会場となったロサンジェルスコンベンションセンター
txt:安藤幸央 構成:編集部

VR映像が大流行りだった昨年よりも、さらにVR三昧。レンダリングに手間をかけたCGと、リアルタイムCGの両極端の進化へ…

SIGGRAPH(シーグラフ)は世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する学会・展示会である。第44回となるSIGGRAPH 2017が、7月30日から8月4日の5日間、米国ロサンジェルスコンベンションセンターで開催された。ロサンジェルスでのSIGGRAPHは、2年に一度のペースで開催され、2015年に開催されて以来となる。

昨年のSIGGRAPHでも大変勢いのあったVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)。何度目かのブームと言われたが、今年はさらにVR関係の展示、上映の勢いがあった。その背景にはOculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRといったハイエンドの市販VR機材が比較的入手しやすくなったことや、Google DaydreamやSamsung GearVRといったスマートフォンを活用した安価なソリューションが多々出そろったこと、それに加えて360°カメラ機材の台頭、YouTubeやFacebookなどの配信プラットフォームの360°映像への対応や、VR関連企業への投資も増えており、数々の追い風が吹いていることが感じられる。

GoogleのブースでDaydreamを楽しむ参加者

今年のSIGGRAPHでは、通常の短編映像シアターの他にも、VR専用のVRシアターも設置され、短時間のうちにチケットは全て配布完了という大変人気の上映となった(もちろん、座席数さえあれば何人でも見られる映像上映と、一人一台のVR機材が必要で、それも装着に手助けを要するVR機材での上映は大きく異なるが、今年のVR人気は想定以上であったことは確か)。

VRシアターの外観。古き良き映画館を模したものVRシアターの内観。未来的なライティングと、落ち着いた椅子に腰掛けての上映

上映作品群を見ると、昨年までの、VR用の新しいハードウェアを開発してみました。VRで、いままでのコンテンツを焼き直してみましたという段階から、映画に匹敵するような体験、かつ新しいエンターテインメントとしてひとつのジャンル、ひとつの市場が確立してきた感がうかがえる。VR関連展示、上映に関しては、続くレポートで詳細をお伝えする。

それでは映画の街ロサンジェルスより、まずはReal-Time Live!の優秀作から紹介しよう。Real-Time Live!はComputer Animation Festivalのカテゴリのひとつで、ゲーム映像や、リアルタイムシミュレーション映像、VRなど、リアルタイムでCG映像を生成して活用する映像を評価するカテゴリである。

その中でも特に大きな話題をさらい、会場の度肝を抜いていたのは「The Human Race」というイギリスを中心として活躍する映像プロダクションThe Millと、Epic Games社とが組んで Unreal Engine 4を駆使して作られた映像だ。アメリカの車メーカー、シボレーがコンセプトカーの車体デザインに協力している。

「The Human Race」映像シーン
「The Human Race」メイキングシーン

映像制作を担当したThe MillのWebサイトにさらに詳しい解説あり。

撮影リファレンス用の電気自動車The Mill BLACKBIRDは、CG撮影用専用に作られた車で、デザインがまだ内緒の新車や、そもそもまだ車が出来上がっていない段階からCM映像を作らなければいけない時に活躍する。車体特性を調整することができ、車幅を変えたり、長い車体に変更したりすることも可能だそう。QRコードのようなトラッキング用のマーカーと、IBR(イメージベーストレンダリング)の際にライティングの参照用として用いるシルバーボール、グレーボールも搭載され、環境光も取得することができる。

マーカーと、シルバーボール、グレーボールに囲まれたリファレンス用の車

会場では、安全面から実際に走らせることは無かったが、車の機能としては車道を実際に走行させることができ、その際の日光や、環境の記録をとりつつ、リアルタイムでCGで作られた車体と差し替えることができる仕組みだ。会場ではレフ板をかざしたり、光や影の状況もリアルタイムで反映されるところが自然に表現されており、会場の拍手喝采を浴びていた。

チームを率いたThe MillのJoji Tsuruga氏(写真左)

技術的に凄いことは当然で、なおかつ映像制作の前準備、実際の撮影、撮影後の後処理といった従来の映像制作のプロセスを変革し、カメラで撮影した映像がそのまま完成版のCG合成映像になってしまうという革新的な方法である。一見、ゲーム映像っぽく見えるかもしれないが、つまりは観客が自由に操作できる「映画」でもあるということだ。

念入りに作られたCGやゲームの中での車の表現は相当リアルなものが従来から見られたが、今回の「The Human Race」は、現実世界とCGの世界をシームレスに繋いで行き来できるような映像制作環境を構築したところが評価された。SIGGRAPHのみならず、ゲーム関係のカンファレンスGDCや、広告関連のイベント、カンヌライオンズでも高く評価されている。

CAF(Computer Animation Festival)

今年のCAF(Computer Animation Festival)では、明確なカテゴリ分けはせずに、CURATED CONTENTと呼ばれる招待作品と、OFFICIAL SELECTIONと呼ばれる審査によって選出された作品を取り揃えることとなった。

CAF入賞作の中からよりすぐりの作品が上映されるElectronic Theaterでは、約2時間にわたってそのうち25作品が上映された。上映には昨年に続きスポンサーであるクリスティデジタルの最高峰のプロジェクタChristie CP4230と、4K映像に関してはChristie Boxer 4K30が用いられた。

LOU予告編

毎年好例の、CAFの目玉となるピクサーの短編作品上映は、意地悪する子供と、不思議な力をもったオモチャの攻防戦を描いたデイブ・マリンズ監督の作品「LOU」(Lost and Found:落とし物:の文字の一部)だ。言葉やセリフが全く無い中で、ユーモラスで心温まるストーリーに会場もおおいに拍手喝采を浴びていた。Disney/Pixar作品であるCars3の映画の冒頭に上映されたり、Blu-rayに収録予定とのこと。

CAF(Computer Animation Festival)受賞作

■Best in Show(最優秀賞)

作品名:Song Of A Toad(ドイツ)

(メイキング2分16秒)本編は未公開約7分

Song Of A Toad(ヒキガエルの歌)という奇妙なタイトルとともに、映像も相当奇妙なものだ。頭の上に常にヒキガエルを乗せて暮らしている人物を描いたもので、映像表現はともかく、制作プロセスが興味深い。動き、つまりはアニメーションの制作のために、この映像専用の機材を用意している。

Arduinoという安価な組み込みコンピュータを使い、センサーからの動きのデータを3DCGツールであるMayaのリグに反映させる。手の動きをキャプチャし、その手の動きをそのままCG映像の動きとして反映させるシステムを用いて作られた映像なのだ。

つまりは、製作者は人形劇のように機材を動かしながら、登場人物の演技、演出を自分自身で行っている。また、映像の背景はミニチュアで制作され、制作したミニチュアを360°方向から撮影し、CG映像に取り込んで利用している。


■Jury‘s Choice(審査員賞)

作品名:John Lewis Buster The Boxer(イギリス)
監督:Dougual Wilson(Moving Picture Company)

全編2分10秒
メイキング4分10秒

ジョン・ルイスというイギリスの百貨店のクリスマスプレゼントの広告映像。普段ベッドの上で飛び跳ねて遊ぶ娘のために、庭に設置する大きなトランポリンをクリスマスプレゼントにしようと考えている親と、それを真顔で邪魔する飼い犬とのストーリー。一昔前なら、動物の演技や演出は全て実際の動物で行われていたかもしれないが、自由な演出と動物保護の観点などから、ほぼ全てCGで作られた動物達による映像だ。さらに、グリーンバックによるスタジオ撮影と知って、さらに驚く次第。


■Best Student Project(優秀学生プロジェクト賞)

作品名:Garden Party(フランス)
監督:Théophile Dufresne, Florian Babikian, Gabriel Grapperon, Lucas Navarro, Vincent Bayoux, Victor Caire(MOPA)

(予告編1分27秒)本編未公開約6分

お金持ちを皮肉った映像で、プール付きの、ひと気の無い豪邸で、遊びほうけるカエル達を描いたCG映像作品。ブラックユーモアの効きすぎたオチに唖然とする映像だ。フランスのMOPAという学校に所属する6人の学生達による作品。


■日本からのElectronic Theater上映作品

作品名:Final Fantasy XV - Omen Trailer(日本/ハンガリー)
監督:István Zorkóczy(Digic Pictures)

全編4分29秒

Final Fantasy XVの映像なので日本からと紹介したが、正確にはハンガリーのDigic Picturesによる作品としてエントリーされているものだ。北米用のCMとして作られた映像で、ゲーム中の映像を素材としているも、カット割りが絶妙で、ひとつの映画作品のように美しい流れを見せることで、ゲームへの期待をもたらす映像作品だ。

txt:安藤幸央 構成:編集部
[SIGGRAPH 2017] Vol.02