国連安全保障理事会が5日に採択した北朝鮮への制裁強化の決議に中国が賛成したことで、米通商法301条に基づく調査開始が先送りとなる可能性が出てきた。米政権は同条を発動した場合、「米国企業を標的とした報復措置がとられる可能性もある」と懸念している。資料写真。

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2017年8月9日、北朝鮮が核弾頭の小型化に成功したと米メディアが報じ、地政学リスクへの警戒感が高まっている。米安全保障筋によると、国連安全保障理事会が5日に採択した北朝鮮への制裁強化の決議に中国が賛成したことで、米通商法301条に基づく調査開始が先送りとなる可能性が出てきた。米中間では、直接投資が30年近くの累計で3000億ドル以上に達し、世界的なサプライチェーン網と多くの企業提携が存在する。米国が同条を発動した場合、「中国は米企業の対中投資許可を遅延させるなど、米国企業を標的とした報復措置をとる可能性もある」と懸念している。

技術移転に関する貿易紛争で米国の一方的な制裁を可能にする米通商法301条に基づく調査を開始するか否かが注目される。調査の焦点は、外国企業に中国の提携企業への技術移転を義務付ける中国の規定だ。中国は外国企業に中国企業と合弁を組むか研究開発を共有するよう要求。「中国製造2025」という産業計画を打ち出し、主要産業に輸入代替目標を定め、多国籍企業を犠牲にして自国企業を有利に導こうととしている。

米中間の通商関係は複雑であり、相互依存性が高い。トランプ政権は301条適用を当面先送りし、EU諸国と協調し、外交交渉で中国に圧力をかけることを優先すべきだとの主張も根強い。

301条の適用を先送りの可能性が出てきた背景には、国連制裁決議について中国の支持を得ることを優先させたためである。中国は米国が301条の発動を延期や取りやめることをを期待して、新たな国連制裁措置に賛成した。この結果、北朝鮮の輸出に対する従来にない厳しい制約が課されることになった。これは、北朝鮮のミサイル実験や北が中国からの使節の入国を許可しないことなどへの中国の怒りの現れでもある。北朝鮮代表が出席した先のASEAN会議で、中国の王毅外相は異例の強い直接的表現で北朝鮮を非難した。(八牧浩行)