「首相官邸 HP」より

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 安倍内閣の改造が話題になっています。頼りにしていた元衆議院議長の伊吹文明氏には文科相就任の打診を断られたようですが、野田聖子氏の総務相起用には成功しました。政治的には100点満点ではないにしても、かなり周到に進めた人事だったようです。

 ただ、今回の改造組閣の評価は分かれています。「お友達優遇が続いている」という批判的な評価も、「反省人事」という肯定的または中立的な評価もあります。また、国民の内閣改造に対する反応は今ひとつです。というより、国民の注目すら薄いように思えます。アベノミクスならぬアベノジンジは、どのようにすれば国民に支持されたのでしょうか。今回は心理学を使って考えてみましょう。

 安倍首相の人事は「お友達人事」ともいわれるほど、親しい人を優遇することで知られています。リーダーとしての安倍首相を心理学的に評価するなら「プロジェクト型リーダー」といえるでしょう。このタイプのリーダーは、「取り組むべき課題が明らか」で「問題解決まで時間的余裕がない」という状況で機能します。つまり、「今すぐにこの課題をなんとかしないといけないので、俺に全権を預けろ!」というタイプのリーダーシップです。

 このようなリーダーには「話が早い」部下が必要です。問題が「待ったなし」なので、スピーディに動かなければなりません。そのため、「すべてにおいて話が早い」お友達を重用する必要があるのです。

 安倍内閣発足の当初は、「日本経済の停滞をなんとかしてくれ」ということで、ほとんど日本中が日本経済再生というプロジェクトに注目していました。そのなかで麻生太郎元首相を含め安倍首相に近い人たちが入閣したわけですが、国民には「日本経済をなんとかする」というプロジェクト型に映ったと思われます。だから支持率が高かったのだといえるでしょう。

●火急のプロジェクトを設定すべき?

 これは日本の漫画『サイボーグ009』や人気米国映画『オーシャンズ11』に読者や観客が感情移入するのとよく似た構造です。『サイボーグ009』に登場する世界支配を狙う組織「死の商人(ブラックゴースト)」のように、「今すぐに倒すべき敵(課題)」が明確で、そのメンバーの特技が敵の駆逐に役立ちそうなら観客は歓迎するのです。もちろん、メンバーの特技の裏には苦手や欠点もあります。しかし、「倒すべき敵=危急の課題」に有効な特技があると思えばヒーローとして支持されるのです。

『サイボーグ009』でも『オーシャンズ11』でも、仲間たちは強力な特技があるものの、人としてもヒーローとしても不完全でした。ただ、物語の目的に貢献できるスペシャルな能力があるので、愛されるキャラクターであり得たのです。

 今の安倍内閣は、国民のすべてが共感できるプロジェクトを持っていません。なので、素晴らしい人材を登用したとしても、特技ではなく不完全なところに国民は注目してしまうのです。その一つが「お友達人事」で国民に不公平感を与えるのです。お友達人事はプロジェクト型であれば「首相と話が早いから期待できる」となるのですが、プロジェクトを見失うと不公平感や批判のタネにしかなりません。

 国民のほとんどが共感できる火急のプロジェクトを設定したうえで、プロジェクトに貢献できるヒーロー集団として組閣すればもっと支持されたことでしょう。進め方がちょっと残念だったといえます。
(文=杉山崇/神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授、臨床心理士)