「日本人はお墓を大事にする」は本当か?

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もうすぐお盆。この時期に生まれ故郷に帰ると、近所の墓地に提灯がつるされ、ほおづきが色鮮やかにお墓を飾っている。こうしたお盆の風景は日本の夏の風物詩であり、この時期に親戚が集まってお墓参りをするのも、古くから続く伝統だ。しかし、こんな懐かしい風景や伝統であっても、解釈の仕方を間違えれば、自国の文化を無批判に褒めちぎるだけの底の浅い考え方に陥りかねない。「教えて!goo」には、「なぜ日本人はお墓や葬式にこだわるの?」という日本のお墓文化について、一考させられる質問が寄せられている。

■「日本人だから」お墓にこだわるの?

質問者のシンプルかつ無邪気な問いには、痛烈な批判が寄せられている。中でも多くの回答者が異口同音に唱えることは、「日本人だから」は根拠のない思い込みという指摘である。

「特に日本人がということではないでしょう。宗教や文化は違っても、どこの国でもそれぞれのこだわりがありますよ」(martin45さん)

「日本以外にはお墓がないとでも思っています?」(raraririruruさん)

「海外のこだわらないお墓やお葬式というのはどういう形式をいうのでしょうか」(CardBoyさん)

墓地や祭祀事情などは、観光や旅行だけでなくその国で暮らしてみないと、わからないことも多い。そうした意味で、「日本人だから」に安直に乗っかって、墓地へのこだわりをヨイショすることは避けるべきである。

■意外に惨い日本人の墓地をめぐる争い

もちろん日本人にもお墓や葬儀にこだわりはあっただろう。実際にはどういうものだったのだろうか。日本人のお墓文化について、心に残る家族葬というサービスを展開している葬儀アドバイザーにお話をうかがった。

「歴史上、墓所や遺体への冒涜を行ったことは確かにありました。例えば、鎌倉時代に、いわゆる念仏宗が天台宗勢力と朝廷によって弾圧された際、念仏宗の有力な指導者であった法然の墓所が破壊されており、それを描いた絵巻物も残っています。また、徳川によって豊臣が滅ぼされた際も、秀吉の墓所が破壊されています。幕末には、いわゆる勤皇派による、歴代足利幕府将軍の墓所への投石などが起きています。そして、こうした足利将軍の墓所への冒涜は、明治以降終戦に至るまで散発していたといいます」

しかしこうした「敵対者の墓所への冒涜」は、権力者や政治的に敵対する者同士の話だ。庶民の間ではそのような風習はなかったのではないだろうか。

「大衆の間でも存在してた可能性があります。例えば、明治期には『人の墓所にいたずらをしたり、破壊したりしてはいけない』というような内容の法律(墓地及埋葬取締規則)が、わざわざ作られていました。これは、江戸時代に遺体を寺院墓地に放り込んで終わり、というようなことが起こっていたことが背景にはありますが、明治になっても法律で禁じなければならないほど、墓地墓所へのいたずらが起こっていたからかもしれません」

このように、日本人だからといって墓地に対して敬意を払っているわけではないと言えそうである。確かに、昨今のお墓や葬儀に関するサービスは至れり尽くせりなくらい充実しているし、我々もそれを当たり前のものとして受け取っている。しかし、それは「日本人だから」というわけではないようだ。日本の文化の正しい理解のためにも、安易に「日本だから」「日本人だから」と結論づけることは避けねばならない。

専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー

故人の家族と生前に親しかった方だけで行う家族葬こそが、故人との最後の時間を大切に過ごしたいという方に向いていると考え、従来の葬儀とは一線を画した、追加費用のかからない格安な家族葬を全国で執り行っている。

ライター 樹木悠

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)