舞台「鎌塚氏、腹におさめる」の作・演出を務める倉持裕氏

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 ◇倉持裕氏インタビュー(下)

 2015年後期のNHK連続テレビ小説「あさが来た」の亀助役で知られる俳優の三宅弘城(49)が主演を務める舞台の人気シリーズ第4弾「鎌塚氏、腹におさめる」が東京・下北沢の本多劇場で上演中。場内に笑いを巻き起こしている。脚本・演出は倉持裕氏(44)。04年に「ワンマン・ショー」で“演劇界の芥川賞”と呼ばれる第48回岸田國士戯曲賞を受賞。コメディーに定評があり、NHK「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」のコント執筆も手掛けた。大学時代、趣味だった演劇は鬼才・岩松了氏(65)らとの出会いを機に、職業に。今や引く手あまたの人気劇作家・演出家になった。今後の創作活動に向け、現在の商業演劇の製作システムに危機感。「この状況を変えなきゃいけないと思っています」と語った。

 原体験は小学生の時にあった。手塚治虫氏の漫画「七色いんこ」が大好きだった。シェークスピアなどの名作戯曲を題材に描く、代役専門の舞台俳優・七色いんこの物語。「いつも冒頭に『ハムレット』とか、2ページぐらいであらすじが書いてあって、漫画が始まるんです。漫画も好きだったんですが、そのあらすじを読むのが好きで。たった2ページのあらすじでしたが『戯曲って、おもしろいんだな』と。それが最初の興味だったと思います」

 中学の文化祭で芝居を上演。ただ、当時は「本当に無知で」、つかこうへい氏が劇作家と知らず「戯曲があるのに、角川映画の『蒲田行進曲』『二代目はクリスチャン』の映画版のシナリオを買ってきて、わざわざ演劇にしていました」。高校に入ると、イッセー尾形(65)が渋谷ジァン・ジァンで行った一人芝居を収録した深夜のテレビ放送に魅了された。

 学習院大学に進むと、自然と学生演劇の道に。1993年、テレビ朝日「時効警察」の課長など名脇役としても知られる岩松氏の作・演出による「竹中直人の会『こわれゆく男』」(下北沢・本多劇場)を見て「なんてカッコいい芝居なんだ」。その時のチラシの中にあった岩松氏プロデュース公演の出演者募集を目にし、すぐに履歴書を送った。合格し、岩松氏の薫陶を受けた。

 「大学に入った時は演劇は趣味として、普通に銀行とかに就職しようと思っていました。だから経済学部に入りましたし。岩松さんの影響は大きかったと思います。一気に世界が広がりました。最初は役者として、Vシネマのオーディションに受かったりして。(監督たちに)おもしろがっていただいて。何本か出ているんですよ(笑い)。ビックリですよね。大学に通う日常から、撮影で山の中に行って、みんなで雑魚寝して出番になると起こされたり、監督と一緒に『この台本、つまらないから、一緒に直さないか』と夜通しビール飲みながらとか。そういう作業が楽しくてしようがなくて。そうすると、スーツを着て会社に通うということが非現実になっていきました」

 00年に劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」を旗揚げ。昨年から今年にかけ、劇団☆新感線「いのうえ歌舞伎《黒》BLACK『乱鶯』」、松重豊(54)主演「家族の基礎〜大道寺家の人々〜」、竹中直人(61)とのタッグ第2弾「磁場」、黒木華(27)主演「お勢登場」、関ジャニ∞横山裕(36)主演「妄想歌謡劇 上を下へのジレッタ」とフル回転。「鎌塚氏」の後は田辺誠一(48)主演「誰か席に着いて」(11月28日〜12月11日、東京・日比谷=シアタークリエ)が控える。

 その発想法にはさまざまなパターンがあり、小説や映画に触発されること、断片的なビジュアルやラストシーンだけ浮かんでいることも。ただ「愛について何か書こうとか、最初にテーマを持って書くということは、まずないですね。自分が思っていることや主張は、どんなシチュエーションだとしても、書いているうちに結局、反映されてしまうので」とした。