実はたいしたことがない芸能人の「経済効果」 少し考えればわかるはずのことだが……

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 連日のように報道される芸能界の不祥事ネタ。不倫や交通事故の当て逃げなどは、もはや日常茶飯事になっているが、彼らの言動で巨額の経済効果が生まれるともいわれる。

 近年は、SMAPの「世界で一つだけの花」が、解散を阻止しようとするファンによる購買運動で累計売上300万枚を達成。俳優の小出恵介の未成年淫行問題では、所属する東証一部上場のアミューズの株価が下落した出来事もあった。

 しかし、経済ジャーナリストの堀浩司氏は、「SMAPも小出恵介も日本経済全体で考えると、影響はそれほどありません。よく言う“経済効果”にも実は大きな意味はない」と主張する。

 芸能プロダクション全体の売り上げ規模は1兆2000億円ほど。関連する音楽業界は1兆3000億円、映像・コンテンツ業界は4兆3000億円ほどある。堀氏は、「日本のトップ企業のトヨタ自動車の売上高は約28兆円です。これは海外も含めた連結ですが、比較的ドメスティックなNTTでも約11兆円。1兆円程度の企業はゴロゴロとあるので、芸能界の市場規模は決して大きなものではありません」と指摘する。

 しかし、SMAPの解散では、“経済効果”の算出で著名な関西大学の宮本勝浩名誉教授が「636億円の損失」という数字をはじき出している。

 決して小さな金額ではないはずだが、堀氏は「確かに売上高636億円の企業が倒産すると、下請けの連鎖倒産なども含めて、かなりの影響があります。しかし、SMAPが解散しても、関係していた業者は別の仕事で売上を確保するので、636億円すべてが日本経済から失われるわけではない。ファンも、これまでSMAPに使っていたお金を別のところで使うだけ」と世間が捉えるほどのインパクトはないと話す。

 また“経済効果”というのは言葉のマジックのようなものであるともいい、「結局は同じ財布の中のパイの奪い合いなので、日本のGDPが増加するわけではなく、経済全体ではプラスマイナスゼロになっているはずです。’19年に日本で開催されるラグビーW杯では4000億円の経済効果があると言われていますが、このように数千億円規模にならないと本当の意味でのプラス効果は期待できない」

◆今の芸能界はスキャンダルなしにはもはや成立しない

 一方で、その芸能人たちの不祥事が連日のように報道され、社会への影響力は低下の一途をたどっているようにも見える。情報番組にコメンテーターとして出演することもある堀氏は、「不祥事ネタは少し視聴率が上がりますが、たいてい1週間も続かない。今は芸能人が不祥事を起こしても別に驚きはありません」と指摘する。

「かつては子供から大人まで知っているヒット曲がテレビから流れ、芸能人は憧れでした。しかしSNSが浸透し、年齢層や趣味嗜好によってヒットするものが細分化している今では芸能人はもはや“特別な存在”ではない。今の芸能界はスキャンダル、不祥事がないと成り立たないといえるでしょう」

 このまま芸能界は衰退し、“オワコン”になってしまうのだろうか。

 堀氏は、「一昔前はCDのダブルミリオン、トリプルミリオンはざらでしたが、現在は最高でもAKB48の約100万枚。とは言え、コンサートの市場規模は年々急成長しています」と需要の変化を明かす。その上で、堀氏は芸能が経済に与える一定の効果について話す。

「よく『不況になるとヒットが生まれる』と言われますが、’97年頃から深刻化した金融危機の際にはモー娘。やSPEEDがヒットを飛ばし、景気対策が効き始めると人気に陰りが出始めた。AKBが初ヒットを飛ばしたのもリーマン・ショックが起きた’08年以降です。経済低迷時には明るい音楽や話題はとても重要。そういった意味で、芸能が経済に与える意義は大きいでしょうね」

<堀浩司氏>
’53年大阪生まれ。経済ジャーナリスト。阪南大学常任理事を務めるほか、在阪のローカル局を中心に多数のメディアでコメンテーターとして出演