恐竜のDNAが鑑定できる?(depositphotos.com)

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 中国地質大学の古生物学者リダ・シン氏らの研究チームは、ミャンマー北部カチン州フーコン渓谷の鉱山で発掘された琥珀の中から、保存状態が良い9900万年前の「恐竜の尾骨、軟部組織、羽毛」を発見したとする論文を、科学誌『Current Biology』に発表した(「ナショナショナル ジオグラフィック日本版」2016年12月9日)。

恐竜の尾の全体は羽毛で覆われていた?

 研究チームは、マイクロCTスキャナーによる分析を行い、琥珀が白亜紀(約1億4500万年前〜約 6600万年前)の中期(約9900万年前)の化石と推定。琥珀の中に「鳥の羽毛」と「恐竜の羽毛」が枝分かれして間もない時期の「恐竜の羽毛(長さ3.7cm)」が封印されていた。羽毛の色は背側が茶色、腹側は白色だった。

 化石の尾の構造から、コエルロサウルス類(原始的なマニラプトル類)の幼い個体の化石と推測。コエルロサウルス類は、ティラノサウルスから現生の鳥につながる系統までを含む獣脚類の総称だ。

 「恐竜の羽毛」は、尾の両側に並んで生え、現生の鳥の飾り羽に似ている。したがって、恐竜の尾の全体が羽毛で覆われていたとすれば、恐竜に飛行能力はなく、羽毛は合図や温度調節の役割を担っていたと推論できる。

 今回のように、琥珀の中から恐竜が生息していた時代の羽毛が発見されることはあるが、保存状態の良い羽毛が恐竜のものと明確に関連づけられたのは世界初。恐竜の羽毛の進化と構造の解明が一気に進むかもしれない。

琥珀の中に恐竜時代のひな鳥を発見

 「恐竜の羽毛発見!」の興奮が冷めやらぬ最中、さらに、リダ・シン氏らの研究チームは、ミャンマー北部フーコン渓谷の鉱山で発掘された琥珀の中から、保存状態が良い9900万年前のひな鳥を発見したとする論文を学術誌『Gondwana Research』に発表した(「ナショナショナル ジオグラフィック日本版」2017年6月14日)。

 研究チームは、マイクロCTスキャンによる分析を行い、この琥珀が白亜紀中期(約9900万年前)の化石と推定。ひな鳥の頭、翼、爪の生えた足、皮膚、羽毛が小さな琥珀(約7.5cm)の中に封印されていた。ミャンマー産の琥珀の中から発見された化石としては、最も完全な状態を保った化石と判明された。

 このひな鳥は、約6500万年前の白亜紀末に恐竜とともに絶滅したエナンティオルニス類と推定される。歯を持つこの古代の鳥と現代の鳥との違いを解明する大きな足がかりになるかもしれない。

 また、頭、翼、皮膚、羽毛(白、茶、ダークグレー)、爪の生えた足を肉眼ではっきり確認できることから、ひなが生後わずか数日〜数週間で樹脂に閉じ込められたと推定。ひな鳥は、ビルマ語で「琥珀色のタイワンヒバリ」を意味する「ベロン(Belone)」と名付けられた。

 さらに、ひなの風切羽は完全に生えそろっているものの、それ以外の羽毛は薄く、明確な羽軸のない獣脚類の羽毛に似ているため、エナンティオルニス類は生まれた時から飛行能力を持ち、現代の鳥類ほど親に依存していなかったという説を裏付けている。

恐竜の血液中のヘモグロビン(第一鉄)から恐竜のDNAを解明できるか?

 さて、9900万年前をトリップする驚愕のトピックは、まだ続く。

 冒頭の9900万年前の恐竜の化石は、恐竜学者フィリップ・カリー氏の妻の名にちなみ、エヴァと呼ばれる。ミャンマーの鉱山で発見されたエヴァは、宝飾品加工業者が部分的に卵形に成形していた。

 だが、加工時に露出した尾の表面の化学的性質を分析した結果、恐竜の軟部組織にあった血液中のヘモグロビンが分解してできた第一鉄が存在していることが判明。

 血液中に鉄やその他のタンパク質などが残存しているなら、恐竜のDNA解析に期待が持てるかもしれない。恐竜のDNA!!

 シン氏によると、ミャンマー政府とフーコン渓谷を支配するカチン独立軍の間では数十年にわたって紛争が続いているが、紛争は収束に向かっているので、研究者らが琥珀鉱山に入れば、さらに驚愕の発見に遭遇するかもしれない。期待しよう。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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