最近、社会的な注目を集めている発達障害の実態について

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発達障害とは?

発達障害とは、幼児期または小児期から発症する、精神・神経機能の発達の障害のことです。それは脳の成熟の過程と関係があると考えられています。発達障害には数多くの種類があります。

その中でも、主なものとして、知的機能の遅れがある精神遅滞、コミュニケーションの困難が見られる自閉スペクトラム症、注意力と衝動性の問題と落ち着きの無さが特徴の注意欠陥多動症が挙げられます。


最近注目されている理由

NHKが「発達障害プロジェクト」と題して、今年の4月から、1年間の予定で特集の放送を開始しました。このように、近年、発達障害は世間の注目を集めています。ただ、主に注目を集めているのは、自閉スペクトラム症と注意欠陥多動症です。それにはいくつかの理由があります。

まず、社会的なコミュニケーションに持続的な障害が見られる自閉スペクトラム症ですが、そのスペクトラムという名が示すとおりに、その症状の程度には幅があります。そのため、症状が軽度で、さらに知的能力には問題がない場合には、当人も周囲もその特性に気付きにくい場合があります。しかし、自閉スペクトラム症である方の割合は全人口の1%と考えられており、頻度は決して低くありませんし、成人となっても、その方の特性に変わりはないのです。

また、社会の構造の変化に伴い、現在では就業者の中で、サービス業が最も割合が高い産業となっており、就労の条件として、高いコミュニケーション能力が求められるようになってきています。そのため、自閉スペクトラム症の中で、症状が軽度の人であっても、就労と社会適応に悩む例が増えているのです。

次に注意欠陥多動症ですが、これまで、成人期になるとその症状は概ね軽快するとされていました。しかし、近年、その診断を受けた子供の50%〜70%が成人期まで症状が続くという報告が見られるようになっています。成人の場合には、特に細部までの注意力が求められる事務作業に従事させられた場合などに、その不適応が目立つようです。対人関係でも配慮が足らない衝動的な言動によって、周囲の人から嫌がられることがあります。現在、成人における頻度は全人口の2.5%程度とされ、その頻度は自閉スペクトラム症を上回っています。


発達障害の実態

最近のマスコミの報道によって社会的に認知されるにつれ、子供でも成人の方でも、周囲から発達障害を指摘されたり、自分の精神的な特性の偏りに悩んだりすることから、正しい診断を求めて、精神科のクリニックを受診される方が増えています。私のクリニックでも発達障害の診断目的での心理検査を希望する方がとても多く、そのご希望に応じきれない程なのです。

また、発達障害は、何らかの精神疾患を合併することが多いものです。発達障害であった場合に問題になっていることが、就労や対人関係における悩みだけであれば、発達障害に加え、自分の置かれた環境に適応が出来ない適応障害という診断の合併が考えられます。しかし、発達障害がその背景となる精神疾患は、適応障害にとどまらず、うつ病、不安障害、アルコール依存などの依存症、または、反社会性、境界性人格障害といった人格障害など、幅広い範囲に渡るのです。これらの精神疾患が長期にわたって改善が見られない場合、その背景に何らかの発達障害があることを疑ってみることは必要なことでしょう。もともと存在しながら、気づかれなかった発達障害に対する治療や対処を行うことで、合併している精神疾患にも改善が見られることがあるからです。


発達障害への対処

発達障害による精神的な特性は、その患者さんが置かれた状況によって障害にもなり、長所にもなり得ます。周囲がその独特の特性を理解し、それを否定しない接し方をすることが重要です。平均的な特性を持つ正常発達といわれる普通のあり方が至上の価値を持つわけではありません。正常に比べるとその特性に偏りがある発達障害の方は、その方にしかない独特の長所を持っているものです。

自閉スペクトラム症の場合には、限定された領域に対する抜群の集中力、注意欠陥多動症の場合には、独創的なアイディアやひらめきに恵まれているといったようにです。

自分の特性、及びその長所と短所を自覚することが大切です。今は発達障害の方に対応できる精神科のクリニックが増え、発達障害の方を対象とする就労支援施設が各地に設けられるようになってきています。

自分の特性が何らかの発達障害のように感じられる方は、その短所を和らげる訓練を受けたり、その長所を生かせる仕事を考えるためにも、それらの施設をご利用されることも一法でしょう。


【鹿島 直之:精神科医】


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