またしても新たな挑戦の末に完成した新作で成功を収めたクリストファー・ノーラン監督
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 『ダークナイト』『インセプション』のクリストファー・ノーラン監督が、初めて実在する出来事の映画化に挑んだ新作『ダンケルク』が戦争映画ではなくサスペンスであると語る理由、そしてスティーヴン・スピルバーグ監督の名作戦争映画が、ある意味で本作に与えた影響を語った。

 本作が描くのは、第2次世界大戦時、ドイツ軍に包囲されたフランスの港町ダンケルクからイギリス・フランス連合軍の兵士たち約40万人を救い出した奇跡の脱出作戦。先立って公開された本国アメリカでは公開10日間で累計興行収入1億ドル(約110億円・1ドル110円計算)を突破し、戦争映画では異例ともいえる大ヒットを記録している。

 映画は、極力CGに頼らない本物の迫力をIMAXカメラでフィルムに収め、極限状態のダンケルクに放り込まれた体験を観客に提供する。目を背けるような激しい戦闘描写は一切ないが、陸・海・空で展開する戦いを巧みにシャッフルすることで物語のテンションを常に高め、兵士たちの命のタイムリミットが迫ってくるような、戦場さながらの緊張感をもたらしている。

 そもそも本作は戦争映画ではなくサスペンスだと証言するノーラン監督は「戦場で戦った経験のない僕が戦争を描くというのは、少しおこがましくも感じます。でも時間との闘いや、生き残ることについてであれば共感できるし、自信をもって描ける。この映画ではドイツ軍兵士の姿を見ることすらほとんどありません。戦いについての映画ではないからです」と明かす。

 さらに「この映画に取り掛かる前に、スタッフと一緒にいくつか映画を観ました。その一本が(激しい戦闘描写でも知られる)『プライベート・ライアン』。スピルバーグとは親しくしていて、とても美しいフィルムを貸してくれたんです。強烈な体験でした。映画のパワーは公開時から少しも衰えていない。ものすごく恐ろしくてスクリーンを見ることさえ困難でした」というノーラン監督。その体験は『ダンケルク』を作るうえで大きく参考になったという。「まず、あの完璧な傑作と競争をしたくないということに気づけた。それに、僕たちはあの映画とは違う、もっとサスペンスに基づいた“強烈さ”を求めていたこともわかりました。スクリーンから顔を背けなくてもいいようなね。だから『ダンケルク』では、ピアノ線を張り詰めたようなテンション(緊張)を描いたんです」。

 ノーラン映画としては短く感じる約110分という上映時間(前作『インターステラー』は約170分)も「今回の脚本は、76ページという通常の僕の脚本の約半分くらいの短さ。それは、観客を疲れさせることなくこの強烈さを伝えることができる時間だと感じたからです。これなら速いペースを維持しながら、セリフではなくビジュアルで物語を語ることができる」というノーラン監督。まさに、極限の緊張を味わえる未曽有の映画体験を期待させる。(編集部・入倉功一)

映画『ダンケルク』は9月9日より全国公開