金正恩氏

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北朝鮮の金正恩党委員長は最高指導者となって以来、タワーマンションや豪華レジャー施設などハコモノ行政に余念がないが、その建設に投入される労働力の多くが、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士だ。

ところが最近、軍では兵士不足が深刻化しつつある。北朝鮮当局は既に、男性の10年の兵役を11年に延長し、徴兵の対象外だった女性にも7年の兵役を課す措置を取っているが、それでも足りない。

貧しくて買えない

兵士不足の理由はふたつある。ひとつは、食糧の横流しによって兵士が飢えに苦しみ、女性らは上官から「性上納」を強要される軍紀びん乱を知る親たちが、子供を軍隊に送るまいとあの手この手で悪戦苦闘しているためだ。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

そしてもうひとつ、より根本的な理由として少子化がある。北朝鮮の少子化の原因は、慢性的な経済難だけでなく、その中で生じた人々の意識変化によるところが大きいとされる。

北朝鮮の女性らは、20代で結婚すると「早すぎる」と言われるため、30代になってから結婚するのが一般的だ。そして最近では、そもそも結婚しない人も増えているという。その主な理由は、生きるための商売で忙しいからだ。

こうした現状を放置すれば、国力が大きく減退してしまう可能性がある。危機感を持った金正恩党委員長は、様々な手を打ち始めた。

そしてそれらが上手く行かないと見るや、最近になって打ち出したのげ次の方針だという。

「子供を3人以上もうけた家庭には毎月、子供1人当たり5000北朝鮮ウォンを支給する」

しかし、これに対する国民の反応は芳しくない。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、「1人育てるのも大変なのに、コメ1キロ分(5800北朝鮮ウォン)にもならないカネをもらって、どうやって3人以上も育てるのか。当局は、『たくさん子供を生むと健康になる』などといった宣伝も行っているが、聞いた人々は皆、鼻で笑っている」と話す。

情報筋はまた、「数年前、当局が開いた『オモニ(母親)大会』で、子供を10人産んだ女性が労力英雄の称号を授与されたが、誰もうらやましがらなかった」という。

北朝鮮で労力英雄称号には病院での優先診療、幹部専用列車の利用、引退後も続く月給と配給制度など、様々な特典が付与されているが、それも配給制度が維持されていればこそのものだ。「配給制度が崩壊し、誰もが商売を頑張らねば生きていけない世の中にあっては、英雄称号など10個持っていても役に立たない」(情報筋)。

そんな現実があるにも関わらず、当局は女性への圧力を強める一方だ。それを受けて女性の「生きにくさ」がいっそう増し、むしろ出産を忌避する傾向が強まっているという。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は「わが国では避妊はご法度のため、病院では対応してくれない。そのため多くの女性が、闇市場で避妊具を購入している。多産の女性は、貧しくて避妊具すら買う余裕がないというケースが多い」と話す。

どの国もそうだが、いったん少子化の流れに入ると、それを逆転させるのは至難の業だ。北朝鮮の場合も、様々な面で国民に不自由を強いる体制が変わらない限り、少子化が止まることはないのではないか。