盲導犬。仏パリ近郊の訓練センターで(2016年9月16日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】盲導犬になるための自制心を持ち合わせている犬はごく一部で、その中でも子犬の頃に母犬の厳しい「愛のむち」を受けて育った犬が最も優れた盲導犬になるとの研究結果が7日、発表された。

 米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された研究論文によると、生後最初の5週間に母犬が子犬たちを甘やかせ過ぎず、自ら学べるように育てると、子犬は成長して他の犬より優れた盲導犬になるという。

 母犬が子犬を溺愛すると、子犬は臆病に育って新たな状況を恐れがちになり、目の不自由な人々を支援するための厳しい訓練プログラムについていけなくなる傾向がみられた。

 今回の研究は、米ニュージャージー(New Jersey)州にある盲導犬の繁殖・訓練施設「ザ・シーイング・アイ(The Seeing Eye)」で実施された。

 米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)の研究チームは同施設にほぼ常駐して、母犬23匹とその子犬98匹の動画を子犬の生後最初の5週間にわたって撮影し、綿密に観察した。

 論文の主執筆者のエミリー・ブレイ(Emily Bray)氏は、子犬との接し方に基づいてそれぞれの母犬の間の違いを明らかにできるか知りたいと考えたと話した。「母犬の授乳姿勢や、母犬が子犬から目をそらしていた時間の長さ、母犬が子犬にぴったり寄り添っていたり、子犬の体をなめて毛繕いをしたりするのにどのくらいの時間をかけたかなどを観察・記録しました」

 2年後、犬たちのその後を調査するために再び施設を訪れた研究チームは、母犬に溺愛された度合いが強い子犬ほど、訓練プログラムを卒業して盲導犬になる可能性が低いことを見いだした。

■成功のカギは「母犬の授乳姿勢」

 成功のカギとなる尺度は、母犬が子犬に授乳させる際に立っているか横になっているかだった。

 論文共同執筆者のロバート・セイファース(Robert Seyfarth)氏は「母犬が腹ばいになっていると子犬は基本的に自由に乳を飲むことができるが、母犬が立っていると子犬は乳を飲むのに努力しなければならなくなる」と説明し、子供が後の人生で成功するには、子供が自分で克服できる程度の障害を親が子供に与える必要があるという仮説を立てられるかもしれないと述べた。「なぜならご存じの通り、大人としての人生は障害を伴うものだからだ」

 人間の行動にも同様のことが言えるかもしれない。「ヘリコプター子育て」(上空から監視しているような、子供に過剰に干渉する子育て)が子供の幸福にとって極めて有害である恐れがある一方、自立心と、逆境に直面してもくじけない強い精神を育てることが生涯の恩恵をもたらすと、専門家らは指摘している。

 犬については、母犬の心配がその子犬にどのようにして伝わる可能性があるのか研究が続けられている。過保護に育てられた子犬が母犬の不安を感じ取るのか?子犬が何らかの形で育て方に反応しているのか?それとも子犬をより臆病にさせる遺伝子が子犬に継承されているのだろうか?

「育児には微妙なバランスがあるように思われます」とブレイ氏は述べる。「例えば『子供に過剰な愛情を注ぐ母親は最悪だ』などと言うのは簡単ですが、そのメカニズムはまだ正確には分かっていないのですから、その反対方向へ極端に傾くことがないようにしたいものです」
【翻訳編集】AFPBB News