作・演出を務める舞台「業音」が15年ぶりに再演される松尾スズキ氏

写真拡大

 ◇松尾スズキ氏インタビュー(上)

 俳優の阿部サダヲ(47)や宮藤官九郎(47)らが所属する人気劇団の「大人計画」を主宰する劇作家・演出家の松尾スズキ氏(54)が手掛けた伝説的舞台「業音」が15年ぶりに再演。10日、東京・池袋の東京芸術劇場シアターイーストで開幕する。数々のドラマや映画、スポーツキャスターの松岡修造氏(49)と共演する消臭剤「ファブリーズ」のCMなどでもおなじみの平岩紙(37)が主演に挑む。

 初演は2002年10月(東京・草月ホール)。悲劇をテーマとし、松尾氏が作・演出を務めるプロデュース公演「日本総合悲劇協会」の3作目として上演され、荻野目慶子(52)の体当たりの熱演が話題を呼んだ。

 限りなく深い人間の“業”の闇…。演歌歌手として再起を目指す元アイドルを主人公に、不幸が不幸を呼び、負の連鎖が奇怪にうねる。介護や宗教など、現代社会が抱える問題を余すところなく描き、悲劇性と喜劇性が見事に融合する作品となった。

 再演は、荻野目が演じた落ちぶれた元アイドルに平岩が挑む。松尾氏、平岩をはじめ、大人計画のメンバー・池津祥子(47)伊勢志摩(48)宍戸美和公(42)宮崎吐夢(46)皆川猿時(46)村杉蝉之介(51)、ダンサー・康本雅子(43)とエリザベス・マリー(28) (ダブルキャスト)が出演。10月には「大人計画」初の海外公演となるパリ公演を行う。

 再演に15年の歳月を要した理由の1つが、衝撃作ゆえの主演女優のキャスティング。松尾氏は「いろいろな人に頼みましたが、なかなか引き受けてもらえなかった」と明かし「灯台下暗しじゃないけど、自分のところにだって、いい女優がいるじゃないかということで」平岩にオファー。待望の再演がついに実現した。

 初演時に別の役で出演した平岩も「初演の時、荻野目慶子さんが演じていた役を演じることを現実的に考えられる年齢に、自分がやっとなったかなと思います。役者として重ねてきた年月を経て、ようやく向き合える役だと思います」とコメントした。

 今回、取材したのは稽古開始から約2週間の時点。平岩への演出について、松尾氏は「台本を読んで感じたことを、まず演じてもらって、そこから、ため息のつき方1つ、具体的なことを言っています」と説明。ヒロイン像については「究極にだらしない女というイメージ。あまりにもだらしなさすぎて、そこに聖なるものが宿る。そんな瞬間が見えればいいなと思っています。ただ、平岩本人がそんなにだらしない女じゃないので(笑い)。そのだらしなさをどう表現するか。探っているところです」と展望した。

 平岩の起用に「手応え?もちろんありますね。さすがにうちに17年もいる女優なので。ポンと『こういう笑い方をして、こういう表情して』という時に、普通の女優さんだと、セリフの流れで『なぜその笑いになるのか、なぜその表情になるのか』と、気持ちがノッキング(エンジンが異常炎症し、金属性の打撃音を発する現象)しちゃうんです。そこで、うちの俳優は気持ちと切り離して、おもしろい顔ができる」と絶賛。松尾氏が「俳優の体とコントの体、両方持っている両性具有みたいなところがあると思うんです。普通に演じていても、ポンとコントの体に入っていけるみたいな」と表現したした大人計画所属の役者の特性を、今回の平岩もいかんなく発揮。松尾氏独特の笑いを体現する。

 平岩も「いつも私たちをテレビでしか見ていない新しいお客さまにも、毎回大人計画の作品をご覧いただいて昔からのお客さまにも、みんなに見ていただきたいです。久しぶりに劇団員の先輩方とやれるので、大人計画という劇団がどういったところで、どんな作品を上演するのか、ということを知っていただき、いろんな視野のお客さまに見ていただきたいです」とアピール。15年ぶりに“封印”がどう解かれるのか、期待は高まる。

 【「業音」あらすじ】母の介護をネタに、演歌歌手として再起を目指す落ちぶれた元アイドルの土屋みどり(平岩紙)は、借金を返すため、マネジャーの末井明(皆川猿時)とともに自身が運転する車で目的地に向かっていた。途中、自殺願望を持つ堂本こういち(松尾スズキ)と、堂本をこの世につなぎ止める聡明な妻・杏子(伊勢志摩)と遭遇し、不注意から杏子をはねてしまう。杏子は脳を損傷し、自力による移動や食事、意思疎通ができなくなる。怒り狂った堂本は責任を迫り、みどりを拉致連行。“有罪婚”と称し、2人は結婚。奇妙な共同生活が始まる…。

 ◆「業音」公演日程【東京公演】8月10日(木)〜9月 3日(木)=東京芸術劇場シアターイースト【名古屋公演】9月13日(水)〜14日(木)=青年文化センター・アートピアホール【福岡公演】9月16日(土)〜18日(月・祝)=西鉄ホール【大阪公演】9月21日(木)〜24日(日)=松下IMPホール【松本公演】9月29日(金)〜30日(土)=まつもと市民芸術館・実験劇場【パリ公演】10月5日(木)〜7日(土)=パリ日本文化会館