こんにちは。薬を使わない薬剤師、宇多川です。この夏も、日焼け止めクリームをしっかり塗っている女性が多いですね。日焼けによるシミ、ソバカスを防ぎたいし、皮膚がんのリスクも抑えたい。そんな気持ちから「夏だけは欠かさず、しっかり」塗っているという女性も多いと思います。それがどうしても気になるので、今回はクスリじゃありませんが、日焼け止めのリスクについて説明したいと思います。

SPFもPAも多いほどリスキー

はじめにごく基本的なことですが、 SPFとPAをおさらいしましょう。

SPFはSun Protection Factorの略です。日焼けで肌が赤くヤケドした状態(サンバーン)になるのは、紫外線の中でもUV-Bの影響ですが、これを防ぐ時間を数値化したもの。たとえばSPF20は、何も塗らなければ10分でサンバーンを起こす人が、その20倍の時間=200分、日焼けしないという意味になります。

PAはProtection grade of UV-Aの略です。UV-AはUV-Bより光の波長が長い紫外線で、お肌の真皮にまで到達します。そのため、お肌のハリやツヤの基であるコラーゲンやエラスチンという大切なタンパク質を破壊してしまいます。そして肌が小麦色になる(サンタン)というわけです。表記の+の意味は、UV-Aの防御効果のグレードです。PA+は「防御効果がある」。PA++は「防御効果がかなりある」というふうに+が多いほど防御効果が高くなります。

心配なのは日焼け止めの成分です。日焼け止め剤の有効成分には2種類あります。

ひとつは「紫外線吸収剤」。紫外線をいったん吸収し、熱エネルギーに変えて放出させる成分です。具体的には、メトキシケイヒ酸エチルへキシル、パラアミノ安息香酸誘導体(ジメチルPABAオクチル)などです。SPF値が高いほど多く入っていますが、肌への負担が大きく、肌荒れの原因になり得ます。敏感肌や子ども用のクリームではSPF値が低く設定されていることから、それは明らかと言えましょう。さらにメトキシケイヒ酸エチルへキシルは、女性ホルモン、男性ホルモン、甲状腺ホルモンを撹乱するリスクも指摘されています。

もうひとつは「紫外線散乱剤」です。紫外線を反射して散らす成分です。成分名では酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなど。上記の紫外線吸収剤より肌への負担は少ないといわれていますが、皮膚の乾燥を招きやすいです。さらにWHO(世界保健機関)では発がん性が指摘されている成分です。

肌の奥まで浸透する成分は「食べる」のと同じ

参考までに、日焼け止めの有名ブランドの2製品の成分表を見ると、両製品とも、紫外線吸収剤にはメトキシケイヒ酸エチルへキシル、紫外線散乱剤として酸化亜鉛が使われています。紫外線吸収剤にとしてジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを配合している製品もあります。(成分名が長くて読みにくいですね!) 

どの製品もどんどん進化して、成分が微粒子化し、肌の奥まで浸透しやすくなっています。化粧品は食品とは違うと思っていても、実際には肌から体に取り込まれているのと同じです。しかも、しっかり効果を出すために日中、何度も塗り直し、帰宅すれば専用のクレンジングで洗います。お肌へのダメージにならないかといえば、それはなります。いずれも、しないに越したことはないのです。日焼け止め剤には保湿剤も配合されていますが、それだけ乾燥するということでもあります。

ウォータープルーフタイプにも注意が必要です。水にも汗にも落ちにくいということは、それだけっしっかり肌に密着しているということです。どんな化粧品にも言えることですが、肌に密着していれば、それだけ皮膚呼吸はさまたげられます。そうなれば、皮膚の代謝もさまたげられ、お肌トラブルの元になります。

せっかくお肌のためを思い、高価な日焼け止めを塗っているのに、それが肌トラブルの原因になっている……本末転倒ではないでしょうか。

肌のターンオーバーを正常にすることが重要

本来、お肌のターンオーバーが正常に行なわれていれば、多少の紫外線はトラブルになりません。日に焼けても元の色に戻ります。皮膚ガンになるリスクも、日本人の肌においては白人ほど高いものではありません。紫外線対策はまず第一に、健康なターンオーバーを維持することです。

そのために大切なのは、やはりバランスのとれた食事と十分な睡眠です。ターンオーバーを促すビタミンやミネラルを、夏は意識して多めにとりましょう。

それでも日焼けしたくない、紫外線から逃れたい! という気持ち、わかります。私も以前は日焼け止めクリームをビタッと塗っていましたから。今は日焼け止めクリームはエッセンシャルオイルで手作り(レシピはインターネットにいろいろ紹介されています)。それでも市販のクリームほどの日焼け止め効果はないので、帽子に日傘、UVカットの長袖で露出部分をカバーし、目から紫外線を入れないようサングラスもかけて出かけます。オシャレを楽しみながら紫外線対策できますよ!日焼け止め剤で皮膚呼吸をさまたげることが減ったせいか、以前よりお肌の調子はよくなりました。

もっとも日焼け止め剤に日焼け防止の効果があるのも事実。薬の使い方同様、「毎日当たり前に使う」ということではなく「急場をしのぐ」という使い方をしてほしいですね。スポーツ、キャンプなどアウトドアで長時間過ごす時などは、日焼け止めを塗って紫外線をしっかりガードするということも必要です。必要な時だけ使うという使い分けができるといいですね。

ウォータープルーフのSPF50を何度も塗り直し……お肌にはよくありませんって。使用はシーンに合わせて考えましょう。



■賢人のまとめ
日焼け止め成分には大きく「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の2種類があります。いずれも肌への負担が大きく、肌荒れ、乾燥など肌トラブルの原因になります。しっかり塗るほど皮膚呼吸にとってはマイナスです。紫外線によるダメージ対策は、日焼け止め剤よりも、栄養バランスのとれた食事と十分な睡眠で、肌のターンオーバーを正常に保つことのほうが有効です。日焼け止め剤は「毎日当たり前に使う」のではなく、アウトドアでスポーツをする時だけ塗るなどの使い分けが必要でしょう。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)など。