7月30日、日本初の民間企業単独によるロケット、通称“ホリエモンロケット”の打ち上げが行われた。ロケットの名前「MOMO=百」の由来にもなった目標高度100kmを目指したが、今回の達成は叶わなかった。

 宇宙ビジネスでは“後進国”と言われる日本だが、最近注目を集めている宇宙ベンチャー企業がある。2008年設立で、超小型人工衛星の開発を行っているアクセルスペースだ。作った人工衛星は、ロシアのロケットに他の企業の人工衛星と相乗りさせ低コストで打ち上げている。

 この小型衛星で撮影された画像は、富士山やドバイなど対象をしっかりと捉えており、低コストといえどその性能は折り紙付き。アクセルスペースは、2022年までに50個の人工衛星を打ち上げる予定で、世界中を好きなタイミングで衛星解析することを目指している。

 同じく、2023年を目標に宇宙旅行の商業運航を目指すPDエアロスペースは、名古屋市内の小さな一軒家とたった4人の従業員で有人ロケットの開発を行っている。まさに“下町ロケット”の世界だ。緒川修治社長は、「アメリカで民間企業がロケットを開発する時代がやってきた。これはもう待っている時代ではなくて、自分らでロケットを作る時代が来た」と有人ロケットの“夢”を語る。

 緒川氏の父親はジェットエンジンの研究者で、父のエンジンを改良したオリジナルエンジンがロケット作りの原点だ。作ったエンジンを搭載した飛行実験は既に成功しているといい、2016年12月には、緒川氏らの理念に賛同したANA、HISの2社と資本提携したことを発表した。

 緒川氏は、「多くの人たちに協力を頂いてそれ(宇宙飛行)を実現するのに、今まで言葉で言っていたところを本当に形にするぞというプレッシャーがある。ワクワクと同じくらいのプレッシャー」と話した。

■ロマンティックな“宇宙ビジネス”

 衛星の打ち上げや宇宙旅行に注目が集まるが、宇宙ビジネスにはロマンティックなものもある。宇宙ベンチャー企業が開発しているのは「人工流れ星」だ。軌道上の人工衛星から特殊な素材の粒を宇宙空間に放出して、その粒が大気圏に突入して燃えることで地上からは流れ星のように見えるという。サービス開始は2019年を目指している。

 科学ジャーナリストの寺門和夫氏は、「今まで宇宙ビジネスというと人工衛星を打ち上げると考えられていた。でもこれから、このようなエンターテイメントが入ったものだとか宇宙旅行だとか、宇宙ビジネスの種類がものすごくたくさん増えてくる。こういう企業が誕生するというのは新しい時代の幕開け」と語った。

 宇宙ビジネスの高まりを受けては、昨年「宇宙活動法」という法律が新たに制定された。宇宙開発への民間企業の参入を促進するために設けられた法律で、「人工衛星の打ち上げ許可制」「打ち上げ失敗の損害賠償保険への加入義務化」などを定めている。

 これについて寺門氏は、「宇宙ビジネスでロケットを打ち上げると、事故が起こった時に被害が出る。そうした時に小さな会社は賠償金を払えないので、ちゃんと保険に入りなさいと。それから、ものすごい被害が大きい場合は、国の責任で許可して打ち上げたものなので国が賠償を行うということ。いざという時に企業が対応できるシステムの中で、色んな宇宙ビジネスをやってもらおうという法律」と意義を説明した。

■様々な分野で「衛星リモートセンシング」を活用

 一方で、身近な分野ですでに宇宙ビジネスが活用されているものがある。

 青森産の人気ブランド米「晴天の霹靂」は、生産農家と地方独立行政法人青森県産業技術センターが提携し、田んぼの様子を撮影した衛星画像を解析。稲の色から水田一区画ごとの最適な収穫時期が判断でき、効率的に収穫することができるという。

 このように衛星画像を使った解析を「衛星リモートセンシング」といい、農業の世界で今注目を集めている。7月、この技術の導入を始めた「梅の里おごせ山口農園」の山口由美代表は、「農業をやりはじめて12年だが、12年の勘とリモートセンシングを使い、もっともっと良いものを作りたいと思って取り入れた。(葉の)チリチリしているところはアブラムシに食べられてしまっているところで、消毒が行き届いていないとこういった状態になってしまう。リモートセンシングを使って正確に消毒のタイミングを知りたい」と導入の理由を語る。

 山口農園の衛星画像を解析するのは、東京・虎ノ門にある一般財団法人・リモート・センシング技術センターだ。リモートセンシング技術の専門機関として40年以上、地球観測データの処理・システム開発を行っている。利用技術グループの小田川信哉主任は、「波形を解析することによって植物の状態が分かり、消毒のタイミングが分かるように今研究している」と話す。消毒は、柔らかい葉を食べる虫が寄り付く前に行うと効果的だが、衛星画像から光の強度を解析すると葉が柔らかくなるタイミングが分かるという。

 さらに、衛星リモートセンシングは農業以外の分野でも活用されている。この時期多発するゲリラ豪雨など、急な天候の変化を事前に把握できるという。システム開発グループの門崎学主任は、「気象衛星ひまわりの衛星画像をもとに積乱雲の発達をほぼリアルタイムに自動で解析するシステムを開発した」と解説する。ゲリラ豪雨は発達した積乱雲が原因でもたらされるが、積乱雲が発生する30分以上前に衛星リモートセンシングを活用して察知することができるそうだ。現在は実証実験の段階で、年内には完成を予定している。

 ほかにも、地盤変動の分野では、建物のゆがみをミリ単位で把握することで地殻変動などの解析が可能。海上観察の分野では新しい航路の開拓、農業では効率的な田植えや収穫が衛星リモートセンシングでできるという

 寺門氏は宇宙のこれからの可能性という点で「今、日本では『みちびき』という日本版のGPS衛星を打ち上げている。これが来年になると4機体制になる。今はカーナビなどでGPSを活用しているがまだ誤差が大きい。来年、カーナビやスマホでのナビゲーションなどGPS+『みちびき』のデータを使えると誤差が数十cmから数cmくらいに精度が高まる。今後いろんなビジネスが出てくる可能性がある」と述べた。

(AbemaTV/『けやき坂アベニュー』より)