留学が日本を救う オールジャパンで日本を変える国家プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」(前編)

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◆「内向き志向」を打破し、「金銭的負担」をなくす画期的な奨学金制度

 社会のグローバル化と少子高齢化が進む中、次の世代の日本人は、もはや終身雇用や年功序列といった島国の中でだけ通用していた社会システムに守られることはないだろう。それが良いことか悪いことかは別としても、国際常識に則った「グローバルな視点」が、これから社会に出る若い世代に強く求められるのは間違いない。

 そうした大転換期にありながら、国内の産官学のリーダーたちからは「グローバル化に対応できる若者が足りない」という声が聞こえてくる。グローバ化を見すえた教育改革も進んではいるが、まだ始まったばかりだ。そこで、実体験を通じて短期間でグローバルな視点を得られる「留学」が俄然注目を集めている。しかし、今の若者たちの「内向き思考」と、長く続く景気低迷のあおりを受け、日本の若者の留学実績は、諸外国に比べて低水準で推移しているという。

 そんな状況を打破しようと、2014年に始まった「トビタテ!留学JAPAN」という官民共働の国家プロジェクトをご存知だろうか?高校生や大学生が自分で立てた留学計画を、民間企業の寄付金で全面的にバックアップするというプロジェクトだ。「チャンスがない」「お金がない」と留学をあきらめている若者たちにぜひその内容を知ってほしいと、プロジェクトのPRチームリーダー、西川朋子さんに話を伺った。前後編に分けて「オールジャパンで日本を変える国家プロジェクト」の全貌をお届けする。

◆自分で計画し、全額奨学金で留学
 「トビタテ!留学JAPAN」をざっくりと説明すれば、民間からの寄付による給付型奨学金で、自分が望む場所へ望む形で留学できるというものだ。大学生は自分で最長2年間(高校生は最長1年)の留学計画を立てて応募し、プレゼンテーションをする。それが認められれば、渡航先の物価水準に応じた月額16万円または12万円の奨学金と、学費(実費・年間上限30万円)、渡航費(一括25万円)を受けることができる。月額支給分の使いみちは自由で、返済は一切不要だ。「大学生の場合、最大約450万円もらえます。学生の皆さんは、ぜひこのチャンスをつかんで欲しいと思います」と、西川さんは言う。

トビタテ!留学JAPAN PRチームリーダー、西川朋子さん - 撮影 内村浩介

 対象は高校生と大学生(専門学校生、短大生、大学院生を含む)で、それぞれ各期2000人ほどが応募し、500人程度が選ばれる。倍率は4倍程度だから、高校入試・大学入試のことを考えれば、それほど高倍率ではないように感じられる。また、「留学の計画を自分で立てる」と言うと、ハードルが高いと感じるかもしれない。しかし、自分がやりたいことを成し遂げる手段として、学校などで展開している既存の留学プログラムに参加するのもOKだし、ホームステイ先の手配なども学校や留学業者のシステムを利用して一向に構わない。逆に、既存の枠にとらわれない独自の計画も積極的にバックアップしてくれる。この自由度の高さもまた、既存の奨学金システムと大きく異なる部分だ。

 「近年目立っているのは、一つのテーマで複数の国に行く留学スタイルです。たとえば、『抹茶』で国際的なビジネスを起業する希望を持つ学生は、バンコク、ロンドン、ニューヨークに3ヶ月ずつ行って、現地の飲食店に抹茶のメニューを提案したり、リサーチしたりしました。『農業』をテーマに、カメルーンとオーストラリアとフランスを回って、現地の農家に入り込んで日本の農業と比較していい所を学んだという学生もいます。このような自由な視野見聞の広げ方は、非常に『トビタテ!』らしいと言えます」

◆日本だけが留学数が減少
 日本は今、少子化の急激な進行により、生産年齢人口が大きく減少、一人当たりのGDPも2000年の3位から大きく後退している。この経済をはじめとする日本全体の縮小傾向と合わせるように、海外に活路を見出す企業も多い。特にアジアへの進出増が顕著で、2001年の6345社から、2013年には1万5874社と右肩上がりだ。国内にとどまっていたとしても、今後は人手不足やグローバル化対応で外国人や移民の雇用が増えていくだろう。

 このグローバル化待ったなしの状況にあっても、日本人はいまだに内向き志向だということを示すデータがある。OECDなどの調べによる日本、中国、アメリカ、インド、韓国の海外留学状況を比較したデータによれば、17万4629人(2002年)から76万1992人(2012年)へと右肩上がりに急増中の中国を筆頭に、他の3カ国も増加傾向にある。ところが、日本だけは2004年の8万2945人をピークに、2012年は6万138人と、減少傾向にあるのだ。絶対数も、人口が下回る韓国よりも少ない。

提供:トビタテ!留学JAPAN

 語学学校やインターンシップなどの短期留学を含めれば、日本も留学数が増えているというデータもあるが、西川さんは現状をこう分析する。「OECD等のデータには、大学や大学院で学位を取らせるタイプの社会人対象のいわゆる社費留学も含まれます。景気が思わしくない日本では、今、それがすごく減っています。せっかく費用を出して留学させても、視野が広がって外資系企業へ転職されてしまうといったケースが目立ち、消極的になった企業も多いと聞きます。とはいえ、それを押しのけてでも留学数が急増してもおかしくない状況なのですが・・・」

◆「留学」という自己投資の勧め
 学生や家族に留学費用を出す余裕がなくなっているという金銭的な理由も大きい。「(若者の意識と、お金の問題の)両輪だと思います。結局、コストパフォーマンスの問題でしょう。留学の必要性をどれだけ感じるか、それに対してどれくらい投資できるか。たとえば、留学している中国人や韓国人が皆お金持ちかというと、多分、そうではないでしょう。でも、留学した場合としなかった場合で生涯年収が全然違ってくるという現実が後押ししているのだと思います」。それに対し、日本ではまだ「いい大学を出ていい会社に入れば一生安泰」だという信仰が根強いのかもしれない。

 「そこまでパワーとコストをかけてまで留学しなくてもいいんじゃないかな、と思っている人たちが多いのです。これを打破するために、『今の大人たちはグローバルな視点がなくても成功できるけど、これからの日本は違うんだよ』ということを若い世代に伝えていきたいと私たちは考えています。日本全体の未来のためにも、若い人たちには『留学』という時間とお金の投資を是非してほしいのです」と、西川さんは訴える。

 返済不要の月額16万円(12万円)を基本とする奨学金は、「お金」の問題を解決するのに十分な額だと言えよう。税金から賄われるいわゆる国費留学や一般的な民間の奨学金と比べても、かなり手厚いと言える。そんな「トビタテ!」の奨学金及びスタッフの給料などの経費は、広報費をのぞいて全て民間企業の寄付で賄っているのだという。これを実現したのは、官民共働プロジェクトという世界に類を見ない試みだ。後編では、この画期的なプロジェクトの成り立ちや「日本再興」に向けた将来の見通しを紹介する。

※後編はこちら