(c) 123rf

写真拡大

 日銀が昨年7月の金融政策決定会合で、上場型株式投信(ETF)の年間買い入れ額を3兆3000億円から6兆円に増額して1年余りが経つ。

【こちらも】銀行はいつから“サラ金”になったのか?(上)

 そもそもETFの買い入れは黒田東彦総裁の前任者である、白川方名総裁時代の2010年6月に始まった。08年のリーマンショック後に先進国はこぞって金融緩和策を執った。だがETF買いは異例だった。当初の買い入れ額は4500億円。そして黒田体制下に転じ周知の様に「異次元的金融緩和」策が展開される中で、ETFの買い入れ規模も段階的に増額されていった。

 そして今、改めてその功罪が問われ始めている。6兆円への増額から1年余で(日経平均)株価は、2割方上昇した水準にある。ちなみに現在の東証1部の時価総額は、約600兆円。日銀がETF買いで手にした株式の時価総額は約17兆円とされる。株価上昇を背にしたこともあってか黒田総裁は「時価総額で保有比率は非常に少ない。言われているような副作用は起こっていないと認識している」としている。胸の心中はともかく日銀との軋轢は極力避けたい銀行筋は、全銀協会長で三菱UFJフィナンシャル・グループ社長である平野信行氏の「投資家の安全感につながっている」を象徴的に、表向きは「お追従」の構え。

 ではどんな副作用が指摘されているのか。有識者の声は、例えばニッセイ基礎研究所の出井真吾チーフ株式ストラテジストのこんな見方に収斂される。「(我々の試算では)前3月期末でファーストリテーリングをはじめ日経平均の構成銘柄中14企業で日銀は、実質上10%以上の株式を保有する大株主として君臨している。株価形成や企業統治の面で歪みをもたらしていると言わざるをえない」。

 日々の株式市場でも、「日銀のETFの買い出動が株価を押し上げた」「ファーストリがETF買いで上昇、株価を下支えした」「ETF買い期待が空振りに終わり、相場は値を崩した」といった類の声が聞かれる。

 そんな最中、とうとう株式市場関連者からも「苦情」が飛び出した。昨夏の「6兆円増額」に反対した決定会合の審議委員、佐藤健裕・木内登英の両氏が5年の任期を終え退任。金融緩和の積極派と目される鈴木人司・片岡剛士氏が後任へというタイミングで「黒田総裁がよりやりやすい環境となる」と囁かれる中、証券市場の胴元ともいうべき日本取引所グループの最高経営責任者である清田瞭氏が「(ETF買いは)長期的に続けるべきではない」としたのである。

 清田氏と黒田氏の遣り取りを、有識者は強く望んでいる。