清水港に入港したスタークルーズが運航する大型クルーズ船「スーパースター ヴァーゴ」=2017年8月7日(静岡県提供)

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 政府は、クルーズ船で入国する外国人の数を2020年までに500万人にまで増やすことを目標に掲げている。政府目標を受けて国土交通省では、クルーズ船の国内拠点作りを進めている。先の通常国会で港湾法を改正、7月末には国内6港の管理者に指定書を交付し、指定を受けた港湾は、改正港湾法にもとづき特定のクルーズ会社に優先的に岸壁を利用する権利を与えることが可能になった。

ゲンティン香港の清水港母港化

 7月上旬、静岡県静岡市の清水港に巨大な船が入港した。ゲンティン香港傘下のスタークルーズが運航する大型クルーズ船「スーパースター ヴァーゴ」だ。船体にはヴァーゴ(乙女座)にちなんだ乙女が描かれ、華やいだ雰囲気を周囲に放っている。日本初就航の同船は、今年7月から11月まで国内5港と中国・上海をめぐるクルーズを展開、清水港に11月までに計20回にわたり寄港する予定だ。

 清水初寄港となったスーパースター ヴァーゴの船内では川勝平太静岡県知事や田辺信宏静岡市長も出席してセレモニーが開催された。セレモニーはスーパースター ヴァーゴの清水初寄港を祝したものだが、実はスーパースター ヴァーゴを運航するスタークルーズの親会社、ゲンティン香港は清水港を母港にして今後、清水港の施設整備などの取り組みを行うことが予定されている。船内でのセレモニーには、県とゲンティン香港側が会合し、今後の取り組みに向けて祝う意味もあったに違いない。

港湾投資と岸壁使用権を抱き合わせ

 日本でのクルーズをめぐる静岡県とゲンティン香港の取り組みは、国土交通省が進める国際クルーズ拠点整備事業にもとづいて行われているものだ。国交省は、今年の第193通常国会に改正港湾法を提出、可決・成立し施行された。改正のポイントは、国が指定する港の岸壁使用に優先権を設定したことだ。

 岸壁使用の優先権の設定は国際クルーズ拠点整備事業のスキームの中で行われる。改正港湾法の施行を受けて国交省は7月26日、横浜港(横浜市)、清水港(静岡県)、佐世保港(佐世保市)、八代港(熊本県)、本部港(沖縄県)、平良港(宮古市)の6港湾の管理者に、クルーズ船の受け入れ指定港であることを認定する指定書を交付した。それぞれの港は、それら港を母港にするクルーズ会社と連名で国交省の事業に応募し、7月26日に指定を受けたもので、国交省によると応募のあったすべての港が指定対象になった。

 国交省の事業では、クルーズ会社に岸壁使用の優先権を与える一方、CIQ(税関・入国管理・検疫)機能等を有する旅客ターミナルなど港湾施設の整備にクルーズ会社側が投資をすることが条件になっており、今後は港湾管理者が国際クルーズ拠点形成の計画書を作成し、港湾管理者とクルーズ会社が協定を締結して運用の運びとなる。そのため運用開始年を、横浜港は2年後の2019年、他の港は3年後の2020年に予定している。

アメリカの2大クルーズ会社も

 では、国交省が進める国際クルーズ拠点整備事業でどのようなクルーズ会社が今後、日本の港を母港にクルーズを展開していくことになるのか? 清水港の場合、すでに紹介したゲンティン香港グループが取り組みを進めているが、他の港は別表に示した通りで、クルーズ会社としてはゲンティン香港のほか、カーニバル・コーポレーション、ロイヤル・カリビアン・クルーズ、郵船クルーズといった企業だ。

 旅行会社、ジェイティービーでクルーズを専門に扱っているJTBクルーズ銀座本店によると、カーニバル・コーポレーションはアメリカ最大のクルーズ会社。著名な豪華客船「クイーン・エリザべス」を所有するイギリスの老舗客船会社、キュナード・ラインなどをラインナップとしており、同船は世界1周クルーズでたびたび日本にも寄港している。

 また、ロサンゼルスに本社を置くプリンセス・クルーズもカーニバル・コーポレーションのラインナップで、全世界をクルーズエリアとし、2013年からは日本市場に参入。日本で建造されたダイヤモンド・プリンセスに約100人の日本語スタッフを乗船させ、日本式大浴場や寿司レストランなど日本人向けにカスタマイズされたサービスや施設を備えたクルーズを提供している。

 ロイヤル・カリビアン・クルーズはマイアミに本社を置き、カーニバル・コーポレーションとともにアメリカの2大クルーズ会社として君臨している。ラインナップの1つ、ロイヤル・カリビアン・インターナショナルは世界最大の客船を有し、船上サーフィンやロッククライミング、ミュージカルやアイススケートショーなど斬新なアイデアで驚くべき施設を提供して乗船客を楽しませているという。

年間20万人台で推移してきた日本のクルーズ人口

 すでに紹介したゲンティン香港は、スタークルーズをはじめ3つのクルーズブランドを有するゲンティンクルーズラインを運営しており、中国の広州、上海、深セン、台湾の基隆、高雄のほか、香港やマレーシア、シンガポール、フィリピン・マニラなどに母港があり幅広いクルーズ旅行を提供しているアジア最大のクルーズ会社。また、郵船クルーズは、日本郵船が国内での本格的なクルーズ事業を始めるにあたり、「飛鳥」就航に合わせて1991年に設立したクルーズ会社。横浜を母港に日本のクルーズ市場を拡大している。

 アジア、そして世界を代表するクルーズ会社が日本の港に投資をする一方、これら港を母港としてクルーズを展開していくことになるわけで、国交省の取り組みは世界的なクルーズの波を日本列島に呼び込む”クルーズ列島化”計画にほかならない。国交省クルーズ振興室では、条件が整った港湾については今後もクルーズ船の受け入れ指定港として指定をすることはあり得るとしていることから、指定港湾がさらに増えていく可能性もある。

 世界的なクルーズ会社が日本の港湾を母港とすることで、どのようなクルーズビジネスが展開されていくのだろうか? JTBクルーズ銀座本店では、「2016年の日本のクルーズ人口は緩やかな伸びながら過去最多の24.8万人になりました。日本のクルーズ人口はずっと年間20万人台で推移してきましたが、今後、増加していくものと予想しており、当社としてもシニアや富裕層にとどまらず若年層やファミリーなど潜在的なニーズを発掘していきたい」としている。