ランニングをしている人ほど椎間板が厚く水分が豊富(depositphotos.com)

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 走ることの恩恵は多くある。体力の増進にとどまらず、『走れば脳は強くなる』(重森健太・著/インプレス刊)という書籍も発売されるなど、ランニングは今なおブームである。

 そして今年、「走ることで椎間板が強くなる可能性がある」という興味深い論文が発表された。

腰痛の原因となる椎間板ヘルニアとは?

 「椎間板」とは<脊柱にあるクッションのようなもの>と言えばわかりやすいだろうか。腰痛の原因の一つに「椎間板ヘルニア」がある。これは椎間板が裂けてしまい、中にある「髄核」という組織が飛び出したことで生じる腰痛だ(ヘルニアは「脱出・突出」の意味)。

 この飛び出した髄核が神経に触れると、下肢のしびれや痛みとなって現れ激痛となる。最悪の場合、手術を行う必要がある。椎間板ヘルニア自体は自然に治るが、それには数カ月かかることがある。そのため、その間の激痛を回避するために手術を選択する人は多い。

 なぜ椎間板が破れてしまうのかはさまざまな意見がある。一般的には、<不良姿勢>や<不適切な体の使い方>によって椎間板を含む腰部に負担をかけてしまうことが原因だと考えられている。

 たとえば、腰を曲げながらの圧迫や腰部のひねりが椎間板にダメージを与えることが、これまでの研究で報告されている。

 そうすると、「走ること」は腰に負荷をかけるリスクが生じる気がするが、反対に走ることで<強くなる>ことが示唆されたのだ。

ランニングをしている人ほど椎間板が厚く水分が豊富

 研究では、「スポーツなし」「20〜40辧申機廖50勸幣紂申機廚鯀るランナーの3つのグループになるように被検者76名(25歳〜35歳の男女)が集められた。そして、MRIで椎間板の水分量の割合と厚さをそれぞれ調べた。

 その結果、「スポーツなし」のグループに比べて「走る」グループは、より水分が含まれており、さらに「週に50km以上走っている」グループは、椎間板の厚さも増していた。

 「水分を含んでいる」のは、より椎間板が健康的な状態だ。

 高齢になると「背が縮んだ」という話を聞いたことがあるかもしれない。もちろん、猫背や膝が曲がったことによるものもある。だが、椎間板が薄くなってきたことが原因だ。そして、椎間板が薄くなるのは、椎間板の水分が失われてしまうからである。

 つまり、水分を多く含んだ椎間板というのは若々しい証拠。今回の研究で、ランニングを日常的に行なっている人たちは、水分の多く含んだ椎間板を保持できている可能性が示唆されたのだ。

ランニングが「椎間板に垂直方向の負荷を適度にかける」

 なぜこのようなことが生じたのかは推測の域をまだ出ないが、研究者は「椎間板に垂直方向の負荷を適度にかけることができているからではないか」と述べている。

 一般的には「椎間板に負荷をかけることはよくない」とされてきたが、ランニングのように椎間板に「垂直に負荷」がかかることで、椎間板を鍛えることができるかもしれないというのだ。

 実際、骨の場合も適度な垂直方向の負荷が、骨粗しょう症に有効――という報告がある。それと原理は似ているのかもしれない。

 「走る」ことには、さまざまなメリットがあることはすでに証明されている。そのうえ腰痛の原因となる椎間板も鍛えることができるとわかれば、これはもう走るしかない。

 ただし、正しいフォームで適切に走る、ということが前提であることをお忘れなく。

Belavý, D. L. et al. Running exercise strengthens the intervertebral disc. Sci. Rep. 7, 45975; doi: 10.1038/srep45975 (2017).
Adams, M. A. & Hutton, W. C. Prolapsed intervertebral disc. A hyperflexion injury 1981 Volvo Award in Basic Science. Spine 7, 184-191 (1982).
Schmidt, H., Heuer, F. & Wilke, H.-J. Dependency of disc degeneration on shear and tensile strains between annular fiber layers for complex loads. Med. Eng. Phys. 31, 642-649 (2009).

連載「国民病"腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」バックナンバー

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。