本誌のドキュメンタリーページ『シリーズ人間』に登場し、「あのキレイだけど押しの強い弁護士はナニモノ?」と、巷をにぎわせた仲岡しゅん弁護士。その正体は、男性として生まれ、数年前に女性に「トランス」した男と女のハイブリッド弁護士!大阪生まれ、大阪育ちの若き闘士は、悪を許さぬ正義感と、美貌に似つかぬ義理人情を盾にして、法律を武器に日々奮闘中。そんなハイブリッド弁護士がトラブルをシュッと解決!
 
【今回の相談】「私の死後、妻が死後離婚をしないか心配です。妻は私の実家と折り合いがよくありません。私も最近、病気をし、健康不安を抱えている身で、両親のほうが長生きする可能性があります。私としては妻に私の遺産を使って両親の老後をみてもらいたいのです。死後離婚されるのを止める手立てはありますか?」(50代男性・自営業)

【回答】「貴方が死んだあとまでお連れ合いを拘束したいだなんて、傲慢というものですわよ」(仲岡しゅん)
 
今回のご相談内容「死後離婚」という言葉ですが、近ごろマスメディアなどでときどき耳にいたしますわね。この「死後離婚」という言葉、『六法全書』のどこにもないんですね。つまり、これは世間で使われている俗語であって、正式な法律用語ではありません。
 
正式には、「姻族関係の終了」(民法728条)のことを指します。民法によりますと、姻族関係は「夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したとき」に終了することになっています。
 
まずは「姻族」というものについてご説明しておきましょう。
 
夫のAさんと、妻のBさんが結婚し、夫の親のCさんがいるという例を挙げて考えてみましょうか。Bさんからすれば、Cさんは舅か姑となりますね。
 
AさんとBさんが結婚するまでは、もちろんBさんとCさんとは赤の他人です。ところが、AさんとBさんが結婚すると、BさんとCさんとの間にも「姻族」という親族関係ができるわけです。
 
そして「姻族」になると、兄弟姉妹や親子ほど強くはないものの、一応は扶養義務や扶助義務が生じるわけですね。
 
ここで、さきほど挙げた「姻族関係の終了」です。貴方が亡くなった後でお連れ合いが手続きをすれば、お連れ合いと貴方の親御さんとの間での姻族関係は終了し、赤の他人に戻るわけです。貴方としてはそれが嫌なので、なんとか妻に「死後離婚」すなわち「姻族関係の終了」をしてほしくないと。さて、そんな方法があるのでしょうか。
 
結論から言いましょう。ありません。
 
貴方が亡くなった後で、お連れ合いと貴方の親御さんとがどういう関係でいたいかは、結局は当人間の問題。つまり、完全にお連れ合いの自由です。貴方が死んだあとまでお連れ合いを拘束したいだなんて、傲慢というものですわよ。
 
もっとも、法的拘束力はともかくとして、貴方が死んだあとにも、お連れ合いとご実家とで仲よくしてほしいという「希望」を書簡にしたためておくことには、人情の面で意味があるかもしれません。人は法律ではなく、気持ちで動くものですもの。その際には、お連れ合いへの感謝の気持ちも忘れずにお書きになるとよろしいと思いますわ。
 
そのお手紙、法的効果はゼロですけどね。