支持率回復に汲々としていては…

8月3日、安倍総理は3度目の内閣改造を実施した。

挙党一致を強調し、経済重視の姿勢を示すことで支持率の回復が目指されていることは言うまでもない。それよりも重要なのは、人口減少が進む中で需要を的確に取り込むことのできる経済基盤を整備できるか否かだ。それができなければ、国民が景気回復を実感するのは難しい。

また、安倍政権は国際社会における発言力の向上にも取り組まなければならないだろう。現在、北朝鮮問題を巡る米中の足並みの乱れは一段と顕著だ。トランプ政権の外交政策は方針の修正が必要な時を迎えている。それができないと、国際社会の中で米国は孤立感を深める。

こうした展開が想定される中、日本政府はアジア新興国との関係強化をめざし、必要な取り組みを着実に進めなければならないはずだ。

目先の景気浮揚策はもう通用しない

挙党一致内閣を作ることで支持率回復を目指したい安倍政権ではあるが、現実はそう単純ではない。

まず、官邸主導で進められてきた国家戦略特区に問題があったか否かを虚心坦懐に解明しなければならない。それができなければ、アベノミクスの意義そのものが問われることになるだろう。まさに成長戦略の原点回帰が求められる。

財政・金融政策が行き詰まる中、政府は構造改革を進めなければならない。それが成長戦略の本来の目的だった。今回、安倍総理は経済対策を最優先で進める考えを示したが、すでにわが国の経済は良好だ。その中で人手不足が深刻化している。更なる景気の拡大は人手不足の問題をより深刻化させる恐れがある。

それを避けるためには、省人化に向けた技術の開発や導入、非正規社員の処遇向上など、必要な取り組みを着実に実現するしかない。「金融政策一本足打法」で円安圧力を高め、企業業績のかさ上げを重視することは限界と考えるべきだ。外国為替市場では、米国のインフレ率の軟化から年内の利上げ予想が後退し、ドルが下落基調で推移している。

今後、国内の株価が上昇しても内閣支持率が上昇するとは考えづらい。支持率が低迷すれば、円高圧力が高まる展開も考えられる。

安倍政権は目先の景気浮揚ではなく、将来の経済基盤の強化を目指して構造改革を進めるしかない。それは、国民に新しい経済のイメージを提示することだともいえる。それには国内での取り組みだけでなく、世界経済の原動力と考えられるアジア新興国との関係強化を通した需要取り込みも欠かせない。

「米国の行き詰まり」に備えはあるか

さきにも述べたように、国際社会の中で、安倍政権はわが国の発言力を引き上げなければならない。

トランプ政権は、中国に圧力をかけて北朝鮮の軍事的な挑発をやめさせようとしている。しかし、中国は北朝鮮を見捨てないだろう。北朝鮮の存続が困難となれば、中国は米国と対峙しなければならない。その状況は、米中ともに多大なエネルギーを消耗させる。中国はその状況を避けたいはずだ。

一方、対北朝鮮政策の方針を修正すべき時に来ている米国が抱える問題は、そのリーダーたるトランプ大統領が外交交渉とビジネス交渉を区別できていないことだ。これでは、短期間のうちに米国が外交方針を正すのは難しいだろう。

もし、米国の外交政策が行き詰まると、米国が国際社会の中で孤立するのと同時に、中国の求心力が高まる可能性がある。

安倍政権がアジア各国との関係を強化を目指すとき、念頭に置くべきはそうした展開だ。経済外交を推進してアジア新興国との関係を強化し、いまのうちに親日国を増やしておくのである。

それは需要の取り込みに加え、自由貿易の促進や地政学上のリスクを各国と共有し、解決策を協議する際の発言力向上につながるだろう。

安全保障面で米国に頼らざるを得ないわが国にとって、外交面での影響力拡大は急務だ。そのためにも、安倍政権は国内での改革を進め、アジア各国が求める経済連携の基盤を整備しなければならない。

構造改革を進めつつ、経済外交を通して多国間の経済連携に向けた議論を進めるのはたやすいことではない。しかし、それができるか否かが、わが国の将来を左右する状況に差し掛かっていると見るべきだ。