GMが狙うシリコンバレーの頭脳 現役幹部が語る才能発掘の舞台裏

写真拡大

8月の初め、マウンテンビューで開催された「500 Startups」主催のピッチコンテストに、GMのエンジニアリング部門の幹部が数人参加した。彼らの目的は、有望なスタートアップを発掘して育成することだ。

GMは昨年末から500 Startupsの「Demo Day」のスポンサーになっている。同社は他の大手自動車メーカーと同様、シリコンバレーに事務所を構え革新的なスタートアップの発掘を行っている。

「500 Startupsと提携したことでスタートアップの発掘が飛躍的に強化でき、彼らのカルチャーに対する理解が深まった」とGMのグローバルR&D研究所のエグゼクティブ・ディレクターを務めるゲイリー・スミスは話す。

GMが500 Startupsと提携したのは、500 Startupsの共同創業者であるデイブ・マクルーアがセクハラ騒動で経営の一線から退く前のことだ。500 Startupsの新リーダーで、同社の共同創業者でもあるクリスティーン・ツァイは、シリコンバレーで頻発するVC幹部によるセクハラ行為の防止に、会社として全力で取り組む姿勢を表明している。

「我々の理念は、一人の人間の過ちによって破壊されてはならない」とツァイはDemo Dayの聴衆に向かって語りかけた。500 StartupsはGMにとってシリコンバレーにおけるシェルパのような存在だ。マクルーアのスキャンダルの悪影響を最も心配しているのはGMかもしれない。

「アーリーステージのスタートアップはとても脆弱だ。水や食事を与え、慎重に育てなければならない」とスミスは言う。「我々はテクノロジーやその市場性を見て、それがユニークなものか判断することはできる。しかし、我々はスタートアップが成功する上で創業者の役割が非常に大きいことを学んだ。500 Startupsは、スタートアップを発掘するだけでなく、創業者を我々とは異なる視点で評価することに長けている」

自動車業界を革新するテクノロジーを発掘

GMは、2016年初めにサンフランシスコの自動運転企業、「クルーズオートメーション(Cruise Automation)」を推定約5億8100万ドル(約638億円)で買収した。クルーズの共同創業者でCEOのKyle Vogtは現在もGMの自動運転部門を指揮している。

GMは、500 Startupsに支払っているスポンサー料を明らかにしていないが、同社の規模にしては小さい金額であることは間違いない。GMにとっての目的は、成長スピードの速いスタートアップと組むことで自社の旧態依然としたR&D部門を活性化し、革新的で収益を生む新技術を開発することだ。

GMは長年、ミシガン州ウォーレンにあるテクニカルセンターで先進的な技術の研究を行ってきた。スミスによると一定の成果はあげたが、商業化に至らなかったケースも少なくないという。こうした反省を踏まえ、同社は2012年から研究開発の方針を大きく転換した。

グーグルやアップル、テスラ、ウーバーなどのシリコンバレー企業が自動車業界において存在感を増す中、GMも新たな研究開発の取組みを加速させている。スミスの研究者たちに対するメッセージはシンプルだ。

「ゲームを変えるようなテクノロジーを、商業化させねばならない。それは、従来よりも格段に進化し、大きなインパクトを与える革新的なテクノロジーでなければならない」

今回のピッチコンテストでGMが関心を示した企業の一社は、ボルチモアに本拠を置く「Factory Four」で、3Dプリンティングを用いた生産技術を開発している。もう一社は、オレゴン州ポートランドを拠点とする「VR Motion」で、VRを用いた運転訓練シミュレータを開発している。

年初に開催された500 Startupsのイベントで、GMはバンクーバーに本拠を置く「UrbanLogiq」という企業を発掘し、現在は協業を行っている。UrbanLogiqは、交通情報や渋滞情報をGMなどからリアルタイムで入手し、都市計画に役立てる活動を行っている。GMは、同じイベントで「Preteckt」というメンフィスに本拠を置くスタートアップも発掘した。同社は、トラックに取り付けたセンサーから入手したデータをクラウドで分析し、故障の予兆を検知し車両のメンテナンスに役立てている。