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…前編「鳥肌モノの素晴らしさ! あの名曲が生まれた瞬間を追体験」より続く

【映画を聴く】『すばらしき映画音楽たち』後編
『サイコ』や『猿の惑星』の強烈サウンドの秘密とは

前編でも触れたジョン・ウィリアムズ(『E.T.』『スター・ウォーズ』『インディ・ジョーンズ』『JAWS/ジョーズ』『ジュラシック・パーク』『ハリー・ポッター』シリーズなど)をはじめ、本作『すばらしき映画音楽たち』には、ハリウッドを中心とした名作・大作の音楽を手がけた作曲家や関係者が数多くインタビューに答えている。

“怪物”の感情を映し出す劇伴の出来映えに唸る!

1933年の『キング・コング』で起用されたフルオーケストラや、『007』シリーズでのエレキギターをフィーチャーしたビッグバンド・サウンドの斬新さ、ダニー・エルフマン(オインゴ・ボインゴ)やトレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズ)といったバンドマンの映画音楽界への進出、たった2つの音階で迫り来る恐怖を再現した『JAWS/ジョーズ』の楽曲分析など。当事者の証言によってさまざまな角度からの貴重な情報が集められている本作だが、中でも『レインマン』『ライオン・キング』『グラディエーター』『パイレーツ・オブ・カリビアン』など、これまでに150作以上の音楽を手がけてきたハンス・ジマーは、インタビューに答えるだけでなく、マット・シュレーダー監督と本作の意義について話し合いを持つなど、監督にとって“最高の刺激”になったという。

楽曲分析という点では、メロディアスなスコアだけでなく、たとえば『サイコ』の“キャン・キャン・キャン……”というあの音や、『猿の惑星』にたびたび出てくる金属的な打楽器の音など、アヴァンギャルドながらも見る者の記憶に強烈に残るサウンドが作られた秘密にも言及されているのが嬉しい。加えて、ビートルズが愛用したアビイ・ロード・スタジオや、彼らのプロデューサーであるジョージ・マティンが設立したAIRスタジオなどでのレコーディング風景も収められており、ロック/ポップス・ファンにとっても見どころは多い。

“映画を聴く”というより、“音楽を見る”ことができるドキュメンタリー。どうして何度見ても『スター・ウォーズ』のオープニングは心が高ぶるのか、『E.T.』のエンディングは涙がこぼれ落ちるのか。そんな問いかけに納得できる答えを用意してくれる作品として、このドキュメンタリーにはサブテキスト以上の価値があると思う。(文:伊藤隆剛/ライター)

『すばらしき映画音楽たち』は全国順次公開中。

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。