記者会見する放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会の坂井眞委員長(中央)ら=8日午後、東京都千代田区(玉崎栄次撮影)

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 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は8日、静岡県の浜名湖で昨年7月、切断遺体が見つかった殺人事件で、同県内の男性が「事件と無関係なのに、関わっているかのように報道された」と名誉毀損(きそん)などの人権侵害を訴えたテレビ静岡のニュース番組について、「公共性・公益性が認められる」とする見解をまとめ、人権侵害や放送倫理上の問題を認めなかった。

 人権委によると、対象となったニュース番組は、昨年7月14日に全国ネットやローカル枠で放送。「浜名湖切断遺体 関係先を捜索 複数の車押収」とのテロップを付け、捜査員が男性の自宅を訪れた映像を流した。男性は、後にこの事件で殺人や死体損壊などの容疑で逮捕された人物と交遊があり、車を譲り受けていたという。

 男性は、捜査員が訪れたのは、その人物による別の窃盗事件の証拠品である車を押収するためだったとして「浜名湖の事件とは関係ない」と主張、「犯人ではないかという印象を視聴者に与える」「仕事を辞めざるを得なくなった」などと訴えた。

 しかし、人権委は、当時の警察の動きなどから「浜名湖事件捜査の一環だったことは明らか」と判断。「殺人事件の捜査状況を伝える放送には公共性・公益性が認められる」と指摘し、男性宅を「関係先」などと表現した放送には「相当性が認められる」として「名誉毀損には当たらない」と結論づけた。

 また、男性は映像に自身の布団や枕が映っていたことなどからプライバシーの侵害も主張していたが、人権委は「他者に知られることを欲しない個人に関する情報や私生活上の事柄とまではいえない」として、訴えを認めなかった。

 ただ見解では、放送によって男性の社会的評価が「一定程度低下した」ことなどを認めており、人権委委員長の坂井眞弁護士は同日の記者会見で「人権侵害とまではいえないが、(関係先など)言葉の使い方には配慮の余地があったのではないかと思う」と述べ、テレビ静岡に対して「人権にいっそう配慮した報道活動」を行うため、社内で議論するよう求めた。

 人権委によると、見解を伝えられた男性は「不満は残ります」という趣旨の言葉を述べたという。