ラブリーサマーちゃん、新作はなぜバンドサウンドに接近? デビュー以降の活動から読む

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ラブリーサマーちゃんがメジャー2作目となる1st E.P.『人間の土地』をリリース。前作『LSC』から約9カ月を経ての新作は、さまざまな音楽性を踏襲した宅録スタイルから一転、バンドサウンドへと歩み寄りを見せ、さらなる世界の広がりを感じさせるものとなった。

 2013年の夏、18歳から宅録を始め、SoundCloudなどで作品を発表してきたラブリーサマーちゃん。イマドキの女の子の感性を凝縮したポップな楽曲の数々が早耳の音楽ファンの間で話題となり、2016年にメジャーデビューを果たした。キャッチコピーは「若くて多才で素直、可愛くて優しいピチピチロックギャル」。昨今珍しいくらいの盛られ方が可笑しくもあるが、一度聞いたら忘れられないアーティスト名(本名の“愛夏”に英語を当てたそう)しかり、彼女のユニークなアーティスト性の表れとも言えるだろう。現在22歳、現役女子大生。ちなみにメディアへの顔出しは行っていない。

 デビューアルバム『LSC』は、そんな彼女の集大成的な作品でもあった。1曲ごとに表情を変える奔放さは、シューゲイザー、UKロック、ヒップホップ、J-POPと世代を超えてさまざまな音楽に触れてきたからこそ培われたもの。歌詞も印象的で、〈辻利の抹茶〜 カニのお雑炊〉と好きな食べ物をひたすら列挙していく「私の好きなもの」もあれば、〈夢は夢で終われずに 僕は僕でありたいな〉と大人になっていくことへの戸惑いを歌い上げた「青い瞬きの途中で」では少女らしい繊細さをぶつけてくる。ジャンルにとらわれず好きなものを全部詰め込んだ等身大の女の子像が眩しいほどの輝きを放っていた。

 ところが『人間の土地』では、バンドサウンドに打ち込みを導入したキラキラアッパーチューン「FLY FLY FLY」にはじまり、渋谷系サウンドを彷彿とさせる「海を見に行こう」、王道ロックナンバー「ファミリア」、自身がリスペクトしてやまないRADIOHEADの「High and Dry」のカバーと、全体的に生音を意識した仕上がりに。ネット発の次世代アーティストとして「宅録女子」をひとつの個性に音楽活動を続けてきた彼女にとって、今回の作品はある種真逆とも言えるアプローチ。今、なぜバンドサウンドだったのか。

 彼女をシーンへと押し上げた理由にネットとの親和性の高さがある。そこでは「ラブリーサマーちゃん」という存在が、ガーリーでキャッチーなファッションアイコンのごとく、実体を伴わない架空の存在として拡散していったように思う。しかし、注目度が高まり、活動の幅が広がるにつれ、リアルな身体性が高まった。ワンマンライブやラジオ出演など、リスナーとじかにつながる機会も作用したかもしれない。ネットの向こうの謎めいた存在から、ステージで歌う生身の女の子へ。音楽的な趣向の追求に加え、ある種の“脱皮”や心境の変化が、音となって今作に表われたのかもしれない。

 ところでラブリーサマーちゃん、先日訪れたフジロックを満喫したようで、「Real EstateとDAY WAVE、DYGLとかっこよすぎたせいで、今年の夏俺が作る曲はインディーロックやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーという気持ちが過去最高の盛り上がりを見せている 夏休みを利用してDTMをしまくりたい」と決意のツイートが流れてきた。どうやら、しばらくはこのモードが続くと期待してもよさそう(?)。8月25日に開催される初の自主企画イベント『ラブリーサマーソニック2017』では、そんな彼女の今を感じることができるはず。“ラブサマちゃん”が獲得した進化を、心して目撃したい。(文=渡部あきこ)