キスのとき「右」に頭を傾けているのは文化的な影響とは無関係だった(depositphotos.com)

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 HKT48の新曲『キスは待つしかないのでしょうか?』の初日売上は16万7587枚と、今回もCD厳冬下での秋元ブランド一強ぶりを証明した。

 一方、「キス時の右傾斜派はおよそ8割」という真面目な分析論文を『Scientific Reports』(7月14日オンライン版)に寄稿したのは、英国やバングラデシュの研究陣だ。

 国際共同研究というかたちで取り組んだ今回の試みの結果を前に、関わった心理学や神経科学の研究家たちは次のような見解を示している。

 「キスの際、多くの人々が頭を右側に傾けるのは、生まれつき備わっているバイアス(bias:傾向)の表われである可能性が読み取れる」

バングラデシュで実験を行なった特別な理由

 今回の調査に関しては、バングラデシュ在住の夫婦48組の協力を得、それぞれの自宅内でキスをしてもらい、その直後に夫と妻の双方から各設問に答えてもらうという算段を取った。

 実験(キス)の場を自宅内に限った背景には、バングラディシュ特有のお国柄が関係している。キスを「極めてプライベートな行為」と考える同国のカップルは、人前でそれを行なうことはない。テレビや映画作品のなかでも、キスシーンが規制対象となっているお国柄なのだ。

 これが現在の日本であれば、(明治・昭和世代はいざ知らず)散歩中のカップルを捉まえてTVカメラの前でチュ〜をしてもらい、その映像を観れば一目瞭然。わざわざアンケート調査をするまでもなく、日本人版キス事情が「右傾か、左傾か?」の答えが得られるだろう。

 だが、研究陣が今回、被験対象国民にバングラディシュの夫妻を選んだ裏にはもう一つの意義があった。

 というのも、キス時の頭が「右傾斜派圧勝である」という実験報告自体は格別斬新なものではない。アイルランドの先行研究でも「8割が右傾」、オランダの大学研究においても「被験者57人中41人(約72%)が右傾斜」という報告がされてきた。

 しかし、それらの従来報告はいずれも西欧諸国で実施された研究の結果(標本)であり、その右傾斜優勢の傾向に「(西欧の)文化的要因の影響」を拭い去れない――つまり、「西欧人特有のバイアスでは?」という保留知見だったわけである。

理由はどれ? ‖杙期の「頭の重み」⊆乳期の好みJ貎涜Δ料択肢

 その意味では、たとえ申告制とはいえ、普段は窺い知れない私生活の部分に踏み込んで性癖解析を行なった今回のバングラディシュ例は、注目に値する報告といえるだろう。

 恥じらいを持つ国民夫婦のキス事情はこうだった――。

 まず「キスを始めたのはどっちから?」の問いには79%の夫婦が「男性(夫)から」と回答。そして「キスを始めた側」の74%と、「キスに応じた側」の69%が、キスの際に頭を「右側に傾けた」と回答し、それが国境や東西文化の壁を越えた傾向であることを窺わせた。

 バイアス要因については複数の先行知見と一致しており、これまで胎児期の成長に伴う「頭の重み」から傾け方が決まるとする説や、授乳期の左右の好みや母親側の選択肢が後天的に影響しているとする説などが報告されてきた。

 今回の研究論文の筆頭著者であるダッカ大学(バングラデシュ)のRezaul Karim氏も「頭を左右のどちらに向かるかに関しては、出生前を含む発達プロセスのなかでも最も初期時点でみられる非対称性の傾向といえるだろう」と述べている。

「利き手が右か左か」の違いも

 また、今回の副産物成果としては「利き手が右か左か」の違いも、キス時の傾け方向を予測する因子であることが判明した。

 先行報告例では右傾斜派が「情熱的で感情的」で、左傾斜派は「論理的で冷静」(「気が利いて空気が読める」と評する軍事評論家も)と、なにやら例の血液型神話にも似た論評もあるが......。

 「従来から、右利きの子どもはまだ子宮内にいるうちから、右側に向く頻度が高いことが分かっている。それがはたして成人後も引き続き認められるものなのかどうか、それを明らかにすることは神経科学および心理学における長年の課題である」(前出・Karim氏)

 論文の共著者であるMichael Proulx氏(英国・バース大学心理学部)が新知見を総括する。

 「(西欧圏が対象の)過去の研究では、文化的学習による影響の可能性が否定できなかった。しかし、今回の研究から、社会的価値の違う異文化圏でも人間として共通の結果が得られるという事実が認められた」

 ならば、草食男子が蔓延る「仕事人」国家の現代ニッポン。HKT48の新曲が投げかける『キスは待つしかないのでしょうか?』という問いに関しては、ぜひ、日本の研究陣がトライして今日的(日本的?)な正解を出してほしいものだ。
(文=編集部)