認知症の夫と離婚したい!必要な条件を弁護士が解説

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先日、「教えて!goo」で「認知症になった夫と『性格の不一致』を理由に離婚できる?」という記事をリリースした。長年の間、溜まりに溜まった夫への不満。熟年離婚を計画していた矢先に夫が認知症になり、話し合いも難航――しかし、「性格の不一致」のみを理由に離婚を成立させることは難しいという。では、離婚を成立させるために必要な条件は何か。沼田法律事務所の沼田美穂弁護士に聞いた。

■離婚が成立するのはどんなとき?民法の規定をおさらい

そもそも民法770条の1項1〜5号には、裁判上で離婚が認められる原因として、次のことが定められている。(1)配偶者に不貞な行為があったとき、(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき、(3)配偶者の生死が三年以上明らかでないとき、(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき、(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。ちなみに「悪意の遺棄」とは勝手に家を出てしまったり、生活費を渡さないなど、正当な理由もなく夫婦としての同居・扶助・協力義務を果たさないこと。

「(5)については解釈の範囲が広いのですが、夫婦とはそもそもお互いに助け合うべきものと考えられています。熟年離婚を考える方は『性格の不一致』を理由として挙げる方が実は一番多いのですが、単なる性格の不一致や軽度の認知症という理由のみでは話し合いや助け合いにより乗り越えるべきと考えられ、『婚姻を継続し難い重大な事由』とは言えません」(沼田弁護士)

重度の認知症であり、長期間の協力義務が全く果たせない場合は離婚が認められる原因に該当し得るが、それには離婚後の配偶者の生活や療養に対するサポートを含めた生計の見通しがあるかどうか、なども判断材料の一つとなる。「別れたからハイ、おしまい」という訳にはいかないのだ。

■浮気やDV……認知症の問題と切り離すことは可能?

ここで本題だが、認知症を理由にするのではなく、元々の離婚原因を理由とした場合、離婚できるケースはあるのだろうか。

「相手が認知症になっていなければ離婚事由として成立していたであろう原因、つまり常習的な暴力や不貞行為など、先ほどの(1)〜(5)を満たしていれば、離婚事由として認められる可能性は十分出てきます。ただし、相手が認知症になってしまったら相手から証言なども取れなくなり、立証が困難になることが予想されます。そこで、例えば夫からの暴力が酷くて離婚したいのであれば、医師による診断書など客観的な証拠を押さえておくことが重要です」(沼田弁護士)

当然のことだが、(1)〜(5)のいずれにも該当しない場合、相手が認知症であろうがなかろうが、そもそも離婚事由には相当しない。DVや不貞行為などが原因で離婚したい場合であれば、例え相手が重度の認知症であっても、離婚後の生計の見通しの有無とは関係なく別れられる可能性もあるそうだ。ただ、ここで注意しなくてはいけないのが

「認知症の夫の状況が極めて苛酷な状況におかれる場合、裁判所は総合的な判断をしますから、離婚が非常に難しくなるケースもあります」(沼田弁護士)

とのこと。あくまでケースバイケースだが、いずれにせよ、しっかりと立証できるものを揃えておくことが必要なようだ。

●専門家プロフィール:沼田美穂
早稲田大学商学部卒業。2008年最高裁判所司法研修所入所、2009年より沼田法律事務所所属。弁護士業のほか、財団法人宿泊施設活性化機構(JALF)理事、特定非営利活動法人難民を助ける会理事、社会福祉法人サポート21理事などを務める。著書に『事件類型別弁護士実務六法』(共著、新日本法規出版)など。

(酒井理恵)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)