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前回は融資の概要についてまとめました。今回は出資と融資の特徴を実務面から比較することで、融資の特徴について深掘りしてまいります。専門用語や法令上の権利義務関係についての詳細な解説は、専門書に委ねます。

○1.期間の違い

■ 融資

返済が完了すれば、資金提供者との権利義務関係が終了することが特徴です。貸し手によって関与する期間の相場が異なり、例えば運転資金の借入を想定した場合、都銀は原則として1年、長くて7年程度となります。地銀から長期で借りるケースでは、標準で3年、長くて10年程度です。プラント建設を伴うような設備投資をする際には、期間が15年を超えることもあります。

■ 出資

株式の所有権が移転するので、資金提供者との関係が「いつまでも」続くことが特徴です。資本政策はやり直しがきかないと言われる所以は、株主が譲渡の意思を示さない限り、関係性を解消することが困難だからです。ただし、実務においては株式の譲渡先の都合で買戻請求権が設定されることがあり、実態としてベンチャーキャピタルのファンドの組成期間に制約を受ける(関係性が終わりを迎える)ケースが存在します。

○2.資金提供者への報い方の違い

■ 融資

リスクの対価として利息を支払い、元本を返済することを目指します。信用保証料を求められるケースがありますが、費用負担する側は実質的に金利の上乗せと見なしてよいでしょう。中小企業が融資を受ける場合は、短期プライムレートがひとつの基準となります。短期プライムレートは各金融機関の店頭で確認できるほか、2017年現在日本経済新聞のマーケット総合2面(毎週火曜日)に掲載されています。

■ 出資

配当を支払うか、株価を上昇させるか、いずれかの方法で資金提供者に報いることを目指します。株主の期待する利益の水準を要求収益率と言い、株主の投資戦略によって大きく割合が変化します。3年で結果を出さなければいけない株主と、10年待つことができる株主では、利害が一致するとは限りません。ベンチャー企業への投資において、5年で10倍のリターンを求める事例をよく聞きます。また、東証一部上場株式の平均収益率は年10%程度と推計した論文があります。

○3.調達可能な金額の違い

■ 融資

ソフトバンクが2006年にボーダフォン日本法人を買収した際、1兆2,800億円を融資で資金調達しています。元本返済の算段さえつけば、巨額の資金調達にも耐え得る手法といえます。

■ 出資

リスクに見合った高い要求収益率が制約条件となり、1兆円単位の資金調達は非常に難しい(ほぼ不可能)と思われます。

○4.調達可能なタイミングの違い

■ 融資

大きく分けて3つのタイミングで、融資を受けることができます。

(1) 事業を始める前

(2) 利益が出た後

(3) 定期間内の入金が確実に見込める場合

お金を減らさない人が借りられる、と言い換えることができます。お金を減らしている人、つまり赤字のケースでも融資を受けることは不可能ではないですが、合理的で達成可能な黒字転換のための経営計画が求められますし、融資契約の条件が厳しくなることも当然あり得ます。

■ 出資

「いつでも」着手可能である点が特徴です。業績が赤字であっても、元本が長期に渡って毀損する公算が高いケースにおいても、最終的に儲かると投資家に信じていただければ取り組むことが可能です。信用が低い場合においても有効な資金調達手段といえます。

例えば500万円調達するとしましょう。出資での資金調達は、5年で10倍のリターンを目指してベンチャーキャピタルに報いようとする場合、累計で5,000万円の利益が必要となり、利益率が10%であれば累計で5億円売らなければなりません。融資なら、無担保で5年間借りて分割返済すると仮定した場合、業績に関係なく月々の支払いは86,000円前後です。

2017年4月に発表された帝国データバンクの大学発ベンチャー企業の実態調査によれば、売上高が1億円に満たない大学発ベンチャーの割合は60%を超えており、投資家の期待に応えることの難しさを感じ取ることができます。

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事業リスクに見合った資金調達方法はどちらなのか、過度な財務リスクを取っていないか、慎重に検討することをお薦めします。

上記以外にも、資金提供者の経営への関与や残余財産分配請求権などのテーマが存在しますが、本稿では割愛します。

次回は、融資の商品の違いについて解説します。

※写真と本文は関係ありません

○執筆者プロフィール:千保 理(せんぼ ただし)

株式会社情報基盤開発 CFO(最高財務責任者)

ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学運動会バドミントン部を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。Microsoft Innovation Award 2015にて勤務先が優秀賞を受賞した際のプレゼンター。融資による資金調達を得意としている。