最先端の技術が生みだされるシリコンバレーの中心的存在といえるGoogleで、同社が掲げる多様性についての方針に反対している上級エンジニアが社内メーリングリスト(社内ML)で公表した文書が物議を醸しています。その人物が「個人的な意見」として公表したのは、Googleの方針を批判し、かわりに「思想の多様性」を目指すべきという内容なのですが、その中には「女性はコーディングに向いてないから(男女比率を)無理やりに半分ずつにするべきではない」というようにして根拠に欠けると思われる記述があり、その後Twitterで社外にも拡散されたことからGoogle首脳陣を巻き込んだ騒動になっています。

Google Employee's Anti-Diversity Manifesto Goes 'Internally Viral' - Motherboard

https://motherboard.vice.com/en_us/article/kzbm4a/employees-anti-diversity-manifesto-goes-internally-viral-at-google

事の発端は、現地時間の2017年8月3日にGoogleの社内MLで公開された「Google's Ideological Echo Chamber (Googleのイデオロギー的なエコーチェンバー)」と題された文書です。10ページに及ぶというこの文書では、Googleが目指す男女同権的な方針について「左寄り」と批判し、女性が「平均的」に持つという特性を根拠に、男性と女性を必ずしも同じ比率でアサインする必要はないと主張しています。

Twitterの投稿によると、文書を作成した人物は、男性と女性の生物的な特徴の違いがもとでソフトウェアエンジニアリングの分野には見方の違いが根強く存在していると主張しているとのこと。また、一部の限られた人種や性的なマイノリティー層に対し、Googleは対策を提供すべきではないとも主張しているとのこと。



By Jens Hoffmann

Googleが従業員に対して定める厳しい情報流出防止対策のため、多くの人物は情報の提供を拒んでいるとのことですが、アメリカのGizmodoは文書を入手して全文を掲載しています。

Exclusive: Here's The Full 10-Page Anti-Diversity Screed Circulating Internally at Google [Updated]

文書は「私は多様性とその受け入れを評価しており、また、性差別が存在していることを否定せず、紋切り型のステレオタイプで論じることを是認するものでもありません」という一節から始まっており、冷静な目線で論じていることを印象づけようとするものであることが感じられます。最初にまとめられた要点では「Googleが持つ政治的バイアスによって発言を妨げられ、ある考えについて正直な議論を行うことが疎んじられるエコーチェンバーを形づくっている」などとする意見が語られています。ここでいう「エコーチェンバー」とは、同じ意見を持つ人だけが多く集まり、その中で発言が繰り返されることで独善的な雰囲気が醸成される空間のことを指しており、特に政治的な左右の偏りを表現する際のキーワードとして用いられることが多くなった用語です。



By Garry Knight

要約するとこの人物は、男女には将来備わった違いがあるために全く同じ条件で雇用するべきではない、という旨の発言を行っているのですが、気になるのはその根拠を示している部分といえます。「Personality differences (人格的な違い)」と題された部分でこの人物は、女性は「平均的に」以下に挙げるような特徴があると論じています。

・女性は発想よりも感情や美的感覚に対する寛容さがある。また、男性と比べて女性は一般的に、モノよりもヒトに強い関心がある。これは「感情」と「系統立て」という言葉の対比として表すこともできる。

・これらにより、女性は社会的で芸術的な分野を好む傾向にあることが説明できる。男性はよりコーディング(プログラミング)を好むが、これはより系統立てた「システマイジング」が要求されるからである。ソフトウェア工学の分野においてさえも、女性は他の人と接して美的感覚を扱うフロントエンドの仕事に就く。

一見すると理路整然と語っているようにも見える内容ですが、いずれの論点も主観に基づくもので科学的な根拠がない、ということで、この文書に対してはさまざまな論争が起こっています。そんな中、Googleの多様性および統合性、ガバナンスを担当するダニエル・ブラウン副社長も社員に向けたメモを送付しています。話題の中心ともいえる「女性」であるブラウン氏はこの件に対し、社員に宛てたメモの中で「多様性とその受け入れがGoogleの成功において、決定的なものであることは明確です。オープンで受容力のある環境を作り出すことは、別の視点を持つ人や違った政治的立場に立つ人がいる中においても安全に意見を交わせる文化を醸成することを意味しています。しかし、その議論は当社が定める行動規範に沿ったものである必要があります」と記しています。

Googleは、この件に関して最初の報道を行ったMotherboardがコメントを求めたことに対して反応を示していないとのことです。