大人にとっては豆知識、子どもは自由研究に!「紫外線の謎」を研究者が解明

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暑さの中で毎年頭を悩ます夏休みの自由研究。サンサンと照りつける太陽をテーマにしようと考えることもあるのではないだろうか。しかし、紫外線の研究をしようと取り組んでみると、いろいろな謎が……大人でも即答できないような疑問も多いのではないか。「教えて!goo」にも、「光合成と紫外線」という質問に対し、かなり専門的な回答が寄せられていた。可愛い子どものために、ひと肌脱いでやりたいという親御さんの助けになればということで、気になる謎を解明するため、紫外線研究者である鈴木聖司さんに質問してみた。その結果、日焼け止めの人間以外の効果、葉っぱが日焼けしない理由、写真やカレンダーの色あせの謎を紐解くができた。

■人間以外が日焼け止めを塗っても効果はある?

最初は、日焼け止めは人間以外にも効果があるのかという素朴な疑問だ。
「人間が使用する日焼け止め(サンスクリーン剤)の成分の一部は、動物の紫外線予防に役立つものもあります。しかし、動物ひとつひとつの生体や、皮膚の構造が人間とは異なるため、人間用にアレンジされた日焼け止めを動物に適用することは決してしてはいけませんし、望まれる効果は得られません」(鈴木さん)

実際に日焼けを気にする動物はいないだろうが、人間用では効果がないようだ。

「紫外線は、色素沈着、シミやシワなどの早期光老化や、日焼け、浮腫などの炎症、皮剥けなどの原因となります。日焼け止めはこのようなトラブルから人の肌を防御するために開発されたものです。同じ生体でも、人間と動物で皮膚構造は違ってきます。例えば、我々に身近な犬や猫といった動物は、人間と同じ3層構造の皮膚をもちます。しかし、人間に比べて『表皮』の厚さが5分の1程度しかなく、豊かな被毛で覆われているとはいえ、人間よりも非常にデリケートな皮膚といえます」(鈴木さん)

皮膚の厚さが違う動物では、人間用の日焼け止めでは効果が得られないが、今後、紫外線増加が進行すれば動物専用日焼け止めが必要になるかもしれない。

■なぜ葉っぱは日に焼けないのか?

では、太陽をいっぱいに浴びている葉っぱは、植物なりに日焼けしないのか聞いてみた。

「植物の紫外線に対する感受性は、種や品種といった遺伝的な要因や生育環境などによっても大きく変化するため、紫外線の影響を定量的に評価することは現時点では困難であり、詳しく解明されていないのが現状です。植物の生長には、葉緑素による光合成が必要ですが、最近の研究では植物が光の波長の違いや光強度を感知して発芽や伸長を調整する『光形態形成』という仕組みを備えていることがわかってきました」(鈴木さん)

植物は紫外線には強そうなイメージがある。実際は、どのようなメカニズムなのだろうか。

「生体は紫外線を浴びるだけで『活性酸素』が大量に生じ、眠気を伴うような強い紫外線疲労を引き起こし、酸化してシワや白内障の原因になることが判明しています。一方の植物も同様に光合成の過程で常に活性酸素を発生、強い紫外線などの環境ストレスで大量の活性酸素を発生させています。しかし、最新の研究である酵素遺伝子が、植物に有害な活性酸素を除去して無毒化する強力な『抗酸化防御機能』として働き、紫外線への強い耐性を示すことが解明されました。これらの植物体独自の防御システムによって、紫外線の影響をあまり受けないのであろうと考えられます」(鈴木さん)

自分が成長するエネルギーとして紫外線を利用しつつも、悪影響を受けない仕組みを保持しているのである。

■写真やカレンダーの色あせへの関与は?

それでは、生き物以外への紫外線の関与ということで、日の当たる場所のカレンダーや写真の色あせについて質問してみた。

「紙や写真を劣化させる大きな要因は、太陽光や蛍光灯が放射する紫外線です。特に紫外線の殺菌、消毒作用は、主に色素を分解するので写真色あせの主要原因となります。勉強机の蛍光灯の前に貼った写真やカレンダーも時間をかけて徐々に色あせる可能性があるので十分に注意しましょう」(鈴木さん)

色あせには光の中でも紫外線が深く関与しているようだが、紫外線以外にも原因があるという。

「紫外線が我々にもたらす悪影響のひとつに『紫外線劣化』が挙げられます。その名の通り、強い紫外線暴露およびダメージ蓄積により、様々な物質や材料が、変色、変形、硬化や割れ、ベタつくなどの影響を受けます。しかし、劣化の犯人は紫外線だけではありません。湿気や酸化、チリやホコリ、カビ、虫なども劣化の原因になります」(鈴木さん)

今回紹介した事例は、身近なものばかりだったが、その理由についてはまだまだ専門的にも知られていないものもあった。日常の「当たり前」に関するメカニズム解明という視点でみれば、自由研究のネタは案外転がっているのかもしれない。

●専門家プロフィール:鈴木 聖司
紫外線研究者、日盾\HITATE UV Care Lab.所長、株式会社レッドマルスADベンチャーCEO、Cancer Council Victoriaフェロー。北九州市立大学 法学部法律学科卒業。自身が太陽紫外線曝露蓄積ダメージによるメラノーマを発症。闘病体験を経て紫外線・オゾン研究先進国カナダのComfable社と共同紫外線研究。Comfable社・トロント大学と共にリアルタイム紫外線可視化・予防ソリューション「QSun」を開発・展開している。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)