乃木坂46、ユニゾン、大原櫻子、夜の本気ダンス、Anly……最新シングルにこめられた“意図”を探る

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 現在の音楽シーンにおいて、シングルをリリースする意義とは、その時点におけるアーティストのスタイル、コンセプトをわかりやすく提示すると同時に、今後の方向性を予見させることで、リスナーの興味を惹きつけることに他ならないと思う。従来の“らしさ”をより強く押し出すのか、新機軸となる楽曲で新たな展開を目指すのか? 今回はしっかりとした意図を感じるニューシングルを紹介したい。

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 乃木坂46の18thシングルの表題曲「逃げ水」は、クラシカルなピアノのイントロから始まるアップチューン。EDM系のダンサブルなトラックと切ないメロディが絡み合い、サビ前にドビュッシーの「月の光」の一節を取り入れるなど、“らしさ”と“新しさ”をバランスよく兼ね備えた楽曲に仕上がっている。作曲・編曲は「混ざり合うもの」(乃木坂AKB)の作曲に参加した(外山大輔氏との共作)谷村庸平氏。ジャズ、クラシックにも造詣が深い谷村氏が手がけたこの曲は、乃木坂46の上品な雰囲気を活かしながら、“眩しい季節の終焉”を想起させる夏ソングの新定番として認知されることになりそうだ。“本当に欲しいものは手に入らない”というテーマを含んだ歌詞も、Wセンターを務める大園桃子、与田祐希のキャラクターによく似合っていると思う。

 10万枚のヒットを記録し、バンドの新たな代表曲となった「シュガーソングとビターステップ」(2015年5月)以来となるUNISON SQUARE GARDENのニューシングル『10% roll, 10% romance』。メンバーが“このアルバムが出来たことでバンドの自己紹介が終わった”と語っていたアルバム『Dr.Izzy』を経て届けられた表題曲は、起伏に富んだメロディライン、緊張感と疾走感に溢れたバンドアンサンブルなどを含め、“これぞUNISON SQUARE GARDEN”と呼ぶべき楽曲となった。バンドのキャリアとしては第2期に突入したと言っていいタイミングなのだが、ここで新しい方向性を示すのではなく、“この人たち、変わる気ないな”ということが強く伝わる新曲だと思う。以前から一貫して“同じことを飽きないように続けたい”という趣旨のコメントを繰り返している3人だが、そのスタンスには1mmのブレもないようだ。

 昨年10月に初の日本武道館公演を成功させた一方、今年の春には舞台『Little Voice(リトル・ヴォイス)』で主演を務めるなど、活動の幅と規模を同時に広げている大原櫻子のニューシングル『マイ フェイバリット ジュエル』表題曲は、秦 基博の作詞・作曲によるポップナンバー。秦は「マイ フェイバリット ジュエル」について「大原さんの歌声にあるポジティブで明朗な響きと憂いや寂しさの滲む情感をイメージしながら」制作したとコメントしているが、個人的には“憂いや寂しさの滲む情感”をより強く感じた。映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』でデビューした大原には“健気、前向き”というイメージがあるが、その歌声にはどこか切なさが含まれていて、優れた歌い手でもある秦は、彼女の切ない成分を引き出そうとしたのではないか。21才になった大原にとってこの曲は、大人のシンガーに近づくきっかけになるはずだ。

 スタートした瞬間にトップスピードに達するアグレッシブなビート、シャープな切れ味によって楽曲をドライヴさせるギターリフ。ポップに振り切った前作『SHINY E.P.』に続く夜の本気ダンスの2017年第2弾シングル『TAKE MY HAND』は、このバンドの核の部分を取り出し、さらに進化させたかのようなダンサブルなロックナンバー。海外のインディーロックとリンクしたサウンドメイク、きわめてスタイリッシュなムードを含め、「この曲を聴けば、夜の本気ダンスがわかる」と断言できるような楽曲に仕上がっている。尖りまくったこの曲が地上波のドラマ(フジテレビ系ドラマ『セシルのもくろみ』)の主題歌になっているのも痛快。本格的なブレイクのきっかけになることを切に願う。

 初出演の『FUJI ROCK FESTIVAL ’17』でも披露された6thシングル表題曲「北斗七星」は、Anlyが高校生のときに書いたミディアム・バラード。天国にいる兄を思い(自分に兄がいたことを彼女が知ったのは、小学校4年のときだという)、両親の悲しさを和らげたいと願いながら生み出されたこの曲には、アコースティック楽器を軸にしたオーガニックな音像、美しいブルース・フィーリングを感じさせるメロディ、豊かな感情が込められたボーカルなど、シンガーソングライターとしてのAnlyの本質がしっかりと宿っている。悲しみを乗り越え、大切な人たちとの温かい絆とともに前向きに進もうとする意志が伝わる「北斗七星」によって、彼女の豊潤な音楽性はさらに幅広いリスナーに浸透することになりそうだ。(森朋之)