< アメリカ・フロリダ州 > グレースさん(仮名)・アメリカ人女性20代

もうじき「お盆」のシーズンである。亡くなった親族の墓参りや、あるいはお盆休みを利用してのお出かけを計画している方もいるだろう。今回のエピソードは、人がお墓に入る直前の出来事に関係した内容である。ここで言う直前とは、亡くなった瞬間からお墓に入るまでを指している。

グレース(仮名)には少し年下のいとこ(男性)がいた。20代前半という若さで数年前に亡くなった。彼が亡くなったとき、訃報を聞いたグレースは葬儀に参列するため彼の自宅があるアイオワ州へと足を運んだ。

 

自宅には彼の妻が同居しており、グレースの到着を迎えてくれた。自宅はとても簡素なもので平均的なアメリカ人よりも質素な生活だと聞いている。葬儀自体もとても簡素だったと思われる。

 

葬儀の後、彼の妻は疲れが出たのか寝室でひとりうたた寝を始めた。寝室には小さな机があり、その上には彼の写真が置いてあったとグレースはいう。グレースは居間のソファーにひとりで座っていた。寝室と居間は隣接しておりお互いの様子はよく見える状況となっている。ゲストは全員帰宅し、家にはいとこの妻とグレースだけであった。

 

疲れた様子でうたた寝をしているいとこの妻を起こすまいと、グレースはひとり静かに感傷にひたっていた。グレースがいとこの家を訪れたのはこれが初めてである。

 

簡素な部屋をそっと見渡す。小さな机の上に置いてある彼の写真が目に入る。写真の両脇には小さなキャンドルの炎がゆらめいている。いとこの妻がうたた寝をする直前に付けたものだ。ふと、グレースは部屋の中で風を感じた。

 

その瞬間だった。

 

「突然キャンドルの火が天井の高さまで上がったのよ! あんな小さなキャンドルなのに、とてつもない炎だった」

(原文:all of the sudden one of the candle’s flame went up to the ceiling! that small candle, had a huge flame)

 

グレースが驚いて声を上げるとウトウトしていたいとこの妻もハッと目を覚まして巨大な火柱を目の当たりにする。ふたりは悲鳴を上げ、互いにしがみつくように抱き合って泣いたという。

 

キャンドルの炎はまもなくして通常の数センチの高さまで戻る。

 

グレースは思考が固まってしばらく動けず、いとこの妻は隣でずっと泣いていたらしい。グレースはどうしたらいいのか分からずそのままでいると、いとこの妻は一旦泣き止み、通常の火の高さまで戻ったキャンドルのそばまでフラフラと歩いて座り、再び泣き始めたそうである。グレースはとにかく怖くて気持ち悪かったと語っている。

 

グレースは「私にはあれがいとこなのかどうかわからないけど、とにかく本当に怖かったのよ。怖すぎるの」と語る。一方、ずっと泣いていたいとこの妻はグレースとは違った気持ちを述べている。

 

いとこの妻は「あの瞬間は驚いたけど、きっと彼よ。私は怖くなかったわ。彼が来てくれたんだと思う」と語る。

 

写真の両脇に置いてあったキャンドルは2本で、そのうちの片方1本だけが巨大な炎になったそうである。

 

グレースは室内で感じた風について、外からのものではないという。部屋の構造は簡素であることから、開いている窓があればすぐにわかるらしい。窓はその時全て閉まっていたのである。しかも感じたのは弱い風ではなかったそうだ。

 

筆者はこの話をグレースから聞いた後、筆者にも似た体験があることを思い出した。ただ、筆者の場合は火ではなく水だったのだが。

 

そのことをグレースに伝えると、「ワオ本当ッ!? その話聞かせて! 待てないわ!」

 

こんなに興奮して喜んでもらえるというのは話を提供する側にとって悪い気はしない。筆者は実の母が他界した際の不思議な出来事をグレースに語った。

 

数年前の寒い冬のことであった。深夜は氷点下になるという予報で、筆者は0時ごろに風呂に入って午前1時30分に就寝した。まもなくしてふと、目が覚める。ベッドの上に置いてあった時計を見ると3時30分だった。2時間しか経っていないじゃないか…すぐにまた目を閉じる。明日も仕事があるのだ…。

 

意識を落とそうとしたとき、伸ばした足にヒンヤリした違和感を覚えた。筆者は子供のころ以来、やらかしていなかったオネショをやってしまったかと思い、ガバッと半身を起こしたのである。

 

「うわあ…びっちゃびちゃだよ」

 

背中から腰にかけて大量にやらかしたようであった。この量は干しても匂いが残るかもしれない…どうしようかと思いながら左手ですっかり濡れたシーツに触れ、どれほどの刺激臭かと嗅いでみた。

 

不思議なことに、無臭であった。まさかそんははずはないとさらに確認するがやはり匂いがこれっぽっちもない。

 

少しの間、思考が停止する。

 

筆者はこのアクシデントの源である股間を触ってみた。するとまったく濡れていないことに気づいたのである。寒い夜で汗はまったくかいていない。体の前面を触るとさらさら、額も汗ばんでいなかった。

 

「どうなってんだ? なら、この大量の水は?」

 

結局その夜は原因がわからず、とにかく翌日も仕事があるので衣服とシーツを替え、再び眠りに就いたのであった。

 

翌朝7時、ベッドの上に置いてある時計のアラームが鳴った。筆者はアラームを止め、枕の横に置いてあった携帯でも時間を見る。たしかに7時。朝か……。

 

体を起こそうとした瞬間、手に持ったままの携帯が鳴った。

 

「一体だれだ? こんな朝早くに…」

 

携帯の表示名を見ると親族からだった。そんな時間に親族から電話が来たことは一度もなかったので何だろうと思い電話に出た。ほとんど起床と同時だったと思う。するとそれは母が実家で亡くなったという訃報であった。

 

筆者はこのとき、深夜の水の現象との関連を感じたのである。なぜなら、筆者のおじいちゃんが病院で深夜に突然亡くなったときにも自宅で寝ていた母はふと目が覚め、急に水が飲みたくていられなくなったということを思い出したからである。

 

グレースたちが見たキャンドルの炎も、筆者の水も、最後のお別れの挨拶だったのかもしれない。

 

文=MASK校長

 

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