっかけに、そのパトカーにヤバイものを積んでいた持ち主の悪徳警官に追われてしまうというスリラー。悪徳警官役のケヴィン・ベーコンの怖すぎる演技は大人でさえ悪夢を見るレベル。『スパイダーマン』を見る前に要チェックの作品。今ならNetflixでも見られますよ!

なのでそのときは、これはよくある「挨拶はしたけど、それ以降音沙汰なし」のパターンだとは思ったのですが、マーベル・スタジオに行ってみたかったので、会いに行くことにしました。

そしたら、マーベルはソニーと提携して『スパイダーマン』をMCUの中で映画化するということに関して交渉中だったんです。スパイダーマンは高校生で、スーツはトニーが作るといった設定で映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でお披露目をするという構想について教えてもらいました。本当に素敵なアイデアだと思いましたね。

ちょうど僕は高校生が主人公の青春映画を撮ろうと脚本の準備をしていたタイミングで、ありとあらゆる青春映画をリサーチしていたので、高校生のスパイダーマンに関するアイデアを出すために改めて会議に呼ばれることになりました。

そしてそれから何度も会議に呼ばれて、いろんなアイデアやビデオを準備し、ストーリーボードやプレビジュアライゼーション(プレビズ)を作ったりして会議を重ねていくと、段々と会議に参加する人が増えていって、気がついたら監督の座を射止めていました。

こんな仕事を受けられるなんて思っていませんでしたよ。他にも優秀な監督たちも候補になっていましたし、私としては「せっかくだから大きなスタジオに企画を出す経験を積んでおこう」くらいの心持ちでやっていました。正直、今でも信じられません。


170808_spiderman_homecoming1.jpg
Image: ©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.


--今回のような凄まじい予算の映画でCGを使うのは初めての経験で大変だったと思いますが、何か特別な工夫はしましたか?

ワッツ:例え完全にCGに置き換わるものでも、可能な限り実物を用意して実写で撮ることにしました。こうすることで、CGが仕上がっていない状態の映像でもチェックしやすくしたんです。

実際に糸が出なくても、未完成のCGのものでチェックするよりは見やすいし、なにより実物があると撮りやすいのです。

--CGで言えば、今回はトニー・スタークが用意した凄くハイテクなスーツが登場しますが、あれはだいたいどれくらいCGで描かれているものなのですか?

ワッツ:『シビル・ウォー』に登場したときのスパイダーマンは100%CGでした。スパイダーマン役がトム・ホランドに決定したときのタイミングで実物のスーツを作っている時間がなかったんです。

そして今回の映画では、そんなCGに限りなく近づけて実際にスーツを作ったんです。たくさんのシーンで使っていますが、CGに近づけてあるので所々をCGに置き換えてもカッコよく見えるんですよ。ただ、目を動かすシーンでの目は完全にCGです。

--予告にもあった、ピーター・パーカーがスパイダーマンのスーツのボタンを押して着るシーンはどうやって撮ったのですか?

ワッツ:実際にあんな機能を用意することはできないので、普通のスーツとぶかぶかのスーツの2種類を用意して2回撮り、編集とCGで組み合わせています。トム(・ホランド)のぶかぶかのスーツ姿は面白かったですね(笑)


170808_spiderman_homecoming2.jpg
Image: ©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.


--スーツはトニー・スタークが作ったものであるという設定は最初からあったとのことですが、今回のスーツにアイアンマンのアーマーのAI「ジャービス」と同じようなAIが搭載されているのも最初からあったアイデアなのですか?

ワッツ:あれは僕たちが脚本を作る中で思いついたものです。「ピーターがスーツのAIを起動すると、それが色っぽい大人の女性の声で困惑する」というのは面白いと思ったんです。

--その声はジェニファー・コネリーが担当していますが、ジャービス/ビジョン役のポール・ベタニーの妻でもある方ですよね。それを狙った配役なんですか?

ワッツ:あのAIはジャービスの妻なんですよ(笑)。そんな狙いもあったんですが、あとジェニファー・コネリーが出てた青春映画の『恋の時給は4ドル44セント』が、AIの登場するあのシーンの元ネタだからというのもあります。シチュエーションをちょっと似せてあるんですよ。


170808_spiderman_homecoming3.jpg
Image: ©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.
ピーター・パーカーが恋心を抱く上級生のリズ


--ジョン・ヒューズの青春映画をとにかくリサーチしたわけですね……ちなみに、それ以外にこの映画を作る上で何か特別な準備をしましたか?

ワッツ:コミックをとにかくたくさん読み始めました。可能な限り、スパイダーマンに詳しくなりたかったので、とにかく読めるだけ読みまくりました。

スパイダーマンの作品内でやるべきこと、やるべきではないことを把握し、作品のトーンも確実に捉えておきたかったんです。1日中コミックを読む仕事は本当に楽しかったですよ(笑)

--映画を作る上でとりわけ参考にしたコミックはなんですか?

ワッツ:まず、スティーブ・ディッコがアートを担当していた時期の『アメイジング・スパイダーマン』ですね。映画の中でもシーンを直接的に引用しています。

もちろん、「バルチャー」(今作の敵役、ヴィラン)の初登場回もたくさん参考にしています。ちょっとシチュエーションは変えてありますが、参考にしたコミックに似たシーンも作りました。

その他だと、コミックの『アルティメット・スパイダーマン』も参考にしています。高校生のピーター・パーカーを主人公にした凄くいい物語が語られた作品です。

あとは、『スパイダーマン・ラブス・メリー・ジェーン(Spider-Man Loves Mary Jane)』も大好きです。メリー・ジェーンの高校生活の部分に焦点を当てた本当に可愛らしい物語でなんですよ。

筆者注:『スパイダーマン・ラブス・メリー・ジェーン』は、『メリー・ジェーン(Mary Jane)』、『メリー・ジェーン:ホームカミング(Mary Jane: Homecoming)』に続けて2005年に始まったシリーズ。どれもメリー・ジェーンを主人公に彼女の高校生活と恋を描いた異色の作品。

--「バルチャー」と言えば、今回なぜ彼をヴィランに選んだんでしょうか?

ワッツ:彼がスパイダーマンの最初期のヴィランだからというのがまず第一の理由です。

そしてMCUの世界にはかなり高度なテクノロジーがたくさん登場するので、そんなテクノロジーで作ったスーツで戦う設定のアイデアが気に入ったというのもあります。

加えて、普通の少年がヒーローになったらどうなるかという話を描く映画にヴァルチャーを出すことで、同時に普通の大人がヴィランになってしまったらどうなるかを描けるところにも惹かれました。

そしてもちろん画として、スパイダーマンが翼を生やした男と戦うシーンは最高にカッコいいものになるだろうというのもありました。

--では、かつてサム・ライミが「バルチャー」を映画に出そうとしていたこととは関係ないのですか?

ワッツ:特に関係はありませんね。なんといっても定番のヴィランなので、常に候補には上がっていたんだと思いますが、当時は彼をカッコよく見せるアイデアが思いつかなかったのでしょう。

そもそもコミックでは、グリーンのタイツに羽というちょっと滑稽な格好をしていますからね(笑)

--そんなバルチャーにマイケル・キートンを配役したのはどんな理由があったんでしょう? もしかして、バットマンやバードマンを演じていたからですか?

ワッツ:それもありますね(笑) 本当に素晴らしい俳優で、名前が候補に上がったときはすぐ彼にしようとしたんですが、あまりに狙いすぎで変な感じになるんじゃないかという心配はありました。しかし話し合いの末、彼はこの役にぴったりだという結論が出ました。当然ですよね。


170808_spiderman_homecoming5.jpg
Image: ©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.


--バルチャーのスーツは超かっこいいデザインでしたが、あれはどれくらいCGなんですか?

ワッツ:あれは大部分がCGです。実物として作ったのは、身体に繋いでいる部分くらいですね。常に色んなパーツが動き続けるものので、実物を作るのは無理でした。

--そうなんですね! スーツを使ったアクションも結構ありましたが、撮影は大変ではありませんでしたか?

ワッツ:プレビズの段階で事前にしっかりと計画して撮影すれば、実は簡単なんです。大体の動きはコンピューターで用意しておいて、それを見てから必要なものだけを撮るという形になります。このやり方もなかなか楽しいものですね。

マイケル・キートンはピョンと着陸するシーンだけやればよかったので、楽だったと思いますよ(笑)

--前作の『コップ・カー』も今回の『スパイダーマン:ホームカミング』も怖い大人が、子供を追いつめる話でしたが、もしかして監督はそういうお話が好きなんですか?

ワッツ:そうですね。どうやら僕は子供を危険にさらす話が好きみたいです。僕の両親は凄くいい人たちなんですけどね(笑)

***

監督した長編映画は2作だけという中、いきなり超大作を任されたときの状況を気楽に語ってくれたのが非常に印象的でした。インタビュー中も終始楽しそうに語ってくれて、まさに『スパイダーマン:ホームカミング』の明るく楽しい雰囲気はこの人が作ったんだなということがよくわかりました。

映画は監督がたくさんリサーチした結果なのか、映画『ブレックファスト・クラブ』のようなアメリカの青春映画にヒーロー映画をミックスした作品となっています。

その一方で、マイケル・キートンが演じるバルチャーの怖い大人っぷりが凄まじく、映画の楽しい雰囲気とはかなりギャップがあって、非常に魅力的なヴィランとなっています。やはりヒーロー映画はヴィランが大事!

そんな映画、『スパイダーマン:ホームカミング』は2017年8月11日公開。ハイレベルなCGで描かれたヴァルチャーの超かっこいいスーツをぜひ大画面でお楽しみ下さい!


Image: ©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.
Source:『スパイダーマン:ホームカミング』公式サイト
Reference: Wikipedia

(傭兵ペンギン)