銀行の2017年3月期決算は、日銀の「マイナス金利政策」導入後、初の通期決算となった。
 低金利競争や資金運用難から金融機関の収益低下が指摘されているが、「総資金利ざや」の中央値は0.14%にとどまり、前年同期と比べて0.04ポイント低下した。
 銀行114行のうち、6割にあたる73行で「総資金利ざや」が縮小。「逆ざや」は前年同期より8行多い20行に増加した。「マイナス金利政策」の影響が如実に反映した結果で、銀行は新たな収益源の確立が急務になっている。


  • 本調査は、銀行114行を対象に、2017年3月期決算で国内業務部門ベースでの「総資金利ざや」を調査した。総資金利ざやは、「資金運用利回」−「資金調達原価」で算出した。基礎資料は、有価証券報告書や決算短信、ディスクロージャー情報の利ざや(国内業務部門・単体)の項目から抽出した。
  • 2012年4月1日に住友信託銀行・中央三井信託銀行・中央三井アセット信託銀行の合併で発足した三井住友信託銀行は、過去データとの比較ができないため、調査対象から除外。
  • 文中の▲は、マイナスを表す。

銀行の収益状況を示す「総資金利ざや」

 銀行の本来業務は、預金等で集めた資金を貸出や有価証券などで運用し、利ざやを稼ぐことだ。銀行の「総資金利ざや」とは、貸出金や有価証券で稼ぐ資金運用利回りから、預金や債券、コールマネー、借用金などの資金調達コストを差し引いた数値で、銀行収益を示す指標の一つである。数値がプラスであれば資金運用で収益を上げ、マイナスは「逆ざや」で貸出や運用で利益が出ていないことを示す。

「総資金利ざや」の中央値は0.14%、調査開始以来で最低

 銀行114行の2017年3月期で、「総資金利ざや」の中央値(全データを昇順または降順に並べた場合に、真ん中に位置する値)は0.14%だった。前年同期(0.18%)より0.04ポイント低下し、調査を開始した2009年以降では最低となった。
 3月期決算の過去比較では、調査を開始した2009年は0.29%だった。その後、年々低下を続け、15年(0.17%)に初めて0.20%を割り込んだ。16年は投資信託の配当増、保有投信の解約益などが寄与して0.18%に上昇したが、マイナス金利の実施後で初の通期決算となった17年は総資金利ざやの落ち込みが目立った。

6割の銀行で利ざや縮小

 2017年3月期は、114行のうち6割にあたる73行(構成比64.0%、前年同期62行)で、前年同期より「総資金利ざや」が縮小した。「総資金利ざや」の縮小幅が最大だったのは、前期から半減した豊和銀行の0.26ポイント縮小(0.52→0.26%)。次いで、福島銀行の0.16ポイント縮小(0.09→▲0.07%)、福邦銀行の0.14ポイント縮小(0.13→▲0.01%)、鳥取銀行の0.13ポイント縮小(0.13→0.00%)の順。利ざや縮小の上位は、第二地銀が目立った。

 一方、「総資金利ざや」が前年同期より拡大したのは約3割にあたる34行(構成比29.8%、前年同期41行)で、前年同期より7行減少した。個別では、有価証券利息配当金が増加した三井住友銀行の0.21ポイント拡大(0.45→0.66%)、個人向け消費者ローンや中小事業者向け貸出が堅調だった宮崎太陽銀行の0.12ポイント拡大(0.29→0.41%)、リテールバンキング重視の営業スタイルで、資金運用利回りが上昇したスルガ銀行の0.10ポイント拡大(1.48→1.58%)など。
 前年同期と同率は、前年同期より4行少ない7行(前年同期11行)だった。

「逆ざや」は調査開始以来、最多の20行

 2017年3月期決算で「総資金利ざや」がマイナスの「逆ざや」は、20行(大手銀行3行、地銀8行、第2地銀9行)で、前年同期より8行増加した。
 「逆ざや」は2009年が4行、10年が1行、11年が2行、12年が8行、13年が12行、14年が8行、15年が11行、16年が12行。調査を開始した2009年以降、最多でも12行にとどまっていた。
 「逆ざや」は銀行間の貸出競争の厳しさに加え、2016年2月に導入された「マイナス金利」政策の影響がうかがえ、銀行の本業収益の深刻な低迷を映し出している。

地銀の過半数、第二地銀の7割で「利ざや」が縮小

 「総資金利ざや」を業態別でみると、地銀64行のうち、35行(構成比54.6%)が前年同期より縮小した。拡大は24行、同率は5行だった。第二地銀41行では、7割の31行(同75.6%)で縮小。大手銀行は9行のうち、7行(同77.7%)で縮小した。各業態とも「総資金利ざや」の縮小銀行が多く、マイナス金利下での厳しい経営環境を浮き彫りにしている。


 銀行の2017年3月期決算で、「総資金利ざや」の逆ざやは20行になり、調査を開始した2009年以降で最多を記録した。マイナス金利の導入後、長期金利(10年物国債利回り)が一時マイナスになるなど金利低下が加速し、貸出利ざやや運用利回りが落ち込み、収益が低下した。
 取り巻く環境が大きく変わらないだけに収益環境の厳しさは続き、金融機関の資金運用力の格差は一段と拡大するかも知れない。「利ざや」の縮小が、これまで以上に金融機関の統合・合併を加速させる可能性も高まっている。金融機関が顧客本位の業務運営に取り組み、いかに収益改善を実現できるか。強みを生かした営業施策が「総資金利ざや」にどう反映するか。金融機関は本気度を問われている。