By Karl-Ludwig Poggemann

地球の表面積の70%をしめる海では、数百年〜1000年という規模で海水が赤道付近と極地域をまたいで循環する海洋大循環と呼ばれる現象が生じています。この海流は地球が太陽から受けた熱を一緒に循環させることで、地球の気候を穏やかにさせることにも影響があると考えられているのですが、近年の地球温暖化現象でこの海流が弱まりつつあることがわかってきています。

Arctic sea-ice decline weakens the Atlantic Meridional Overturning Circulation : Nature Climate Change : Nature Research

http://www.nature.com/nclimate/journal/v7/n8/full/nclimate3353.html

Global Ocean Circulation Appears To Be Collapsing Due To A Warming Planet

https://www.forbes.com/sites/trevornace/2017/08/03/global-ocean-circulation-appears-to-be-collapsing-due-to-a-warming-planet/#7322ca8cf6f4

この研究はイェール大学とサウサンプトン大学の研究チームが共同で行ったもの。海洋大循環は主に大西洋と太平洋、インド洋などで顕著に見られるものですが、そのうちの1つで大西洋と北極にまたがる大きな流れ「大西洋子午面循環(Atlantic Meridional Overturning Circulation:AMOC)」の海流に、地球温暖化が負の影響を与えていることが浮き彫りになってきているとのこと。

赤道付近で太陽のエネルギーを受けて温められた海水は北極に向けて秒速数cmというスピードで移動し、AMOCを作り出します。温かい海水による「暖流」であるAMOCは、緯度の高い部分に位置するヨーロッパ諸国に温暖な気候をもたらしながらグリーンランド周辺の冷やされた海域へと達します。冷やされた海水は体積が小さくなると同時に、海で作られる「海氷」が形成される時に放出される塩分によって海水密度が高くなることで重くなり、やがてゆっくりと海の底へと沈み始めます。この流れが連鎖的におこることで、地球規模の海流が作り出されています。この流れは熱塩循環と呼ばれ、風に力によって起こる海流・風成循環と合わせて海洋大循環の原動力となっています。



この、熱塩循環を生みだす原動力の1つである海氷の減少によって、AMOCの流れが弱まっているというのが、今回明らかにされてきた現象というわけです。このことは、地表と海水温の変化を示した以下のヒートマップからも浮き彫りになっています。これは、1900年から2012年にかけて地球各地の平均気温がどの程度変化したかを示すもので、色が赤いほど平均気温が上がっていることを示しています。一見して地球規模で気温が高くなっている、つまり地球温暖化が起こっていることが見てとれるのですが、北大西洋の広い地域では温度がそのままか、むしろ少し下がっていることがわかります。これはつまり、赤道付近で温められた海水が循環する力が弱まっているため、熱が運ばれていないことを暗に示すものであると見られています。



2004年には、AMOCの変化による気候変動を描いた映画「デイ・アフター・トゥモロー」が公開されています。この作品の中では、海流が弱まることで地球に寒冷化が起こって竜巻や津波が発生し、ニューヨークのマンハッタンが波にのまれるという衝撃的なシーンが話題になりました。実際の気候変動による影響は、この映画のように数年レベルで生じるものではないと考えられていますが、実際に海流の変化が地球にどのような影響をもたらすのか、その答えはまだ誰にもわからず、その時が来るのを待つしかないという状況です。