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今回は、Microsoftのオープンソースソフトウェア (OSS) へのアプローチを少し振り返ってみたい。Microsoftの前CEOであるSteve Ballmer氏は、2001年のインタビューで「(知的財産という観点から見れば) Linuxはガンのようなものだ」とセンセーショナルな発言をしている。その後、2006年にMicrosoftはオープンソース開発のホスティングWebサイト「CodePlex」を設立した。あの時代はオープンソース向けホスティングが花盛りで、Google DevelopersやSourceForgeなど多くのサービスが世に出そろっていたが、大半が終了・撤退し、CodePlexも2017年4月に終了。利用者にGitHubへの移行を促した。

Satya Nadella氏がCEOに就任してから、Microsoftは変わったという意見がある。だが、あくまでも側面的な見方に過ぎない。取材すると、「(中の人でも) 追いつかないほど変わった」という声が聞こえてくる一方で、「取締役会の顔ぶれはBallmer時代とあまり変わっていない。Nadellaの存在も大きいが、会社全体が大きくシフトしている」と説明する関係者もいた。

いずれにせよ、Nadella氏はCloud and EnterpriseグループのEVPを務めてきた経験から、OSSの波を肌で感じていたはずだ。同氏のCEO就任は2014年2月だが、それ以降、MicrosoftにおけるOSSへのコミットは激しい。2015年11月には、Red Hatと戦略的提携を開始し、2016年3月にはEclipse Foundationに参加。同年11月にはThe Linux Foundationにプラチナメンバーとして加わった。2017年に入ってからも、6月にCloud Foundry Foundationへ、7月にはCNCF (Cloud Native Computing Foundation) への参加を発表している。また、GitHub上で進行中のプロジェクトも多数ある。

この背景にあるのはOSSの台頭だ。多くの開発者がLinuxを利用し、その上で多くのオープンソースを利用している。CNCFへMicrosoftが参加する理由として同社は、コンテナ運用管理の「Kubernetes」、IaaS環境構築に「OpenStack」、PaaSに「Cloud Foundry」といったOSSが多く使われるようになり、開発者のニーズに応えるためと説明している。また、Microsoft Azure上で動作する仮想マシンの3台に1台はLinuxという現状も後押ししているのだろう。なお、2017年9月リリース予定のWindows 10 バージョン1709 (Fall Creators Update) では、Ubuntuの他にopenSUSE、SLES (SUSE Linux Enterprise Server)、FedoraといったLinuxディストリビューションが対応する。

ここまでMicrosoftとOSSの距離が縮まると、我々エンドユーザーが使い慣れたWindowsというOSに固執する必要はなくなると同時に、開発者は使い慣れたツールが動作する実験・開発環境としてWindows 10が選択肢の一つとなる。ホワイトペーパーで「MicrosoftとOSSの間にある敵意の時間は過去の話」と述べているように、OSSと連携する開発プラットフォームの充実を図ってきた。

だが、「Windows 10は不用」という結論に達することはないだろう。開発者はMacでもLinuxでも構わないが、我々エンドユーザーはアプリケーションに依存しているため、Microsoft Excelなど業務や日常的に利用するアプリケーションが稼働するOSを選択しなければならない。他方で個人も法人もWebブラウザー経由で利用するWebアプリケーションや、仮想マシンもGPUをサポートするなど状況は刻々と変化している。

WindowsというOSは強力なエコシステムで膨大なアプリケーションを背景にシェアを拡大してきたが、MicrosoftはOSSへコミットすることで自ら基盤を作り替えようとしている。その時Windows 10は我々エンドユーザーに、どのような価値を提供するのだろうか。もしかしたらOSという概念を塗り替えるかもしれない。

阿久津良和(Cactus)