自分探しの果てに何がある?

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自分探しの一貫として世界を旅する若者は多くいます。ほとんどの人は安全に戻ってくるのですが、なかには旅先で事件や事故に遭遇し命を落とす人もいます。下川裕治による『香田証生さんはなぜ殺されたのか』(新潮社)にはそんな一人の若者の軌跡が描かれています。

何を求めて行ったのか

香田証生さんは、単身イラクへ渡航し、武装組織に拉致され、殺害された青年です。当時24歳だった青年の、無謀な行動に自業自得とのバッシングが向けられました。本書はセンセーショナルな題目があげられていますが、結局のところ明確な理由は誰にもわかりません。本書に明確な答えが書かれているわけではありません。それは著者である下川裕治の文章のスタイルというべきものです。何かを断罪する、自分の意見を強硬に主張することはありません。

旅の足跡を追う

著者である下川裕治は、香田さんがたどった旅の経過をていねいに追います。英語留学をしていたニュージーランドから、ふらりと一人旅を始めたイスラエル、ヨルダン、そしてイラク国境の手前まで向かいます。少ない資金をやりくりしながら、旅を続けていた香田さんと同じ足跡をたどることで何かを見出そうとします。やがて、自分の目でイラクを見てみたかった、そのような動機がぼんやりと浮かび上がります。同時に、香田さんがなぜ海外へと旅立ったのか、日本という国、日本社会が逆照射されます。ひたすら迂回を続けるような本ですが、結論を急がず、求めない姿勢には好感が持てます。