「世界の成長センター」として熱いまなざしを集めるASEANだが、中国と領有権を争う南シナ海問題で近年は一部加盟国が対立し、経済を武器にした中国の介入により溝を深めている。

 一方、この地域の安定と民主化の要を担ってきた米国は、腰の定まらないトランプ政権のアジア政策により、存在感を急低下させている。

 5日のASEAN外相会議は、今回も共同声明の文面調整で紛糾した。南シナ海問題で中国を牽制(けんせい)する文言の追加を求めるベトナムに、中国の“代理人”としてカンボジアが反発。当事国でないタイが出した和解案は、領有権問題への発展を懸念するマレーシアなどが拒絶した。加盟国間に、中国起因の不和が広がる。

 東南アジアは、中国が取り組む現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の対象地域で、数多くのインフラ計画が進行している。巨額融資をアメに、懲罰的対応をムチにする中国へ、自由にモノを言えない環境が醸成されてきた。

 一方、前オバマ米政権はアジア回帰政策を掲げ、南シナ海問題で中国を批判、航行の自由作戦で牽制行動を示した。また、オバマ氏もケリー前国務長官も、東南アジア歴訪時は、現地の若者との対話集会や記者会見を積極的に展開し、自由や民主主義を説いた。

 だが、今回マニラでのティラーソン国務長官の影は薄かった。北朝鮮問題で国際包囲網の形成に注力した一方で、南シナ海問題では、中国の王毅外相が骨抜きの「行動規範」の枠組みをASEAN側と承認し、介入を封じられた。6日夜には各国外相が会する夕食会も欠席し、会見は7日に米メディアと開いたのみ。何度も記者団に主張を展開した王氏と対照的だった。

 東南アジアへの進出意欲を隠さない中国の高笑いが聞こえるようだ。 (マニラ 吉村英輝)