冤罪

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今年に入ってから、痴漢を疑われた男性たちが、線路に飛び降りて逃走するなどの事件が頻発。JR東日本は2018年より、山手線E235系通勤形車両へ車内防犯カメラを設置することを発表、スマホアプリ「痴漢冤罪防止ナビ」や痴漢冤罪をかけられた時の保険まで登場し、もはやラッシュアワーを経験している男性たちにとっては、「痴漢冤罪」は身近な問題になってきている。そこで、痴漢冤罪事件を多く取材している、ライターのごとうさとし氏にインタビュー。もしも夫が痴漢冤罪に巻き込まれるとどうなってしまうのか? 紐解いていく。

●突然「痴漢です!」と手を掴まれた!

「日本には『痴漢罪』という犯罪はありません。痴漢事件は、強制わいせつ罪か(各都道府県で定められた)迷惑防止条例の2つの内のどちらかで裁かれることになりますが、『強制わいせつ罪』は、“公衆の面前でキスを強要した”など悪質な痴漢行為に限られていて、服の上からお尻を触ったなどの痴漢行為は、『迷惑防止条例』違反が適用されることになります。ここでは、この『迷惑防止条例』違反を疑われたAさんの例を紹介します」(ごとう氏、以下同)

「サラリーマンのAさんは、通勤電車の中で『痴漢です!』と、被害者とされる女性に手首を掴まれ、わけがわからないまま駅の事務室まで連れて行かれてしまいます。突然のことに『僕じゃないです!』と言うのが精一杯で、走って逃げるということもできず、そのまま駅事務室に連れて行かれ、駅員の『ちょっと待っててね』と言う言葉に従っていたら、警察が到着。そのままパトカーで警察署に連行されてしまったそうです」

名刺を渡して『後で連絡してください』と言えば解放されるという話も聞くが、ごとう氏によると「それは相当運がいい方ですよ」とのこと。

「ほとんどがAさんのように、自分が置かれている状況を理解できないまま警察署に連行されてしまう。Aさんは取調室で事情調書を取られる段階になって初めて、“自分が逮捕された!”という事実に気づいたそうです」

●罪をあえて被り、事件そのものを早く終わらせる手段を選ぶ人も…

冤罪であることを主張し続けたAさんが釈放されたのは、逮捕から100日後のこと。その頃にはAさんが逮捕・勾留されていることが会社にもバレてしまっていたので、やんわりと退職を勧められ、結局退職することになったとか。

「Aさんには、裁判で戦って無罪を手にする望みしかなくなるわけですが、結論からいうと裁判は敗訴。罰金40万円、かかった弁護士費用は数百万円……。こういった話を聞くと、Aさんがものすごく運の悪い方に思えますが、そうでもないんですよ。弁護士は、こうした現状をよく知っているので、『痴漢を疑われたら逃げろ!』と言ってしまうのも、理解できなくないですよね。また、罪を認めてしまえば逮捕された日に釈放され、罰金も30万程度で済むので、罪をあえて被って、事件そのものを早く終わらせる手段を選ぶ方もいるというのが、今の痴漢冤罪の現状です」

もしも夫が、痴漢冤罪に巻き込まれてしまったら…お金と時間がかかってしまうだけでなく、家族も大きな試練と立ち向かう現実が待ち受けている。

(取材・文/船木圭子)